感想:アン ブロークンアロー 戦闘妖精・雪風
- カテゴリ:小説/詩
- 2009/12/16 12:48:40
神林長平氏の「戦闘妖精・雪風」の3作目「アン ブロークンアロー 戦闘妖精・雪風」を読み終えました。
前作「グッドラック 戦闘妖精・雪風」では、地球に侵攻してきた異星体「JAM」が、30年に及ぶフェアリー空軍 (FAF) との膠着した戦いに対して、FAF 戦闘知性体群に今までにない攻撃を仕掛けます。
本作では、FAF 内で独立した組織として戦闘を続ける、特殊戦・第5飛行戦隊の人間と戦闘知性体に「JAM」からさらに過酷な攻撃が加えられ、特殊戦はさまようことになります。
非常に本作は難解といっていいかもしれません。量子論の「不確定性原理」や「対称性の破れ」などが、バックグラウンドとして用いられ、それらが特殊戦の人間と戦闘知性体を翻弄します。
時間と場所と記憶はバラバラにされ、物語の中ではそれらが入り交じった表現がされます。正直、これを完全に理解するのは不可能と思えるくらいです。むしろ、理解できない事は著者が織り込み済みのような気もします。しかし、読み返してみると「不確定性」を破棄し現実を取り戻すため、主人公の深井零と特殊戦の人間たち、そして戦闘機であり戦闘知性体である「雪風」の奮戦する模様が、克明に描かれています。
ラストシーンは非常に印象に残る、壮快な終わり方です。ただし、異星体「JAM」との戦闘は終わったわけではなく、むしろこれから更なる困難が待ち受けている、という印象を残して終わります。
はっきり言って、前作、前々作に比べてとても難解ですが、ぼく個人はとても楽しめました。「戦闘妖精・雪風」シリーズは何度も読み返していますが、今回もまた読み返したい気持ちに駆られました。
これからお読みになる方は、必ず第1作から読むことをお勧めします。
1.戦闘妖精・雪風<改>
2.グッドラック 戦闘妖精・雪風
3.アン ブロークンアロー 戦闘妖精・雪風
この順番です。僕の友人はうっかり、1と2を逆に読んでしまっていましたので気をつけましょう。
ハードなSFを読んでみたい方には、個人的にお勧めです (・∀・)b