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ネタばれ読書日記 『「舞姫」の主人公を~』

『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』 署:山下泰平

文学案内である。やたらとタイトルが長いのは著者がブロガーのせいか、、

★4

【内容】
明治の文学はリアルが芸術だという写実主義から始まり文学・娯楽としてもすぐれた夏目漱石で飛躍的発展を遂げたことは教科書の通りである。その反面、低俗なものとして扱われた講談速記本という読み物が存在した。最初は講談師の語る内容を文字にしていたが次第に最初から読み物として書かれ出版されるようになる。ただし内容は講談のように戦闘シーンの見せ場重視でリアリティ軽視。それでも冒険譚や装飾だらけの「犯罪実録」などに発展し、少年猿飛佐助を生み出すなどその後の娯楽文化に大きな影響を残した。


で問題のタイトルの元の作品は『蛮カラ奇旅行』(明治41年)という講談速記本である。
まず本家本元の『舞姫』(森鴎外 明治23年)といえば、豊太郎という留学生がエリスというドイツ人女性と知りあい恋愛、同棲、彼女が妊娠するが 豊太郎は友人の説得に負け帰国を決意、事態を知ったエリスは発狂してしまう。豊太郎はエリスの母親に金銭を渡し帰国してしまう。
映画版じゃ都合よく流産するんだけど、読んでみたらさらにひどかった。
映画を見たのは中学の国語の授業だったど、あの国語の先生、下手に解説して女子の反発を招きたくなかったんじゃないかな? 煙に巻かれた謎の授業だった。
明治期にもケシカランと思った人間がいたということは大きな収穫でしたが講談速記本は無茶苦茶でした。紹介されている内容は大体次の通り。

まず、主人公;島村隼人はハイカラ、イコール、西洋人と西洋文化、イコール、悪 と西洋人に鉄拳制裁かつ殺人のために海外に旅立つ。船上で主人公に襲い掛かって来たイギリス人の狂女:雪枝(もはや名前くらいで突っ込んではいけない)の事情はおおよそ本家と同じ。で、元留学生;織部欽哉を殴ると決心。取り敢えず予定通り欧州で殺戮を繰り広げバンカラの本家?であるアフリカ人と帰国。偶然汽車で問題の織部と遭遇。
突然ぼこぼこに殴り、驚いた周囲の乗客に大声で織部の卑劣な行為を告げる。
なぜか雪枝の病気は治りみんなで万歳して終了。

主人公が兎に角正義で暴力シーンに偏るのは難解なストーリーよりも読者をスカッとさせるためだろうと思います。内容はとんでもないですが、大勢の正体不明な書き手たちが努力していたのかと思うと愛おしさすら感じるのです。
ちなみに、真田十勇士を生み出した講談では猿飛佐助は大男で、講談速記本で真田幸村の隠し子や孫を登場させるうちに真田十勇士も変化させられ少年の猿飛佐助が誕生したそうです。

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2021/03/22 19:57
エリスさん、日本に来られて、帰されてしまったのですよね。
アバター
2021/03/22 19:11
明治の番町もの




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