~keep one's promis...
- カテゴリ:小説/詩
- 2009/04/08 21:09:25
~keep one's promiseその3~
早朝、朝もやが崩れたビルの谷間を埋め尽くす頃、ラック小隊のメンバーはMSに搭乗する準備を終えて集まっていた。
吐く息が早朝の寒さに白く、冷え冷えとした空気が周囲に満ちてはいたが、戦士達の心は熱く、寒さを感じないほどに戦闘への高揚感に包まれていた。
『各機出撃準備を!』
ツルギの声に答えて全員MSに搭乗する。
静かな街にMSの機動音が響き渡った。
『頼んだぞ、ソフィア軍曹』
『了解です、ツルギ隊長』
ソフィアの声に迷いも恐れも今はなかった。
幾度もの戦闘の経験から、迷いは即敗北に、恐れは即戦場に飲み込まれることになると心と体が嫌と言うほどに知っていたのである。
ソフィアのグリーンマカクのキャタピラが心地よい音を立てる。
この音がソフィアを泣き虫のソフィアから戦場の重戦士たるタンク使いのソフィアに変えてくれるのだ。
『ソフィア出ます!』
表情すら一変し、グリーンマカクの操縦桿を握るソフィア。
その瞳にはもはや敵の拠点であり、自らの目標であるビックトレーしか見えては居なかった。
一直線に北のクレーターを目指し、ドームへ進むソフィア、その前方に2機のMSが躍り出た。
『ツルギ、出る!』
『ウエンリー行きます!』
2機のゲルググが勢い良くソフィアのグリーンマカクを追い抜いていく。
ツルギの乗るゲルググは改良タイプで、高機動型になっているため、ウエンリーよりも少し早くソフィアを追い抜く。
ウエンリーのゲルググもソフィアの脇を抜け、ドーム目指して北クレーターの凹凸を乗り越えていた。
『かびごん出撃します!』
かびごんのザクスナイパーは、中央ルートを侵攻し、俗称ひな壇と呼ばれる高いビルを目指し動いていた。
『ライアス、行くよ』
『ラジアス、出撃する』
格闘機体に乗る二人も負けじと出撃の声を上げ、北クレーターを目指して進んでいく。
『おやおや、フルコースだわ敵さんも頑張るわね、顔つきにもどきにハンマー持ちに灰色の顔つき!4機向かってるわよ!』
『了解』
かびごんはインカムに叫ぶと同時にトリガーを引いていた。
金色の閃光が周囲の空気をゆがませながら尾を引いて顔つきと呼んだ機体に吸い込まれていく。
『まずはご挨拶の一発ってね!』
光の洗礼を浴びた顔つき、連邦軍ではガンダムと呼ばれている機体が大きくバランスを崩し、同時に光の向かってきた方向を向くが、その時にはすでにかびごんの姿はひな壇から消えていた。
『MSの相手はこちらに任せろ!ソフィアはドーム上へ!』
ツルギの言葉にソフィアのグリーンマカクの機体がふわりとジャンプしてドーム上へ浮かぶように登る。
『了解です』
『マカクには弾一個としてかすらせませんよ!』
ウエンリーのゲルググが背中からビームナギナタを引き抜く。
ナギナタの刃の金色の光がドームの壁を金色に照らし出した。
ソフィアの瞳には敵のMSも周囲の建物ももはや映ってはいなかった。
ただ静かな海にたゆたうように静かな心で目の前のビックトレーだけを見つめていた。
自分のなすべきことを行う、共に戦う仲間を信じて。
『砲撃開始します』
静かに宣言すると同時にモニター上の赤くロックオンされた大皿目掛けて砲弾を撃ち込むためにトリガーを引くソフィア。
その瞬間、インカムからかびごんの緊迫した声が響いてきた。
『なんてこと!敵さんにもタンクタイプが居る!』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・