Nicotto Town



ネタばれ読書日記『赤い橋の殺人』

著;バルバラ

評価 ★5
あらすじ
19世紀中葉のパリ、悪徳証券仲買人が自殺し、彼の会計簿から百万フラン以上の金が消えていたことが話題になる中、マックスは友人のクレマンに再会する。かつて赤貧の生活を送っていた友人は裕福になり、その幸運な経緯を理路整然と説明する。対して何かにおびえて病床にあるその妻のロザリ。そして何故か死んだ仲買人にそっくりな彼らの息子が白日にさらされると、クレマンは妻が仲買人の愛人だったと嘘の告白までして周囲の疑問を封じる。
ロザリが苦悶のうちに死ぬとクレマンは白痴の息子を連れアメリカに移住することを決意し、マックスにすべてを告白する。
仲買人を殺し大金を奪ったのはクレマン夫婦だったが大半の非は被害者にあった。貧困のあまり毒薬で心中を図ろうとした夫婦の前に仲買人は不正で得た大金を抱えて現れ、傲慢にも愛人との逃亡の手伝いを頼み、ワインを買いに走らせた。誰も仲買人の行動を知らず、毒薬は手元にあった。積年の恨みを晴らし、殺人を実行してしまったのだ。
その後、マックスはクレマンの消息を二度知る。一度目はアメリカで善行をなしながらも不気味な白痴の息子と暮らす人として、そして二度めはフランスへの帰国途中にクレマンが死に、マックスが遺産の包括受遺者として指名された時だった。

感想
あらすじを書いてみるとどう見てもサスペンスですが、発表された19世紀はまだミステリという分野が確立されていなかった時代なので、作者の才能に感心するばかりです。マックスは作者の分身のようですが、語り手というより視点のひとつです。
小説の読みどころは過去の殺人を忘れて生活しようとする夫と怯える妻の様子と殺人の告白です。夫婦の子供が殺した男に似て来るなど迷信的描写もありますが、それまでのどん底の生活も語られ、追い詰められて殺人を犯したのだと納得させられるだけの背景がちゃんとありました。


アバター
2021/12/20 19:45
19世紀ごろの文豪と呼ばれる作家による名作と呼ばれるものはどれも、ミステリ仕立てであるように感じます。ポオですらご自分がミステリというジャンルを創始したことに気づかなかったようですし。



月別アーカイブ

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009


Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.