Nicotto Town



読書メモ 本を愛しすぎた男

作者;アリソン・フーヴァー・バートレット 副題「本泥棒と古書店探偵と愛書狂」★5

何とノンフィクション

友人の自殺した弟の部屋から図書館で盗んだと思われる稀覯本が発見されたことから「本泥棒」に興味を持った作者は過去の記録調査、古書関係者からの聞き取りを始める。

偶然アメリカ古書籍商組合の防犯対策室長に就任してしまったケン・サンダース(←とても主人公らしい名前!)はひねくれ者であったが、相手が誰であろうが本泥棒には正義の鉄槌をくださねば気が済まない性格の持ち主だった。やがて組合員から寄せられる情報から広範囲でクレジットカード情報の不正利用による稀覯本窃盗が起こっていることに気が付く。本は蒐集目的らしく転売される様子もなかった。最悪の本泥棒ジョン・ギルキー(←とても悪役らしい名前のように思えてくる)との出会いだった。
本はこのサンダースとギルキーを軸にふんだんに欧米の古書のエピソードを盛り込み古書を愛する狂気を描いていきます。
ギルキーの何が最悪かというと「決して反省しない」ということ。彼によれば世の中は不公平で本を「取る」のは<持っている>古書店に対する復讐を兼ねた行為だとか、古書業者はすべて堕落した連中だとか。筆者がどんなに大半の古書店主は善良な人たちで本を盗まれたことで負う精神上・経営上・信用上の苦痛を説明してもまったく理解しない。
単なるキ●ガイと言い切るのは簡単だけど 犯罪史を紐解けば「俺が貧乏なのは世の中が悪いんだ!」と猟銃ぶっ放して強盗殺人を働いた凶悪犯もいるのでギルキーの場合は知能が高いほうで興味が本に行ったことは不幸中の幸いだったような気すらしてきました。

ギルキーの犯罪はインターネットでカード決済する方法を想定してみればわかりやすいと思います。アメリカではそれが電話のやりとりで出来るらしい。
カードの本来の持ち主に請求が行っても持ち主は支払い拒否すれば被害者は古書店のみ。

本の内容はギルキーの逮捕では終わらず そこは通過地点でしかありません。
被害額が合計100万ドルいっているのに、罪が意外と軽くてギルキーは数年で仮釈放。作者は再びギルキーにインタビューしますが。
ギルキーの行動、その他が怖い。
①自分の犯行を自慢げに聞かせる のはまだ序の口
②出入り禁止になっている古書店に「作者」を連れて入り、古書販売業者が悪いと延々話す。
③実演、公衆電話から古書店に電話してみせ。彼らが如何にだましやすいか解説する。
④息子は誤解されただけ と息子の犯罪を認めないギルキーの母親。(当時死亡しているがギルキー父の存在もかなりギモン)

善良な一市民の作者が青くなりビクビク付き合うのが目に見えるようでした。



ちなみに作者に依れば19世紀スペインでは稀覯本を手に入れるために10人の所有者を殺害したドン・ヴィンセンテという男がいたそうです。

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2015/02/23 20:02
古本屋・図書館舞台のミステリ
ジャンル化してきたのでしょうか



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