小さな奇跡
- カテゴリ:日記
- 2012/12/17 20:10:49
私の母は、フィリピンで貧しい人たちのための診療所を開いてる助産師です。
母のクリニックももう十数年かん続いていて、娘である私は色々と母の患者さんの面白い話をよく聞きます。
この前、十年前に母のクリニックで生まれた男の子が亡くなったんですけど、その子の話があまりにも感動的だったので、ここで書くことにしました。
その子の名前はリン君(あだ名しか知りません)と言って、数年前から肺の調子が悪くなり、私の母がたまに会いに行ってた子なんです。
その子の病気が一か月前から一気に悪化したみたいで、もちろん病院に連れて行きました。
フィリピンの病院は日本の病院と違い、お金のない人は一切相手にしないんで、リン君の母親が「もう家帰らせてやりたい」と言い、結局リン君は家に帰ることになり、代わりに私の母が見てやることになったそうです。
それから私の母は日本の支援者達から頂いたお金で酸素ボンベを買い、毎日リン君の調子を見に行くのが日課になりました。
薬とかも色々試しても、治るどころか、どんどん悪化していって、リン君は肺に負担をかけるため寝転がれなくなり、二十四時間座ったままの生活になったそうです。
あまりの辛さにリン君も自分の母親に「殺して」とか「僕のことをもう刺して」と言い出し始めたそうです。
その生活が一週間ほど続き、ある日、リン君が起きて自分の母親におびえたように「夢の中で怖いお化けに‘つらいでしょ?コッチ側に来たら楽になれるよ?’って言われたよ」って言ったようです。
その次の日もリン君は起きたら自分の母に「今度は僕ぐらいの子供二人に‘コッチに来たら楽になれるよ、おいで’って言われて追いかけられた」と言ったそうです。
でもリン君いわく、その追っかけてきた子たちは不陰気が怖かったらしくて、いやで逃げたと言っていました。
それから毎日リン君は起きるたびに母親に「また追いかけられたよ、もう逃げるの疲れたよ。」と言ってたそうです。
どんどん日がたつにつれ、リン君が「お迎えがまだ来ない」とか、「お兄ちゃんが来てくれないの」とか言うようになったそうです。
*リン君にはお兄ちゃんがいたらしいんですけど、数年前に亡くなったそうです
そしてある日いきなりリン君が朝起きて、自分の母に「今日はもう行かなきゃいけない日だから、親戚の人たちを集めて」ってお願いしたそうで、母親もびっくりして近所に住んでる親戚を集めたそうです。
それでリン君は自分の親戚の人たちにお別れを自ら言って、普段はろくに食べないご飯をお腹いっぱい食べ、私の母が渡した薬を「もういらないけど飲むよ」と言いながら飲み、自分から酸素マスクを「もういらないから」と言いながら取ったそうです。
その日の夕方、リン君は自分で言ったように亡くなりました。
私の母もリン君が死んだすぐ後に行って、見てみるとリン君が死ぬ直前まで使ってた毛布に20㎝ほどの小さな真っ白な羽が付いてたそうです。
でも、リン君の家には鳥の家畜は飼ってないし、家の周りにも鳥は一切いないらしい。
リン君の母親はその羽を大切そうに紙で包んで財布にしまったそうです。
きっとその羽はリン君が自分の母にちゃんと天使と一緒にあの世に行ったよと安心させるために置いて行ったんじゃないかと周りの人たちも言ってたそうです。
私の母ももしかしたら無駄に長生きさせて苦しませてるのかもしれないとすごく悩んでいましたが、その羽を見てもしかしたら間違えじゃなかったのかもしれないとすっきりしたような表情になっていました。
もしかしたら少しだけだけど命を伸ばすことによって、リン君の夢に出てきたお化け(死神)達に連れて行かれないですんだんじゃないかって言ってました。
*ここに書いた話はすべて現実で起きたことです。フィクションな部分は一切ありません。
そして、Frostさんのお母様は、本当に素敵な人だと思います
リン君の話はきっと、忘れません