「はやぶさ」が起こしたショック・ウェーブ
- カテゴリ:ニュース
- 2010/06/20 11:06:27
今回も「はやぶさ」の話です。「はやぶさ2」について、あまりにも誤解された情報がネット上に溢れているので、このエントリを書く事にしました。内容に間違いがあったらご指摘いただければ幸いです。
科学技術は少しだけ「文化財保護」に似ています。例えば宮大工さんがいなくなったら、法隆寺、厳島神社、日光東照宮、どれも無くなってしまいます。つまり「文化の伝承が途切れる」という事です。同じように「宇宙惑星探査」は運用者が経験したものを、次の世代に伝える必要があります。「技術の伝承」です。だから「はやぶさ2」は「はやぶさ」の実績を継承する上でとても大事です。
帰還後もカプセルの中身などのニュースが報道され、今も注目を集める「はやぶさ」。しかし、後継のミッション「はやぶさ2」の予算が付かず、頓挫しているという状況にネット上で応援している人たちは、やきもきしていると思います。
その結果始まったのが署名活動でした。
・はやぶさ2予算増額の嘆願署名
http://www.shomei.tv/project-1562.html
ここで矢面に立たされネットで叩かれまくったのは、事業仕分けで露出の多かった蓮舫議員。「1位じゃないとダメなんですか?。2位じゃダメなんですか?」発言は有名ですね。僕もスパコンについては、世界の現在の潮流から外れているから、設計を見直したりした方が良いと思いました。ただし、科学技術については「1位じゃないとダメ」です。やっている意味がありません。
そういう意味で「はやぶさ」は「世界初」という偉業を成し遂げました。「はやぶさ」の帰還は、日本だけでなく世界に響き渡りました。まさしく彼が大気圏突入で起こした「ショック・ウェーブ」です。次の日の新聞の一面は皆「はやぶさ帰還」だったわけですから。
それは、国民、民主党政権、文部科学省、マスコミに衝撃を与えました。でも、一番衝撃を受けたのは、宇宙航空研究開発機構「JAXA」でした。
「はやぶさ2」ミッションに予算が付かないのは事業仕分けのせい、と思ってらっしゃる方も多いと思います。だから「はやぶさ2」の予算を削った張本人と、蓮舫議員はネットで叩かれまくりました。しかし、これは違います。事業仕分けでは個々のミッションについては、議論されていません。
ではなぜ減額されたか?。予算配分は JAXA が行います。正式ミッションにまだなっていない「はやぶさ2」は、削りやすいところだったのです。
「はやぶさ2」に対して、何故こうまで風当たりが強いのか、それは「JAXA 内部の足の引っ張り合い」の結果なのです。この件については、ジャーナリストの松浦晋也さんがブログで詳しく解説されています。
・はやぶさ2にむけて:最後の障壁は身内にあり…か
http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2010/06/2-4723.html
・探査、JSPEC、宇宙理学委員会、日本惑星科学会、そして探査、探査、探査!
http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2010/06/jspec-6fc2.html
ざっくり説明しますと、JAXA には予算を策定する「経営側」と、ミッションの計画立案・設計・運用を行う「現場側」があるのですが、この「現場側」で足の引っ張り合いがおき、「はやぶさ2」が頓挫している状況なのです。
松浦さんのブログで紹介されている和歌山大学の特任教授、秋山演亮さんも「政府も、与党も、文科省も全然悪くないんです。」とコメントされています。そう、問題なのはサイエンス側、つまり科学者の「権限争い」です。
JAXA の「経営側」にしてみれば、ミッションを決めてくれなければ困るし、文部科学省も概算要求できない、という困った事になっているのです。
「かぐや」「あかつき」「イカロス」そして「はやぶさ」、これらは国民からしてみれば同じ JAXA の仕事です。にもかかわらず「はやぶさ2」に GO が出ないというのは、困ったものです。
先ほどご紹介した、和歌山大学の秋山教授もブログで「はやぶさ2」に言及されています。
・はやぶさリエントリー生中継とはやぶさ2
http://akiaki.info/akiyama/tDiary/?date=20100611#p02
やはり、「はやぶさ2」の背中を押すのは、国民しかいないのでしょうね。
情けないなぁ、もう!(-∀-#)
そうですね、今でも有人飛行ではアメリカやロシアに頼り切っているわけですが、世界のトップに立てたのですから。
どうも「はやぶさ2」に関しては誤解があるようですよね。C型小惑星を目標として、今回トラブルのあった部分の改良と、冗長化、アンテナは「あかつき」で採用されている熱に強いものに変わる予定ですし。
そもそも「はやぶさ」は「工学実験探査機」であって、イオンエンジンや自立航行などの実証事件が主目的だったわけですよね。ただ、それでは予算を出させるのに納得させられないので、頑張って帰ってきたわけです。これはもう、執念以外の何者でもないですね。「はやぶさ2」は「小惑星探査機」と正式になるんでしょうね。
JAXA への割り当て予算は、昔に比べて2割ほど減っています。しかし、現在の国の状況から考えても厳しい事は確かですね。でもなぁ・・・「かぐや2」には600〜800億円の予算が付いているんですけど・・・おやおや〜?
来年を目処に製造に当たった NEC とアメリカの企業の間で商用化される一歩手前まで来ているそうですね。けっして医療技術も稼げなくはないと思いますけど、幹細胞研究とか。日本はリードしている科学分野が結構あるのに、アピールが下手ですよね。環境技術だってそうですし。
さて「はやぶさ2」の実現はいかに?(-∀- )
>> おのさん
実はツイッターではもの凄い叩かれ方でした。3000万の予算を議員報酬と比べて揶揄したり、僕と意見交換した人も、僕が JAXA 内紛の話をしても聞き入れてくれない、そんな状態で疲れちゃいました。
しかし、税収より国債発行額が上回っている、現在の日本の予算では、良く考えてお金の使い道を考えなければなりませんね。まぁ、ここまで放置していた歴代政府も何だかなぁ・・・という感じですけど。
ただ叩いてはいませんでしたけど
誰が行うにしても、少ない予算をどのように配分するかは難しい問題ですからね
個人的な分析としては皆の望むはやぶさ2とやり玉に挙がっているはやぶさ2はちょっと違う。
前者はC型小惑星へ行く方。後者はイトカワリベンジの方。
最初に削られたのも後者であると、上記事群や「やたら叩いてるが17億から3000万はなんでだろう」と調べた人たちの記録を調べれば判る。
口蹄疫や、年数の危ない橋の改修、医療補助に今生きる子供達への支援・・・そんな中で宇宙開発は やっぱり軽視されるんだろうなぁと。
イオンエンジン販売始めたらきっと凄いのになあ・・・2011年を目処にだったかな・・・
そういえばツイッターのはやぶさタグで看護婦さんが「医療は消費するだけだが技術は稼げる」って言ってたっけなぁ・・・
某漫画でも「人材はお金のある所へ集まる」って言ってたし・・・
宇宙 ・・・ それは最後のフロンティア