【桜花の散華】
- カテゴリ:小説/詩
- 2009/04/11 23:48:42
今日、風に流される桜吹雪を見ました。
思わず口から『綺麗・・・』という感嘆の言葉とため息が漏れるほどに美しいその風景に、むらむらと妄想がw
てな訳で・・・書いて見ましたつまらない短文です^^;
【桜花の散華】
悔しい悔しい悔しい!
でも・・・それ以上に哀しい・・・。
私が何をしたというの!
ただ自分の世界にこもっていただけ。
想像することが好きで、本を読むのが好きで・・・。
誰も傷つけてなんかいないのに!
信じて、裏切られて、それでも信じたくて、また裏切られて。
泣いてなんかやるものか!
意地でも涙なんて見せたりしない。
負けたくないから。
気がつくと教室を飛び出していた。
走って走って走って・・・。
泣く場所を求めて走り続けた。
一人でこの思いを封印できるまで泣く為に・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
たどり着いたのは大きな桜の木の下。
この桜の木にいつも私は涙を捨てに来る。
他の誰も知らないけれど、この桜だけは私の狂おしいほどの哀しみと悔しさと憎しみを知っている。
誰も来ない廃工場に立つ桜の古木。
幹に触れているだけで癒されるような気がしていつもここで私は声を上げて泣くのだ。
物分りのいい、強くて優しくていつも笑顔の私でなく、素のままの私で居られる唯一の場所。
この桜もこの廃工場が取り壊されることになっている今年限りの命なのだ。
ふと、傍に誰かいるような気配を感じて振り返る。
そこに居たのは一人の青年だった。
『貴方・・・誰?』
人と会うことに恐怖を感じるほどに打ちのめされた心で居たはずなのに、不思議とその青年には警戒心を感じなかった。
まるでずっと知っていたかのような気持ちがあふれてくることを自分自身ですら不思議に思う。
青年が私の肩を抱いた。
抱かれた部分からじんわりと温かさが染みてくるようで、気がつけば私は泣いていた。
声を上げ、子供のように。
『泣くといい、苦しいときは声を上げて泣いて良いんだよ、声を上げなければ誰も気づきはしないのだから・・・』
優しい声だった。
温かい腕だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
桜は思った。
いつも私のところに来て泣いているあの子を慰めてあげたいと。
桜は思った。
いつも私のところに来るあの子の哀しみを癒してあげたいと。
桜は思った。
あの子の涙と哀しみが狂気に変わる前に助けてあげたいと。
自分が切り倒されることは風たちの噂話で知っていた。
それならばせめて切り倒されるその前にあの子を救ってあげたいと。
気がつけば桜は祈っていた。
心の底から。
祈って、願って、命と引き換えにしてもいい、あの子を助けてあげたいと心の底から・・・。
そうして桜の願いは届いた。
あの子を抱きしめる腕。
あの子に慰めの言葉をかける唇。
桜の願いはその残りの生命力と共にかなえられた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私は温かい腕の中で泣いて思う。
苦しみも悲しみも、憎しみさえも。
自分自身を育ててくれているのだと。
人の痛みを知った私は、人に優しくなれる。
痛みを感じてあげられる。
痛みを与えることをせずに居られる。
どれだけ独りが孤独であるかを知っている私は、独りでいる人を救ってあげることができる。
無駄なことなど何一つないのだと。
裏切りも私を成長させてくれたのだと。
泣いて泣いて、ようやく私は自分自身の心の暗闇から抜け出すことが出来たのだ。
私を抱きしめてくれた人の顔を良く見ようと顔を上げる。
そこには誰もいなかった。
抱きしめてくれた腕さえも温もりを残してその存在を消していた。
『ゆ・・・め・・・?』
そんな言葉が口をついてでてくるが、まだ胸の奥に残る温もりがそれが夢でないことを記していた。
不意に風が私をすり抜ける。
目の前がピンク色に染まった。
頭上を見上げると満開の桜。
風に流されてふわりふわりと浮遊するピンクの小さな踊り子たる花びらたち。
『綺麗・・・』
降り注ぐ花びらが空を一面のピンク色に彩っていた。
『そうか・・・そうなのね・・・』
私は桜の幹を抱きしめる。
文字数の都合で続く・・・