Nicotto Town


あくびのシナプス。


そこで待ってて



人の心は移ろいやすい。


「駄目だよ」


「なんで?」


「私達、付き合ってないじゃない」


ベッドに押し倒された私は
そう言って目の前の男、直也の胸を押して
ベッドの上に座り込んだ。


「でも、俺のことも好きなんだろ?」


心が痛む。


私には最愛の彼がいる。
裏切る事なんて出来ない。


けれど間違いなく
目の前の男にも恋愛感情を抱いているのだ。


「ごめん…私もどうしたら良いかわからないの…」


「美保、俺のところに来いよ。絶対幸せにする」


「うん…もう少し考えさせて」


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               ・

「ただいま」


「あっ、悠介。おかえりなさい」


「美保、ちょっと話したい事があるんだけどいいかな?」


「ご飯も出来てるし、お風呂にも入れるよ?」


「うん。その前にちょっと話したい」


そういって付き合って3年
同棲して2年の彼、悠介はネクタイをゆるめた。


「う、うん」


美保は戸惑った。


まさか彼の事がバレた?──…


「で、どうしたの?私に話って」


「うん。いきなりだけど…
 美保、他に好きな人がいるのか?」


「えっ…な、なんで…?」


「昨日の夜、美保が眠っていた時
 LINEが着信してて…
 画面を覗いたら、聞いたことのない男の名前だった」


「あっ…」


確かに昨夜、「次はいつ会える?」という
誤魔化しきれないLINEが着信していた。


美保は黙り込んだ。
なんと返せば良いのかわからなかった。


「体の関係はあるのか?」


「ない…悠介がいるから…」


「じゃあ、今、俺の目の前で
 その男の連絡先を全部削除出来るよな?」


「えっ…」


「そこで戸惑っちゃうんだ」


「私…悠介の事が大好きだけど…
 他にも…好きな人が…」


次第に美保の目に涙がたまっていく。


「別れよう?」


悠介はそう一言だけこぼした。


「でも私…悠介の事も大好きだし…
 勝手な事ばかり言ってごめんなさい。
 私自身も、自分の気持ちがわからないの…」


「そんな事は許されないよ」


美保の瞳から伝った雫が
顎のラインに流れ、こぼれ落ちる。


「やり直したいなら一週間以内に
 そいつの連絡先全部削除して。
 それまで俺、友達んちに厄介になるから」


悠介は美保の目を見ず席を立っていった。


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               ・


小さな喫茶店で、直也と向かい合っていた。


「…ということなの」


「いいじゃん、別れて俺のところへこいよ」


「そんな簡単に割り切れないよ…」


美保は目の前のコーヒーに入れたミルクを
くるくるとスプーンで混ぜる。


美保と直也の馴れ初めは
友人に強引に参加させられた合コンの席だった。


連絡先を交換して、なんとなくやりとりをしていたら
二人で会うようになり、現在に至っている。


「悠介の事も…直也の事も…大好きなの。
 最低だよね、私」


「最低でも俺は好きだよ」


「私…二人に、もう会わない方がいいのかもしれない」


「俺は美保に会いたい」



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                ・
                ・


美保のスマホが着信音を流していた。


「えっ…?」


電話の相手は美保と悠介の
大学時代からの共通の友人からだった。
悠介が厄介になっている友人というのも彼だろう。


「今、なんて…?」


スマホを握る手がブルブルと震えた。


気付くと美保はタクシーに飛び乗っていた。


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そこは真っ白な空間だった。


「嘘…」


ベッドに横たわる悠介は
真っ白な顔をして目を閉じていた。


ただ眠っているだけにしか見えなかった。


「美保の様子を見てくるって出かけて行って…
 飲酒運転のトラックが赤信号を無視して
 悠介がはねられたんだ…即死だったって」


美保は悠介の体に近づいた。


手のひらを触ると
そこにあったはずの温もりが
一切なかった。


悠介の死をリアルに感じさせた。


「私のせいだ…私の…
 うちに帰ってきてくれるところだったんだ…」


美保の目からとめどなく涙がこぼれる。


「悠介…悠介…」


冷たい手をギュッと握って泣き続けた。


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               ・


煙突から煙があがっていた。


花が好きな悠介の棺には
たくさんの色とりどりの花を詰め込んだ。


今、荼毘に付されている。


美保はその煙をずっと眺めていた。


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              ・
              ・


直也には悠介の死を伝えなかった。


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2019/01/21 14:03
>>ぱぉぱぉ

恐縮ですΣ(゚Д゚)
ありがとうございます♪
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2019/01/21 14:02
>>しのさん

二兎追う者は一兎も得ず!
BAD ENDにしてしまいました(; ・`д・´)
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2019/01/21 14:01
>>ナツメくん

方向性を間違った結果こうなりました(*ノω・*)テヘ
***はどうしても必要なことだからね!
ナツメくんのブログでも***を使ってほしいな( ̄ー ̄)ニヤリ
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2019/01/21 08:36
やーん、悲しい・・・。
しかし、文才ありますね。
お見事です!
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2019/01/20 23:22
嫌な別れ方だわ~一生心に傷(罪悪感)が残るじゃないのよ
二兎追うものは一兎も得ずかぁ。
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2019/01/20 22:57
さすがはあくびさんです。
まさか「上手な振り方、振られ方」がこんな風になるとは…。
マジトーンの小説のセンスも抜群ですね♪
↑のような状況で…***、って、違う!
う、嘘ですよ〜( ̄▽ ̄;)
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2019/01/20 21:21
>>ともくん

ともくんの涙GETぉぉぉう♪
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2019/01/20 21:20
>>お茶ノはちゃん

な、直也か…!
続きはお茶ノはちゃんブログでw
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2019/01/20 19:18
うわあぁぁぁんんん(;。;)
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2019/01/20 13:28
その時、喪服を着て涙を流す美保を、少し嬉しそうに見つめる男の視線に美保はまだ気づかなかった……。



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