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05/01朔…子供たちがキレる乱れた食生活2/2


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砂糖のとり過ぎが脳と心を狂わす キレる原因に"低血糖症”

鈴木 子供たちの食生活で一番問題になるのが砂糖のとり過ぎです。砂糖の1日の摂取量は70g以下が望ましいのですが、80年代の調査では一番多い子供で1日240~250g位、最近の子供たちを調べてみますと、もう400g、600gなんていうのが出てきます。
  どうしてこんなに砂糖の消費量が増えているかというと、水とお茶代わりに1・5・の清涼飲料水を3本も飲んだりするんですよ。もう、ご飯を食べるのにも何 をするのにもジュース類が欲しいんだそうです。あと菓子パンを食べたりすると、1日にそれくらいの量をとってしまうんですね。
――砂糖のとり過ぎは、脳にどのように影響するのですか。
鈴 木 砂糖というのはブドウ糖と果糖の2つがくっついた簡単な構造をしているので、消化酵素でもってすぐ分解されます。分解された果糖の方もブドウ糖に変わ るので、砂糖を大量にとると血液中のブドウ糖が急激に増えてきます。血糖値は普通、空腹時で70~90mg/dl位ですが、砂糖をとるとそれがグーッと上 がり、あまり高血糖になると命が危険なので、体は血糖値を下げるために膵臓からインスリンを大量に分泌します。すると、今度は血糖値が低くなり過ぎて"低 血糖症”になってしまうのです。
 低血糖症では脳のエネルギー源となるブドウ糖が極度に少なくなりますから、ボーッとする、イライラする、今何が起こっているのか分からない、気を失う――などの状態を示すことがあります。
――今、盛んに言われている"キレる”という状態は、低血糖で脳がエネルギー不足になる結果、起こるのですね。
鈴 木 それだけではありません。低血糖になると、体は「大変だ!」ということで、今度は副腎からアドレナリンを分泌して血糖値を上げようとするんです。アド レナリンというのは交感神経を刺激して全身の活動力を高めるホルモンなので、さらにイライラや興奮状態、暴力行為などを引き起こします。

砂糖のとり過ぎが ビタミン・ミネラル不足に拍車をかける

鈴木 また、砂糖は酸性食品なので、本来は中性である体を酸性に傾ける作用があります。そうすると、体はそれを補正しようとして体内のカルシウムを使ってしまいます。水酸化カルシウムはアルカリ性なので、酸性に傾いた体を中和するのにちょうど良いのです。
――食事からの摂取量が少ないうえに、砂糖によってますます脳の健康に必要なカルシウムが消耗されてしまうのですね。
鈴木 さらに、砂糖のとり過ぎは、脳の活性化に必要なビタミンB群も消耗します。これは、砂糖を分解する時に補酵素的にビタミンB1が使われるためです。
 つまり砂糖の大量摂取では、低血糖症やビタミン・ミネラル不足という様々な要素が重なって、脳と心の問題を招くわけです(図2参照)。

ナイフを取り上げるより食生活の改善を 今の子供たちは誰もがキレる予備軍

――先生が調査を始められた80年代に比べ、今の子供たちの食生活はどのように変化してきていますか。
鈴 木 私達の研究では、欠食も偏食もなくて緑黄色野菜をちゃんと食べている子供というのは、今から14~15年前には20%を越えていたのですが、昨年の調 査では、中学生男子で1%、女子で5%しかいませんでした(図3)。全体的に食事の質が悪くなっているということですね。
――最近、普通の子がキレるということがよく言われますけれど、それも納得できますね。
鈴 木 ええ。かつて80年代に暴力行為を起こした子供というのは、いつも大体同じ子が決まってやっていたんです。でも今は、どの子も食生活に問題があり、イ ライラして、何かあれば我慢できないという状態ですからね。もちろん子供のストレスは当時よりももっと大きなものになっているでしょうし。
 幼稚園でも、最近はじっと話を聞くことができない子供が多いですね。先生がわずか20名程度に紙を配っていて、自分もすぐにもらえるというのが待てないんですよ。ウワーッと騒いで後ろにひっくり返って、ダダをこねて騒いで、プイッと部屋を出ていってしまう…。
  そのような、精神的にものをきちんと受け止める状態にない子供に対し、ナイフを取り上げるのも必要でしょうが、それは応急処置にしか過ぎないわけです。食 生活を改善するという原因療法をきちんと押さえるべきだと思うのですが、そういうことには誰も耳を貸さない状況ですよね。

日本の伝統的な食事が理想的

――食生活から直さなければ、子供たちの問題行動の根本的な解決にはならないということですね。それでは、子供たちの食生活をどのように改善したら良いでしょうか。
鈴 木 まず、主食はご飯、あまり精製していない穀類が理想的です。脳のエネルギー源を確保できるうえ、ビタミンB群も豊富です。また、ご飯が主食なら、ひじ き、みそ汁、小魚など、ビタミン・ミネラルの豊富なおかずをとることができます。パンが主食ではこういうわけにはいきません。
 結局、あまり精製していない穀類を中心に、野菜、海藻、小魚、大豆、ゴマといった、かつて日本人が食べてきたものを食べる、それにつきますね。
  しかし、今の若い世代の親御さんたちは、もう、ひじきを炊くのも面倒くさいと言います。そういう人に対しては、まずはお惣菜屋さんの出来合いのひじきを 買ってでも食事の内容を変えて下さいと指導しています。それに薄味のおみそ汁を1品付け加えるなど、せいぜいそういう努力をして欲しいのです。それだけで も十分違うんですから。

今こそ食育のすすめ

――子供たちの食べ方にも問題がありますが、それを支えるべき家庭にも問題が多いようですね。子供たちの食生活のために、学校や家庭では何をすれば良いのでしょうか。
鈴 木 食の教育をすることだと思います。18世紀のフランスの教育家ジャン・ジャック・ルソーは、「教育の原点は、食べることを通して自己保存できる知恵を 学ぶこと」と『エミール』の中に書いています。「食育」は欧米では行われていることですが、日本の教育は「知」「徳」「体」が偏重されていて、どのように 食べるかという「食育」が全くされていません。だから家庭でも、親が分かっていないから子供に正しい食事を教えられないということがあるのでしょう。
 まずは子供と一緒に食事をとり、コミュニケーションをとるようにして欲しいですね。
――食事の質の悪い子供たちは、家族で食べる機会が少ない傾向があるのですか。
鈴木 少ないです。反対に、食事の質の良いグループに入る子供は、やっぱり家族と一緒に食べる機会が多い。
 長い人生の中で、子供を育てる時間というのは本当に短いのですから、もう少し子供に対して時間をさいてほしいですね。「食べる」というのはその中核にあることだと思います。


(取材構成・本誌岩橋)



月刊「自然食ニュース」テキストデータ 1998-06 (294号)
http://www.sizenshoku-news.com/news/backno/int/i199806.htm

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