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躍動する60兆の細胞たち 4/4


...memo

4. 「新・栄養学研究会」発足

現代医学では、基礎代謝量をもって少食の限界としています。だいたい成人 男子で一日1400カロリー、女子で1200カロリーというわけです。

したがってたとえば、一日1000カロリー以下の少食では当然日一日と痩せていき、 やがて栄養不足で倒れてしまうと考えます。そしてこれが現代栄養学の常識ともなっているのです。

しかし甲田先生による半世紀にもわたる難病患者の治癒実績、およびそれら症例の研究の結果、現代医学の常識ではとうてい不可能と思われるような厳しい少食で、何年も元気に仕事ができるという事実を目の当たりにすることになった—前節でご紹介したとおりです。

先生はこれらの実例を謙虚に受け止め、その神秘のメカニズムをぜひ科学的に解明したいと考えておられますが、先生によると、幸いなことに最近になって、現代医学者のなかからもこの問題に興味を抱き、研究をはじめる方が少なからず出てきたそうです。

そういった研究のメンバーや現状、またこれまでの成果について先生が報告されていることを、ご著書から次に引用させていただくことにします。そしてじつは、先生ご自身も研究に参加されています。


・・・そういうわけで、大阪府立大学の山口雄三教授、大阪大学微生物研究所前所長三輪谷俊夫教授、大阪市立大学片山洋子教授、それに武庫川女子大学清水毅教授らが中心となって、「新栄養学研究会」が創設されることになりました。

こ の研究会では主として、「生菜食に秘められた未知の栄養」を解明することに力を注いでおります。

その研究から、現代栄養学の常識を破る少食でも、生菜食実 行者が元気で長期間生活できる秘密が少しずつ明らかになってきました。これらの問題について少し説明しておきたいと思います。


●宿便の排泄で少食が可能になる・・・肥満に悩む人が圧倒的に多くなった最近の日本でも、痩せの大食いで、いくら食べても太らず悩んでおられる人が案外少なくないのです。

私のところへもこのような訴えで、なんとか太りたいと受診してこられる患者さんがたくさんいます。この痩せの大食いをどのようにして治すかということについて、一つの症例を紹介しておきます。

患者さんは四国の香川県からこられた主婦のIさん(38歳)です。Iさんは身長165センチ、体重43キロで少し痩せ気味です。胃下垂症が認められました。

本人はもう少し太りたいと思い、いろいろ栄養のあるものを食べてみるが、どうしても太れないのです。二年くらい前から、玄米食がいいと聞きそれを実行していますが、その量が朝・昼・夕と三食とも、茶碗に二杯ずつ食べておられるのです。この分量は少し多すぎるほどです。

さて当院へ入院して、玄米五分がゆの少食生活に入りました。これは玄米一合と豆腐一丁、それにゴマ20グラム、生野菜約150グラム、一日計1000カロリーです。

この少食でIさんの体重はしだいに減っていき、一ヶ月あまりで36.5キロになってしまいました。

太りたいと思ってやってきたのに、逆にこのように痩せてしまったのだから、内心不満のIさんです。

「先生、こんなに痩せて大丈夫ですか」と、何度も念を押すように尋ねられるのです。

「大丈夫ですよ」と励ましながら、玄米五分がゆの少食をそのまま続けることにしました。

不思議なことに、体重は36.5キロに下がったまま、それ以上には減っていかないことに気づいたIさんは、安心してこの少食生活を積極的に実行することになりました。

体調もしだいによくなってきたことが、その積極的な取り組みの原動力になったようです。入院の前はいつも胃部がもたれ、不快感に悩まされていたのが、気持ちのいい空腹感が味わえるようになったのが第一の喜びでした。

そのうえそれまで疲れやすく、食後はきまったように眠気に襲われ、しばらく一眠りしないと次の仕事に取りかかれなかったのに、食後でもけっこう動ける体に変わってきたというのです。

こうして約半年がすぎ、体調はますますよくなり、それに便通がとくに良好となってきました。

そんなある日に腹痛が起こり、その晩大量の排便があったのです。いつもの便とは違って、臭気の強い便だったといいます。これがいわゆる宿便だったわけです。

この宿便が排泄されてから、Iさんの体調はまた一段とよくなりました。十数年来足が冷えて、夏でも足袋をはいていたのに、その冷え性がすっかり治ってしまったのです。

また持病の頭痛も雲散霧消となり、毎日快適な朝を迎えられるようになりました。

そして驚いたことに、五分がゆの少食で体重が少しずつ増えてきたではありませんか。

その後は食事量を増やし、玄米飯に変更し、副食も豆腐のほかにもう一皿プラスし、一日約1600カロリーにしたところ体重は順調に増えて、一年後には53キロになっております。

こんなに太ったことは生まれて初めてだと、大喜びのIさんでした。

このように、太りたいと思えば一度少食生活をつづけ、腸内に渋滞している宿便を一掃することが必要なのであります。つまり、いったん痩せてから太るという順序があるのです。

これがわからず、とにかく食べて太ろうとするところに大きな誤りがあるのです。


●短鎖脂肪酸の利用・・・次に腸内細菌と少食との関係について。これまでの栄養学では、食物繊維は腸管内で消化されず、そのまま排泄されるからエネルギーにはならないと考えられてきました。

し かし腸内細菌叢の研究が進むにしたがって、腸管内には、好気性よりも嫌気性の細菌のほうがはるかに多数生存していることがわかり、これらの嫌気性菌によっ て、従来消化されないと考えられてきた繊維類も分解され、酢酸や酪酸、吉草酸などの短鎖脂肪酸となって腸壁から吸収され、人体内でエネルギー源として利用 されるということがわかってきました。

食物繊維はしたがって、けっしてゼロカロリーではなかったのです。現代人はだいたい一日20グラム、多い人で30グラムの食物繊維を食べていますが、そのうち二分の一から四分の三は小腸を通過するあいだに、残りは大腸内で分解され発酵するもののようです。

以上のことから、食物繊維の多い生菜食では、従来考えられているより多量の熱量が生体に利用されているということになります。


●尿素の利用・・・「人間が動物性蛋白質を摂らず、生野菜や穀類ばかり食べて、はたして本当に健康な生活を営むことができるか」という問題を論ずるとき、いつも話題に出るのが草食動物の例です。

牛が青草ばかり食べていても、あのように太った、立派な肉ができるのはなぜかという問題です。

じつはこの問題を研究している反芻動物生理学(Ruminology)で、そのメカニズムがしだいに明らかになりつつあります。それは次のようなものです。

牛や羊などの反芻動物では、消化管が他の動物にくらべて長く、その一部(たとえば胃)に拡張された部分(ルーメン)があり、そこに大量の草(繊維物質)が一定時間蓄えられます。
ルーメンのなかには多数の微生物が棲息し、さかんにその繊維質を利用して繁殖します。



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......以下、本文 ↓

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2013/10/09 13:45


このとき、唾液のなかに含まれる尿素も利用され、蛋白質に合成されるのです。一般に尿素は尿のなかに排泄されると考えられていますが、反芻動物ではこの尿素が再利用されるのです。

したがって、蛋白質の含有率が少ない青草ばかり食べていても、この尿素の利用で、微生物はさかんに蛋白質を合成して繁殖できるのです。

こうして増殖した微生物の菌体蛋白質が胃・腸へ送られ、体内の蛋白質に変化してしまうのであのような太った肉が造られるのです。

この尿素の再利用ということが、人間の体内でも起こりうるのか? これがじつは、たとえば少食や菜食をしている人々で、蛋白質の摂取量が少ない場合に出てくる問題であるわけです。

この問題に興味を抱いた大阪市大の片山洋子教授、奥田豊子助教授らは、パプア・ニューギニアの原住民について調査してみることにしました。

パプア・ニューギニアの原住民は、おもにサツマイモやタロイモを食べ、肉食はほとんどしないという食生活をつづけています。カロリー摂取の90%近くはこれら澱粉質からで、動物性蛋白質は全蛋白質の数パーセントにしかなりません。

ところが、こういった質素な(?)食事内容にもかかわらず、彼らはじつに健康体で活発であります。

この人たちを詳しく調査された徳島大学医学部の白木啓三教授の報告によると、二人の女性(25歳、26歳)は、一日平均してわずか19グラムの蛋白質しか摂っていませんでした。

これは一日必要量の30〜50%です。明らかにこれでは低蛋白血症となり、だんだん痩せて栄養不良で倒れてしまうと考えられるのですが、じっさいにはきわめて元気で、筋肉もしっかりできているのです。

ここで当然、パプア・ニューギニアの原住民の体にも、尿素を再利用して蛋白質を合成する仕組みができているのではないか、ということになり、調べてみたところ、まさに予想通り尿素が利用されていたのです。

そこで今度は人種を超えて、日本人でも少食や生菜食をすれば、パプア・ニューギニアの人たちのように尿素を再利用できるようになるか、という問題になりました。

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2013/10/09 13:44


これについて奥田助教授らは、学生たちのなかからボランティアを選び出し、少食生活をしてもらってから尿素再利用の有無を調べてみました。また私の指導で生菜食を行なっている人たちについても、同様に調べました。

安定同位元素で印をつけた尿素を食べて、一日後、三日後に採血し、血中の蛋白質にその尿素が含まれているかどうかを調べるわけです。

尿素を経口摂取するといったん腸から吸収され、それが再び腸に分泌されたもの、あるいは吸収されずにそのまま大腸に送られ、ここで腸内細菌によって分解されてアンモニアとなり、そのアンモニアを人体が吸収して肝臓でアミノ酸→蛋白質へと合成し、血液中に放出するという仕組みです。

ところで、毎日腹一杯の食事をしている人たちでは、このような尿素の再利用は行なわれていないということが明らかになっています。これについて奥田助教授は、ふつうの食事をしている学生を対象として選び同様の実験をしました。
この実験により、少食者および生菜食実行者は間違いなく、尿素を再利用していることが確認されました。

奥田助教授は1989年、ソウルで行なわれた第十四回国際栄養学会議でこの結果を報告されましたが、若手の栄養学専門家たちから熱い注目を浴びました。


これらのことからおわかりのように、私たちが厳しい少食や生菜食を実行すると、徐々に体の仕組みが変化していき、腹一杯食べていたときには利用しないでそのまま排泄していた尿素も再利用して、蛋白質合成に役立てるという仕組みができあがってくるのです。(動物たちと同様)人間の体もさまざまな環境に適応できるよう、じつに巧妙にできているものであります。




2010/02/10
http://www12.plala.or.jp/kusuri/page10-4.html




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