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ビフィズス菌は、体の内から…ABC療法 2/3

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母乳とビフィズス菌増殖因子 ──ニンジンからも発見され 構造が解明!

吉岡 第2次大戦後に、アメリカの援助物資として粉ミルクが大量に輸入されて人工栄養に用いられたのですが、

人工栄養児は母乳栄養児に比べて大きくは育つけれど、罹患率や死亡率が高かった。

 原因は、腸内細菌叢の違いにありました(図1)。

 即ち、母乳栄養児は腸管内にビフィズス菌が優勢に生息し、

糞便は乳酸臭がして快適なのに対して、

人工栄養児はその他の菌、いわゆる悪玉菌が多く、大人の糞便のように不快臭を放つんです。

 それで研究が始まったんです。

  東京医科歯科大学小児科教授の太田敬三先生は、人工栄養児の罹患率や死亡率が高い原因を調べ、粉ミルクでは大腸菌のようなものが増えて、便も臭い。

一方、
母乳栄養児が健やかに育つのは、腸内にビフィズス菌が非常に増えていることを突き止めたのです。

母乳の中にはビフィズス菌を増やす成分が入っていたんです ね。

 この成分を、ビフィズス菌増殖因子、あるいは単にビフィズス因子と呼んでいますが、では、母親が母乳の出ない乳児には、それに代わるビフィズス因子を与える何かはないのか。

  太田敬三先生はドイツの小児科学会誌で「カロテンセラピー」、即ち、下痢症など小児の腸管内が具合が悪い時にヨーロッパの小児科医はニンジンスープをつ くって飲ませるという記事を読んで、

ひょっとしてニンジンの中に良い成分があるのではないかと調べた結果、確かに

ニンジンを与えると、ビフィズス菌が増え ることを発見したんです。


 太田先生はこの増殖因子(ビフィズス因子)を東京大学薬学部教授の田村善蔵先生らと共同研究で精製したのですが、その時に、東大の大学院生だった私も研究に加わったというわけです。
 大量のニンジンを精製して粉末を抽出するのは、東大紛争で研究中止の時期もあり、大変な苦労の末に最終的には、ニンジン(根)1トンから精製して3mgの粗精製品を得ることができました。
 これを種々の方法で分析して、ビタミンの一つであるパントテン酸から、コエンザイムAの生合成の中間体「パンテテイン(PaSH)」がS-スルホン化およびリン酸化された「4'-ホスホパンテテイン-S-スルホン酸(P-PaSSO3H)」を決定しました(図2)。
 即ち、このビフィズス因子は、硫黄(S)やリン酸を含んだ、基本骨格はパンテテインからなる物質であることが決定されたのです。
 さらに、ビフィズス菌には、パントテン酸からコエンザイムAまでのビタミンの利用性が違う種々の株があることもわかりました。
 実際の臨床応用には、リン酸基はないけれど、同じ効果をもつ「パンテチン(PaSS:パンテテインが酸化され2分子結合したもの)」が用いられ、乳児の腸内ビフィズス菌を増殖することが判明しました。
 ビフィズス因子としても有効なパンテテインは、研究に協力してくれた第一製薬が高脂血症治療薬などとしてドル箱商品となり、会社の増殖因子ともなりました。


ビフィズス因子の解明から 各種ビフィズス菌製品が 開発される

吉岡 このようにしてビフィズス因子が解明され、多くの健康効果や、さらには分類も明らかになり、多数の会社が種々の製品の開発に乗り出しました。
 ビフィズス菌入りヨーグルトはもとより、ビフィズス菌の餌としてオリゴ糖入りの製品がつくられたり、成人が1週間ほど飲み続けて、腸内細菌群の30%ぐらいまでがビフィズス菌になるような機能性食品も市販されています。
 薬としては、多量の抗生物質を投与して腸内に細菌がいなくなる外科手術後の患者の菌交代症などに投与されたり、肝性昏睡では、有毒なアンモニアを中和するために、ビフィズス菌が用いられています。
 最近では、EUや米国でも、膨大なビフィズス菌入りのヨーグルトや飲料製品が市販され、国際的に総合し、60億ドルの市場規模となっていると推定されています。
 しかし、ビフィズス菌は人によって種類など生息状況も違い、また、外から与えた場合、与えている期間は確かに増えますけれど、やめると減ってしまいます。ビフィズス菌を増やすには、外からではなく、内側から増やす方が好ましいのです。


「ABC療法」 ビフィズス菌は 食べ物から増やそう! 自前のビフィズス菌を 腸内で増やす リンゴ・バナナ・ニンジン

吉岡 太田先生は食物からビフィズス因子を探す過程でいろいろな植物を調べ、リンゴ(アップル)、バナナ、ニンジン(キャロット)の三つに非常に多くあることを見出されました。ただ、研究対象としては当時一番安く手に入ったニンジンを選んだというわけです。

 この三つは、ちょっとでも食べると、腸管内でビフィズス菌が増える。外からビフィズス菌を摂取するよりも増えるんです。

 ビフィズス菌自体は8種類くらいあり、人それぞれ菌種も違う。だから、外から摂取したものは摂取している時は増えるけれど、なかなか定着はしない。摂取をやめるともういなくなります。

 それよりも、腸内にいる自前のビフィズス菌を増やす方がいいのです。毎日、リンゴ、バナナ、ニンジンを少量とるだけで増えます。そこで私は、Apple, Banana, Carrotの頭文字から、「ABC療法」と名づけたのです。


──1種類でもいいのですか。

吉岡 組み合わせてもいいし、1種類でもいいです。毎日とることが大事です。ジュースにして飲んでもいいし、何でもいい。刻んでそのまま食べてもいい。中でもニンジンは安いので最もいいんです。


──少量で十分なのですか。

吉岡 もう一切れでもいい。

 ただし、ビフィズス因子はビタミンとして少量でよいので簡単に満たすことができますが、ビフィズス菌の餌となる糖源が不足するとビフィズス菌には十分でないことがあります。その点、リンゴ、バナナ、ニンジンは糖源としても十分なわけです。


──私はニンジンを山ほどスライサーで千切りして、少量の塩と酢をまぶして冷蔵庫につくりおいて、そのまま食べたり加熱調理にも使って重宝しているんですが、夏は時間が経つと粘ついてくるので塩と酢を多めにしているんです。

吉岡 ニンジンは蔗糖(ブドウ糖と果糖が結合した糖)が多いからですね。だから雑菌も繁殖しやすい。それで粘ってくるんですね。


──糖源としてはオリゴ糖がよいということでしたね。

吉岡 ビフィズス菌に取り込まれる糖源としては乳糖が一番なのですが、離乳期以降は乳糖は不足してきます。

 オリゴ糖は消化性と難消化性を含む多糖類で、植物の貯蔵物質として広く分布しています。当然、リンゴ、バナナ、ニンジンにも含まれています。

 動物の腸内では、特に難消化性の多糖類、例えばガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラフィノースなどがビフィズス菌の格好の餌となっているんです。ですから、オリゴ糖入りのビフィズス菌製品がつくられているわけです。



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