Nicotto Town



ネタばれ読書日記『殺意のシナリオ』

著;JFバーディン

評価★4
あらすじ
広告会社の社長の娘婿として一時は成功者の地位にあったバンターだが、義父から与えられた仕事で失敗を繰り返し精神を疲弊させていた。朝から呑んで出社するとデスクの上に『告白』と題された原稿があった。読んでみるとバンター自身が過去を告白する内容でまだ起こっていない今夜の出来事が書かれていた。
一方、バンターの妻ドロシーは父のフォスターとともに精神科医のマシューズを訪ねていた。二人によればバンターは酒に溺れるだけでなく浮気を繰り返しているという。マシューズはバンターの大学時代の友人だったため困惑する。
午後にフォスターに呼び出されたバンターは解雇通告を受ける。落ち込んで自宅に帰ったバンターをさらに衝撃が襲う。『告白』の内容の通り親友ジェレミーが恋人を連れて訪問することをドロシーに告げられたのだ。逃げることもできず小さなパーティが催される。いくつかの会話は『告白』と違っていたが、予言通り放送局勤めのジェレミーは仕事で中座し、バンターがジェレミーの恋人のブレンドを送っていくことになる。警戒していたバンターだがつい、ブレンドに言いよってしまう。ブレンドは予言と異なりバンターを拒絶した。
バンターが夜の街で飲み明かし、オフィスで目を覚ますとデスクには『告白Ⅱ』があった。それによればドロシーが離婚を突きつけ、預金の大半を持って立ち去る。そして街を放浪したバンターはブレンドの家に招き入れられ自信を取り戻すという。
予言を現実にしないために妻からの電話を拒否した。
バンターと話し合うことをあきらめたドロシーはジェレミーに縋ってしまう。
泥酔したバンターが目を覚ますと、怒り骨頂のブレンドの部屋にいた。アパートの彼女の部屋の前でバンターは倒れており、変な噂になることを恐れた彼女はやむなくバンターを助けたのだ。替えの衣服はバンターの持っていた鍵を使い自宅からもちだしていた。自宅にドロシーはいなかったという。
妻の不在を不審に思いながらも出社すると2つの『告白』が盗まれていた。すると秘書のミスグレーが辞職とともに正体不明の相手から送られた口止め料を受け取り、原稿をデスクに置いていたことを懺悔した。
犯人はかつて妻に横恋慕していたジェレミーに違いないと、バンターがジェレミーの自宅に向かうと、そこにいたのはジェレミーではなくブレンドだった。彼女は部屋に置かれていた『告白』を興味深く読んでいた。
そこにバンターの行動を不審に思ったマシューズとフォスター、恋の終わりを自覚したジェレミーとドロシーもやってくる。そんな彼らを前にバンターはマシューズ以外の者に『告白』でバンターを陥れる動機があると告げる。バンターは突然外に飛び出し、ドロシーと遅れてフォスターが追いかけた。
バンターは地下鉄で電車にひかれて命を落とした。
ドロシーとフォスターはバンターが自殺したと証言したが、偶然現場にいた盲人は悪意に満ちた罵りが聞こえ、誰かが殺人を行ったに違いないと証言した。
フォスターのオフィスに関係者を集めたマシューズは『告白』を送ったのも、バンターを殺したのも義父のフォスターだと断定する。フォスターは最初から娘婿を憎み、娘からバンターの行動や予定を聞き出し、金の力による情報収集で娘婿を陥れたのだ。そしてバンターはフォスターをドロシーから引き離すため行動したが、追いついて来たフォスターに線路に突き飛ばされたのだ。夫を失ったドロシーは唯一の肉親の父親をかばうしかなかった。フォスターはバンターを罵り犯行を認めたが、法の手によって彼を裁くことは出来なかった。彼は脳卒中を起こし命を落としたのだ。

感想
未来を予言するという不可能なトリックを金と権力で可能にした怪作。被害者が鬱+アル中なので頻繁に記憶が飛びあっさり、ひっかかります。まあ、鬱になったのは出来ない仕事を押し付けられたことも原因なのだろうから、犯人の性格の陰険さがすごいです。
作者はイカサマ師やの口上を感心しながら聞いたことがあるに違いない。




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