俳人・正岡子規の出身地である愛媛県松山市では，
高校生を対象にした俳句コンクール 「全国高校俳句選手権」，
通称 「俳句甲子園」 が毎年開かれています。
今年は１７回目で，今週日曜日に決勝戦が開かれたそうです。

単身赴任しているので
娘が今学校で何を習っているのか把握していませんが，
中３なので娘も俳句や短歌を習っているかもしれません。


私が中３の時，国語の授業で，
短歌を２首作れという課題が出されました。

一番窓側の席に座っていた私は，
窓の外を見ながら 「何にしようかな～」 と考えました。
教室の窓の向こう側は広い校庭で，
その向こうは高台になっていて，その上に大きな国立病院が建っていて，
その４階の一つの窓は，母が最後に入院していた病室の窓でした。
授業中，退屈になると，ふと見てしまう窓でした。

その景色を見ながら，
「教室の　窓の向こうの　病院の　あの病室に　母の面影」

おお！　五七五七七になってるじゃん。　一丁上がり～ ♪
でも，なんか暗いか？
明るいネタとか失敗ネタもあった方がいいか？

「夕食の　野菜炒めの　タマネギを　刻むそのたび　涙こぼれる」
ま，こんなもんか。　終了～ ♪


二日後ぐらいに，隣のクラスの女子から，
「ふみふみ君の短歌，うちのクラスの授業で先生が発表して，
すっごい褒めてたよ！」 と言われました。
ぎょえっ！　なして？！　なんか，嫌な予感…。

私のクラスの次の国語の授業で，
先生が 「前回皆に書かせた短歌を発表する」 と言うと，
恐れていたとおり 私の歌を発表しました。
先生は，勝手に二つの歌を続き物と勘違いしていて，
一首目で，昼間に静かに母を思い出している姿を描き，
二首目で，家で一人の時に泣いている姿を描き，
しかし，母のことで泣いているとは直接書かずに，
タマネギが目に沁みたせいにしているところが良いと言い，
「先生は感動して泣いた」 などと熱く語りました。

私は，「ちちちち，違うっす！
二首目にそんな深い意味は無いっす！」 とも言えず，
居眠りをしている振りをして顔を隠しながら，
「早く終われ～。他の奴の作品に話を変えれ～」 と念じ続けました。
良心が傷んで，冷や汗ものでした～。


これと同じ頃，私の父は短歌にはまっていて，
近所の短歌サークルに入っていつも短歌を作っていました。

ある日，父が，「いい作品ができた」 と言って私に読ませました。

「掌　陽にかざし見よ　鮮やかに　父の血流れ　母の血流れる」

「…。最初の字…，『しょう』 ？」
「 『たなごころ』 よ！　手の平の意味よ！
そんなことも知らないのか。　はんかくさい」
（　↑　「馬鹿な奴だ」 という意味の北海道の方言です。）

気を取り直して
「たなごころ　陽にかざし見よ　鮮やかに…」 と読んでみましたが，
「手の平を太陽にかざしたら血が流れているのが見えた…って，
すっげえ有名な歌のまんまじゃん」 と内心思ってしまい，
私はこの歌を褒めなかったので，父は不満そうでした。
きっと父は，あっちの歌は 「真っ赤に流れる　僕の血潮」 だけど，
流れているのは 「僕の」 じゃなく両親の血なんだというところが
自分で気に入っていたようで，年末には年賀状にその歌を書いて，
親戚や友人知人に 「お披露目」 していました。


私が好きな俳句・短歌といえば，
十数年前に 「めざましテレビ」 の中の
「松任谷由実選集五七五」 というコーナーで，
別れか旅立ちをテーマにした時の作品ですねえ。
随分前に一度聞いただけの川柳ですが，忘れられません。

「二の腕の方が　大きく揺れている」

場面としては，旅立っていく子供に向かって母親が，
「元気でねー！」 と言いながら手を振ったのでしょうけど，
肘から先の動きより，二の腕の方がブルンブルン揺れたんでしょうね。

二の腕が大好物の私は，この作者が好きになりました。　＾＾