Nicotto Town



護られし者 (後編)

2009年(平成21年)4月20日

藻黒幼女誘拐殺人事件(1990年発生)再審請求の検証にもとづく宝部受刑者
及び現場遺留物検出のDNA型再鑑定結果

「2つのDNA型は一致しない」



鑑定実施者、中関大・元伊教授(弁護人推薦)所見

「不一致部分が多い為、同一人物のものではない」

    西都医科大 簾田教授(検察側推薦)所見

「一致部分が非常に少ない為、同一人物のものではないと言っても過言ではない」

・・・

最初の再鑑定申し立てから12年の時を経て、高裁が再鑑定を決定、再鑑定を
行ったが、その結果は、科警研が1991年に出した鑑定結果を覆すものだった。

検察側が提出した証拠は、一転して宝部は犯人ではない事を逆に裏付けるもの
になった。

再鑑定結果が出てから2ヵ月後、逮捕から17年以上の時を経て、宝部 尾左務
は再審開始を待たずに釈放された。

父は逮捕直後に倒れそのまま他界しており、無実を信じ続けた母も2年前に
帰らぬ人となって、自由になった息子の姿を見る事は無かった。

検察庁、万田久世検事正は宝部に面会し直接謝罪した。

既に定年退職していた、当時の捜査本部長、盛多大介は「まだ、無罪が確定した
訳では無い。今後司法が世論に流される事なく、正しい判断を下す事を強く望む」
と、自身のブログで綴り、これが大炎上してブログ閉鎖に追い込まれた。

事件は4年前に公訴時効を迎えている為、これで、藻黒、灰神連続幼女誘拐殺人
事件はすべてが未解決事件になった。

 ・・・

コンビニを出てから、虫の鳴き声が鳴り響く夜の道をアパートに向かって
歩いて行く。

(こんな事はこの世に絶対にあってはならない事なのですが、現実に結果として
あなたは再び凶悪な犯行に手に染めた事で、逆に今日までの長い年月、罪を
問われ罰を受ける事から逃れて、今でもこの町で平然と暮らしていられる事に
なりました)

去年の夏、ある日俺の目の前に現れた(あの男)は言った。(虹鬼さん、私は
あなたが13年前矢津子ちゃんを連れ去った男である事に確信を持っています)

(鬼畜としか言い様の無い、あなたを護り続けて来たのは他ならぬ(彼ら)です。
彼らはあなたがこれまで犯して来た事が明るみに出る事を恐れ、必死にあなたを
護ってきた。世間や被害者家族の声も及ばない程の大きな力で)

(あなたが(彼ら)から、護られて来た理由、それは鞠子ちゃん事件で出た
DNA型があなたの物と(完全に一致)している事を(彼ら)が知っているから
です)

(もちろん、(彼ら)の中にだって、その事で思い悩み苦悩した人間だっていた事
でしょう。(彼ら)の中には矢津子ちゃん失踪事件の後、自殺した人もいます)

(あなたはこれまで多くの人達から様々な大事な物を奪い続けて来ました。
かけがえのない、とても大事なものをです。あなたや(彼ら)はもう終わった事だと
思っているかもしれない。しかし多くの人達はずっと終われないままです)

(いいですか、最後にこれだけは言わせて下さい。僕は終わったなんて思って
いないし、これで終わらせるつもりもありません。・・・どうか、その事だけは
忘れないでいて下さい)

(あの男)はそう言って俺の目の前から去って行った。

あの時は、突然訳がわからない男からまるで俺が何か悪い事でもしたか
の様な事を言われて訳がわからず、ただただ腹立だしかった。

俺が(彼女たち)にした事がそんなにも悪い事だとでも言いたいのか!

もちろん、そんな訳のわからない事を言う奴がいるから、(彼女たち)には
ちょっとかわいそうな事をした事くらいは俺にだってわかっている。

建設会社の資材置き場の脇を通りかかった時、端の方にススキが生い茂って
いるのが見えた。

ススキが茂っているのを見ると(あの時間)の事を思い出す。

(俺だってあれが終わりだなんて思っちゃいないし、終わらせるつもり
なんかも無ぇ)

俺はあれからもずっと、また(あの時間)がやって来るのを夢見て、町中や
公園、店内あらゆる場所で(彼女たち)の姿を追い続けている。

ただ、俺にもずっと気にかかっていた事がある。

俺は確かに3人の(彼女たち)を遠い場所に連れて行った。

パチンコ店で一人でいる(彼女たち)を見かけて、それで何もかもぶっ飛んで
それから・・・

だけどその他の2件だか3件だかの事については俺は何も知らない。

あの頃、護られていた奴は少なくとも俺の他にもう一人いる。

アバター
2019/10/10 18:22
この事件、憶えています。
連日、ワイドショーやニュースで取り上げられ、週刊誌もトップに載っていました。
DNA捜査の黎明期。
今では考えられないほど精度が低かったにもかかわらず、そのことを公表することなく証拠として採用してしまった。
まさに警察の闇です。
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2019/10/05 20:43
よくわからない事件
でもt実話に取材したものなのですね
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2019/10/02 15:01
さーっと読ませていただきましたが
今回は実話をテーマにしておられるんですね。
犯人が分かっているのに未解決の事件って
怖いしかないませんねぇ。
後でじっくり3連作を読ませてもらいます。
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2019/10/01 23:46
一応、ル○ン似の男で検索すると大抵この画像が出て来る。名前はF田と言われているけど
画像、氏名ともに真偽の程は よくわからない。

2009年だか2010年頃に、現地で取材した人がいるみたいなのでこの頃までは現地に
住んでいたっぽい。今もそうなのかはわからない。

動画中に訂正部分があるとすれば5件の内3件がパチンコ店で発生している。

https://www.youtube.com/watch?v=XuwUnA37n50 3分36秒
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2019/10/01 18:11
パチンコ屋……
群馬県の事件を思い出します。
怪しい奴が同僚にいるとかガセが飛ぶなか
いまだに犯人がみつからずにいます。
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2019/10/01 11:29
昔のDNA鑑定が誤差の大きいこと、現在の鑑定の精度が上がっていることー最近しりました。

警察物のストーリーは、豊富な知識がないと書けないですよね。
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2019/10/01 08:43
こういう結末になりましたか。時効の廃止、DNA捜査、防犯カメラやドライブレコーダーの普及で検挙率がアップする一方で、未解決事件がありますよね。解決してほしいものです。



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