Nicotto Town



ネタばれ読書日記『薔薇の輪』

著;クリスチアナ・ブランド

評価★5
あらすじ
美貌のイギリス人女優エステラの飛躍のきっかけは約10年前に発表した『スイートハート物語』という戯曲だ。自分と障害を持った幼い娘の苦闘の日々は人々を感動させ。舞台化はもちろん、ドラマ化、映画化され、今も娘から母への手紙という内容の新聞連載がされている。
細心の注意を払って設計された女優人生に大きな障害が生じる。シカゴギャングの夫アルが心臓病による特赦で出所し、娘に会わせろと要求してきたのだ。デビュー前の貧しさからエステラは養育費を含む多額の金銭を受けとっており拒否も逃亡もできない。しかしスイートハートと呼ばれる娘は世間やアルが思うような美しい娘ではない。物語原作も新聞連載も秘書のバニーを含む「仲間」の作品だ。押しかけて来た夫と相棒のエルクとともにエステラは娘を預けている農場に向かう。
翌日、世間に驚くべき2つの凶報がもたらされる「スイートハート」の行方不明と現場の農場で二人のギャングが一人は心臓発作、もう一人は銃撃によって死亡していた。
現場に到着したチャッキー警部はエステラが『演技』していることに気付き、誰も正体を見たことのない娘の存在を怪しむ。しかし連載誌の新聞記者ジョニーは昔、よちよち歩きの娘を確かに見たと証言した。現役女優のエステラだけでなく秘書バニー、農場のビルとローナ夫妻も演劇経験者で長年の共犯関係とアドリブでチャッキー警部の推理を何度も封じる。しかしチャッキー警部は電話通報のトリック、そして目撃情報の娘はバニーの変装だと見抜く。
そして精神的に追い詰められたローナが一人家に残された時、ローナに少女の姿を庭に見せたことですべて崩壊する。ローナはバラの花壇があった場所を爪でかきむしりだした。そこには本物の「スイートハート」が埋められていた。
本物の娘は5歳程度で病死していたのだ。ちょうど映画化も決定した時期だった。エステラの成功に投資していた4人は世間から娘の死を隠ぺいすることに決めたのだ。
そして父親のアルにはバニーが変装した醜い少女を見せつけて追い返す予定だった。しかしアルは心臓発作を起こす。公衆電話の場所で変装を解き娘の行方不明を通報したバニー、アルを助けるため通報したエルクが鉢合わせしたためバニーはエルクを射殺したのだ。
チャッキー警部とジョニーは捜索隊の帰還を待つが、戻って来た人々の中にバニーの姿は無かった。新聞記者であることを選択したジョニーは娘の死と、殺人犯の転落死を報じる。

感想 
読み始めた時はエステラの不自然な言動に違和感を感じ、何回「スイートハート」を連発するんだとうんざりしかけました。大体娘の本名は『ドロレス』(意味は悲しみ。聖母信仰の悲しみの聖女からくる名前)というのもどうかと思う。
しかしチャッキー警部が登場以降の騙しあい、ぞっとする事件の真相.。〈可哀想な美しい子供〉の虚像を祀り上げるメディアと商業主義の描き方もよかったです。
ちなみに作品の発表は1977年なので電話は限定された場所の公衆電話か家電のみ。




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