【孤高の戦士～再戦４～】

アニエスとマルヴィンの目の前には敵機が２機立ちはだかっていた。
陸戦型ガンダム、連邦の白い悪魔と異名をとったガンダムのパーツ
を流用した少数量産の機体ながら、バランスのとれた性能を持った
機体、もう一機はジム・ライトアーマーである。

『アニエス、無理はしないでいい、マシンガンを落ち着いて敵に
当てるんだ』

『りょ、了解しました』

最初に仕掛けたのはジム・ライトアーマー。
背中から素早くビームサーベルを抜き、アニエスに切りつける。

『う、うわ！どうすれば！軍曹！！』

闇雲にマシンガンを撃つアニエス。

『落ち着け！』

アニエスに切りつけたジム・ライトアーマーの背にマルヴィンの操縦
する、ドム・トローペンの抜き放ったヒートサーベルが振り下ろされた。

『下がって！マシンガンで牽制』

『了解です！』

アニエスが下がるのと同時に、マルヴィンは急旋回をかける。
後ろに近づいてきた陸戦型ガンダムを袈裟懸けに切る。

『アニエス、私一人では２体を裁けない、そちらを頼む！』

『は、はい！』

背にしたジム・ライトアーマーはアニエスのマシンガンが牽制してくれ
ることを信じて目の前の敵に集中する。

『落ち着いて、相手の機体の動きが止まる瞬間を狙うんだ』

『で、出来ません・・・僕には無理です！』

完全に戦場の雰囲気に押されているアニエスだった。
とにかくマシンガンを相手に向けて撃つが、全てジム・ライトアーマーにかわされてしまっていた。

『頼む！アニエス、お前の力が必要なんだ！』

アニエスの背中に何かが這い上がるような感覚が生まれる。
期待に舌なめずりをする蛇が背筋を這い上がるような感覚。

『アニエス、お前なら出来る！頼む！』

陸戦型ガンダムと交戦しながらアニエスに呼びかけるマルヴィン。
交戦中の陸戦型ガンダムが、ビームライフルを構え、アニエスに
向けて照準を合わせる。

『お前の相手は、オレなんだよ！』

マルヴィンのヒートサーベルが熱く熱を帯び、大きく振り上げら
れた。
陸戦型ガンダムはその動きに気づいて、ライフルの銃口をマルヴ
ィンに向けなおす。

『遅い！』

ヒートサーベルが３度陸戦型ガンダムのボディを切りつける。
上から下に袈裟懸けに、横なぎに、そして最後は下から上に切り
上げるように。
続いて旋回し、敵機体の後ろに回ろうとするが、敵機も大きく旋回
してマルヴィンから距離をとっていた。

『簡単には堕ちてくれないか』

マルヴィンのつぶやきに籠められていたのは歓喜だった。
戦場において好敵手と出会えたときの、ぞくぞくするような快感。
戦いに染まるうちに身についていった残酷な喜び。
相手を屈服させ、地に這わせる最高の快感。
今のマルヴィンは、まさにその快感を覚えていた。

アニエスにはマルヴィンの背から漆黒の翼が生えたように見えた。
マルヴィンを包む空気が今までとは明らかに変わったのを感じて、
背中が悪寒を覚える。

『アニエス、そっちはお前に任せた』

ＭＳを介してでも、悪鬼の、いや、戦鬼のごとく微笑むマルヴィンの
表情が見えるようだった。

『りょ、了解』

同時に、アニエスの中にも変化が現れていた。
恐怖のかわりに、戦士としての自覚が気持ちを奮い立たせるのを感じ
ていた。

『上！？』

アニエスが何かを感じて頭上にマシンガンを放つ。

『アニエス！ナイスサポートよ！』

インカムからアヤメの声が響く。

アヤメの声に呼応するように、アニエスの中の何かが目覚めた。
頭上に向けたマシンガンを持った手と反対の手でヒートホークを
引き抜く。
すぐ脇に迫ってきていた、ジム・ライトアーマーのボディ目掛けて
切りつけた。
が、ジム・ライトアーマーもビームサーベルを抜いていた。
金色の斧と紅のサーベルがぶつかり合い火花を散らす。

『アヤメ機、敵狙撃タイプ撃破！中央高層ビル交戦中のアニエス、
マルヴィン、つり橋まで敵を誘導できる？こちらから狙撃でサポ
ートするわ！』

『了解』

答えたのはアニエスだった。
マルヴィンはただ目の前の敵を殲滅することだけしか胸中になく
なっていた。

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まだまだ続きます＾＾