Nicotto Town


人に優しく。


もっと美人に


「鼻の外科手術をしていたの?」

「女性たちをより美しくしていたのさ」

「そんなことしても、ムスリムの女たちはみんな顔を隠しているんじゃなかったっけ?」

私がそう言うと、彼は笑った。

馬に乗った看守がやってきて、さあ出発しろ、と命じた。

我々はよろよろと前進を開始した。

全部で八人のグループが、気乗りのしない大きな動物のように緩慢に動き出した。

「あんたにも、私の顔はいじりようがないだろう」と私はウィンクしながら囁くように言った。

「鼻には何の問題もなさそうだが」

「鼻のことを言っているんじゃないよ」

「何のことを言ってるんだね?」と彼は表情ひとつ変えずに尋ねた。

「よく言うよ」と私は言った。

彼はまじまじと私の顔を見た。

それまで私に変わったところがあるとまったく気づかなかったという具合に。

「酸で焼かれたみたいだな」

「石灰だよ。でもまあ近いね」

「ああ、治療は簡単だ。表皮を再生させるために化学薬品を使うんだ。瞼の部分の皮膚を作り直すには、私なら太ももの皮膚を移植するね。前よりもっと美人にしてあげられると思う」





ー 『極北』 マーセル・セロー ー




 




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