Nicotto Town



自作小説倶楽部5月投稿

 『5人分で無限の夢』 

5人の幼なじみが揃うと自然と思い出話で盛り上がった。
「親父には参ったよ。小学校に上がる前から〈儂の跡を継いで政治家になれ〉って、耳にタコが出来るほど言われた」
胸にキラリとバッジを光らせてSが言った。
「僕なんて学校でもやらないような難問を解けるまで許して貰えなかった」
と分厚い眼鏡を掛けたMの父親は学校で一番恐れられた数学教師だった。
「父が俺に何を期待しているのか分からなかったよ。自分が築いた財産を守れ。誰もが目を付けないところに儲けるチャンスがあるって言われ続けた」
と経済界で成功したJ。
「しょっちゅう親父の職場に連れて行かれたよ。飛行機が見れるのは良かったけど〈パイロットなんて駄目だ。父さんみたいな技術屋になれ〉って」
とG。今では親父さんの遺品の工具箱を肌身離さず持ち歩いている。
「僕なんてもっとひどかったよ」
と僕。
「潜水士なんて当時もかなり機械化されてたのに夏場は毎日素潜りさせられたからね」

親の期待、親の夢、そして自身の将来への不安に押しつぶされ幼い僕たちは絶望していた。
言い出したのはJだかMだか良く覚えていないが5人とも自分たちの想像に胸を踊らせた。
僕たちはロケットを作って地球から逃げ出す計画を立てたのだ。
本体は空き地に埋もれていたひび割れた土管。それに海辺やゴミ捨て場で拾って来た木材やトタン板を取り付ける。釘やネジ、針金はGが調達した。Sが青い絵の具で塗装して赤色で〈あおいライオンごう〉と書いた。
出来上がった頃にはすっかり日が暮れていた。何時まで土管の上の座席にで操縦桿を回していただろう。火星探検も想像だった。
しかし、それは僕たちの最初の確かな〈夢〉だった。

「まあ、親の言うことは一応聞いてみるもんだな。政治家もやりがいはある」
「頼りにしてるぜ。大臣殿」
Jがすかさず茶化す。彼の新事業は政府の宇宙開発プロジェクトに大きく関わっている。
「数学やめて物理学者になったことで一時口を聞いてくれなかった父が今じゃ自慢して回っているらしい」
今回の宇宙飛行でMの理論が正しいことが証明されればノーベル賞も確定だ。
「そうだ。公募で腑抜けた名前になったが、エンジンにはちゃんと〈青いライオン号〉と書いてあるからね。僕たちのロケットを頼んだよ。船長殿」
Gの言葉で4人の期待のこもった眼差しが僕に注がれる。僕はしかと頷いた。

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2015/06/12 08:47
蒼い獅子はどの星をめざしていくんだろう。
やっぱり夢を叶えるっていいですね^^
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2015/06/04 00:28
らてぃあ様
今回は49アクセスでした
御寄稿ありがとうございます
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2015/06/01 21:38
「不可能とは可能性だ!」と言う意味の事をモハメッド・アリが言っていたのを思い出した。」
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2015/06/01 06:42
ロケット
子供の時は憧れるもの
ペットボトルに加圧した水を詰めて飛ばす
という発想が湧かなかった私でした
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2015/06/01 01:22
短編で、病気の友達を回復させようと、風呂桶ほかガラクタを集めてタイムマーシーンをつくろうとした子供たちの物語を思い出しました。彼らの未来は、科学者ほか大物になり、もっともダメだという語り手は作家になってます。
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2015/05/31 22:09
ご都合な話ですいません。



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