Nicotto Town



夏の香り

もう少し雨が降っていて欲しい

もう少し駅が遠くにあって欲しい

そう思っていてもあなたは早歩きで進む
この雨が少し強すぎるから

少しぐらい濡れても良いのに
夏の雨だよ冷たくはないよ

なぜ黙って進んでいくの
いつもは笑って話をしてくれるのに

組んだ腕が引っ張られる
傘の位置もいつもより高い

雨の中を小走りに進む
こんな時に限って駅前の横断歩道の信号は青

駅に着くと傘をたたみ
あなたは大きなため息をつく

「ばか」と一言
「ん、何が」とあなた

少し小降りになってきた
傘を差してもう一度戻ろうよ

そんな事を言えるはずもない

あなたに触れていた腕が
少しだけ熱い

雨の中に微かに
あなたと夏の香りがする






#日記広場:小説/詩




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