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不正選挙…定数訴訟―「無効」の備え欠く国会


...memo

米財政の崖―歩み寄りへの流れを

 米国が「財政の崖」からの転落を何とかまぬがれた。

 減税打ち切りと歳出の自動的な削減が重なる「崖」は米国と世界の景気に打撃を与えかねなかったが、オバマ大統領と連邦議会のギリギリの折衝で、最悪の事態は回避した。

 焦点だった所得税減税(ブッシュ減税)は、年収45万ドル以上の層で打ち切り、国民の98%を占めるそれ未満の層は減税を続ける。米経済の景気後退は避けられる見通しだ。

 ただ、安心はできない。今回は強制的な歳出削減を2カ月延期するなど、課題の多くを先送りしたにすぎないからだ。

 しかも、同じころに連邦政府の債務が上限に達する。次なる「崖」がすでに待ちかまえているわけだ。

 米国では連邦政府の借金の上限額を議会が法律で制限している。上限に達する前に法律を改めて引き上げないと、政府の支払いや債務の返済が滞る。

 一昨年夏に、オバマ大統領と共和党との対立が債務不履行の寸前まで深まり、米国債が初めて格下げされたことは記憶に新しい。このときに決まった16.4兆ドルの上限を、また引き上げなければならない。

 財政をめぐる米国の混迷は、2年余り前の中間選挙で議会が「ねじれ」状態に陥って深まった。上院で民主党が、下院で共和党が多数を占める。共和党では増税に反対する茶会系の勢力が妥協を難しくしてきた。

 この構図は、今月3日から改選議員に入れ替わった新議会でも大きく変わらない。

 だが、大統領選で敗れた共和党内には、かたくなに譲歩を拒む対応に反省の機運もある。

 下院議長には「崖」問題の収拾に奔走した共和党のベイナー議長が再選された。中道穏健派の結集を目指す2期目のオバマ大統領や民主党とも歩み寄り、経済政策を前へ進める流れが生まれることを期待する。

 米国が周期的な財政の緊張にさらされるのは、多くの政策や税制であらかじめ上限や期限が決まっているからでもある。

 ブッシュ減税は当初10年の期限が2年延長された。期限があるから期限切れ問題が生じるのだ。制度を限定的にし、制御不能の危機を避ける政治の知恵ともいえる。

 翻って、財政規律を保つ趣旨だった赤字国債法が政争の具と化し、目先の選挙で負けたくない政権党が財政拡大に流れ続ける国は、大きな危機を育てていると言えまいか。混迷ぶりは似ていても、彼我の差を感じずにはおれない。


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定数訴訟―「無効」の備え欠く国会

 衆院の一票の格差をめぐる裁判が来週から全国ではじまる。計34の小選挙区で選挙の無効を求める訴えがおきている。

 昨年の総選挙は、いわゆる0増5減をうけた区割り作業が間に合わず、最高裁が「法の下の平等に反する」とした議員定数配分のままおこなわれた。

 国会は、その最高裁判決から1年8カ月もの間、格差をたださなかった。手直しは十分できたはずで、憲法違反の選挙だったのは明らかだ。

 「なお時間が必要だった」といった言い訳に耳をかす判決が出るようであれば、人々の批判は、国会を通り越して裁判所にむかうことになるだろう。

 焦点は、違憲選挙という判断にたったうえで、「とはいえ無効にすると国政が混乱する」という事情をくみ、選挙自体は有効とする「事情判決」を言いわたすか、それとも無効判決に踏みこむか、にある。

 最高裁はこれまで、定数訴訟で選挙無効を宣告したことはない。この慎重な姿勢が国会を甘やかし、ひいては司法への失望を呼んだ面は否定できない。

 だが、そうした結論にいたった背景にも目をむける必要がある。無効となった場合、その後の段取りを定めた法律を、国会はつくっていないのだ。

 無効判決が確定すると、提訴された選挙区の議員は身分を失い、補充の選挙が必要になる。そのためには、まず、定数の配分方法や区割りに関する法律を改めなければならない。

 残った議員だけで法案の審議をすることになるが、それでいいのか。再選挙の期限をいつに設定するか。制度が全体としてゆがんでいたのだから、一部の選挙区だけやり直してすむ問題ではない。総選挙で再出発するのが筋だが、内閣の解散権との関係をどう考えるか――。

 解散の制度がない参院についても、あわせて対策を考えておかなければなるまい。

 こうした問題は30年以上前から指摘されていたが、この間、国会は放置し続けてきた。

 あれこれ目配りして無効判決にためらいを感じる司法。それを知りつつ手当てを怠る政治。いつまでも権利が全うされない国民。そんなおかしな図とは決別しなければならない。

 もちろん違憲・無効とされないよう、公正な選挙制度をつくっておくのが国会の務めだ。

 しかしそのことと、「無効」に備えて必要な手続きを決め、混乱を最小限におさえることとは矛盾するものではない。

 法治国家としてとるべき、至極当たり前の対応である。



朝日新聞デジタル:社説
2013年1月8日(火)付
http://www.asahi.com/paper/editorial20130108.html

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