バレンタインスクランブル -シオン-
- カテゴリ: 自作小説
- 2010/02/13 22:19:56
「ひょっとしてシオンさんですよね!?」
突然呼び止められ、一瞬どきりとしたがすぐに平静を取り戻した。いつものことだろう?
俺のファンだと熱弁を振るうその女の口は実によく動く。
こちらが相槌を打つ暇もなく一方的に喋り続ける。
こういうタイプはこちらの話なんて最初から聞く気がない。
自分が話すことに満足...
毒吐き男じゅんの前向きなポンチョ
あなたがまとった心の『ポンチョ』脱がせてみせます
「ひょっとしてシオンさんですよね!?」
突然呼び止められ、一瞬どきりとしたがすぐに平静を取り戻した。いつものことだろう?
俺のファンだと熱弁を振るうその女の口は実によく動く。
こちらが相槌を打つ暇もなく一方的に喋り続ける。
こういうタイプはこちらの話なんて最初から聞く気がない。
自分が話すことに満足...
「じゃね。いろいろありがと」
そう一方的に言い残してサオリが立ち去る。
「あんたの為に呼び出した私の立場は?マジ最低!もう知らねーから!」
なんて自分勝手な奴なんだ。
自分のイベントそっちのけで協力してあげたっていうのに。あーいらつく。
なんであんな子とつるんでんだろ、私。
サオリとつるんでるのは...
電光掲示板ではバンクーバーオリンピック上村愛子の快挙が繰り返し流れている。
東京渋谷駅、午後2時。ここは普段と何も変わらない。
雑多で慌しく、ごちゃごちゃした街。
お洒落した若者とスーツ姿の大人と、怪しげな人々で賑わっている。
2010年2月14日、日曜日。バレンタインデー。
「サオリ、あんたそれ...
「僕はね、人間になりたいんだ」
そう一匹の野良猫は言いました。
他の野良猫たちは笑いました。
「どうして人間になりたいんだい?」
そう尋ねる野良猫が一匹だけいました。
「いつも僕にご飯をくれるお婆さんがいるんだ。
そのお婆さんにね、一言『ありがとう』って言いたいの」
人になりたい猫はそう答えました...
きっかけは些細なことだったんだ。
何がどうなったのかはわからないけれど、
ふと気付けば
生まれて初めて買ったZIPPOがなぜか机の上にあって。
忘れもしない、あれは16歳の頃。
味なんてよくわかりもしないのに
ただそれが格好いいことだと思い込んで煙草を吸っていた。
初めはマ...