Nicotto Town



英気を養えよ

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 麗しき市の微笑みが思い出される。その幸福を与えたのは牛太郎であったけれど、それの破壊に参加しようとしている自分もいる。
「小谷城は堅牢だ。これまでの攻城のように、一日二日で終わらせる攻城じゃねえ。周囲に砦を築き、浅井の者どもを根絶やしにしてやる」
 上総介は家臣の女房を気遣うこともあれば、癇癪を起こしたりもする気難しい男なのだが、妹の市がいる小谷城を攻めなければならないという感傷を克服したと思われる。戦国の掟を貫く意志がはっきりと表明されており、だからこそ、織田の古くからの家臣は上総介のこの激しさに忠誠を誓っていた。
「出陣は明後日、横山にいるサル、五郎左と合流し、小谷城下を焼き払う。それと奇妙も連れていく。初陣だ」
 なるほど、と、牛太郎は思った。当初から上総介の隣には奇妙丸が座っていたが、軍議に顔を出したことはかつてなかった。
 つい先日に元服したばかりの勘九郎信忠の初陣と聞き、諸将は、おおっ、と歓声を上げる。
「ついに奇妙様の御出陣ですか!」
 筆頭家老の佐久間右衛門尉が細長く伸びた口髭を震わせると、隣に座っている柴田権六郎も口を大きく開けた。
「これは是が非でも負けられぬいくさでありますな!」
「うつけが」
 湧き上がった諸将に水を差すような睨みを、上総介は与えた。<a href="http://www.jdscah.com" title="http://www.jdscah.com">http://www.jdscah.com</a>
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「奇妙の出陣うんぬんで負けられぬいくさなのか。このいくさは当初から負けられぬいくさだ。今の我らに負けるいくさなど許されんわっ!」
 しんと静まり返った場をよそに、上総介は腰を上げて広間をあとにしていった。
「気にするでない」
 と、勘九郎は父親にまるで似ていない柔らかい微笑を浮かべた。
「父上は気が立っているだけだ。我はお主たちの意気を嬉しく思う。だが、我のためではなく、織田のために、この織田に住まう者どものために戦おうぞ」
 まだ、齢十五である。諸将は少年らしからぬこの言葉に感服するかのように一斉に頭を下げた。
 軍議は終わり、諸将はそれぞれ岐阜城を下りた。
「若様は見ない間にご立派になられましたね」
 涼やかな風が吹き抜ける稲葉山の山道を下っていきながら、肩を並べる左衛門太郎は牛太郎に言った。
「おやかた様に逆らってばかりだという噂を聞いたこともありますけれど、実は、うつけと言われていたおやかた様に似ているのかもしれませんね」
「まあ、似ているかもな」
 牛太郎は上総介の気難しさをよく知っている。嫡男の勘九郎とは一度しか面を合わせたことがないが、やはり気難しい少年だった。
「でも、初陣がこのいくさだとは、若様には酷ですね。姉川のような大きな野戦にはならないかもしれませんが、小谷城の抵抗は相当なもののはずです」
「馬鹿言うな」
 牛太郎は足を止めると、頭上を仰いだ。緑がほのかに褪せ始めた木々の葉のすきま、高く突き上がった空に白雲がゆるりとたなびいている。
「抵抗しない人間が今までいたか」
 稲葉山の裾野は、領内各地から集まって来た軍勢でひしめき合っている。圧倒的な数でもって勝利を目指す上総介のいくさは、いつもこうだ。城下は兵卒と馬でごった返す。しかし、この空はいつも穏やかである。
 なるべくなら、いくさは避けたい。
「左様でありました」
 と、左衛門太郎は、ひところの情けなさとはおもむきが変わりつつある養父の姿に口端を結び、同じ空を眺め上げた。
 だが、戦い続けなければならないのも、この親子の現実である。
 牛太郎と左衛門太郎は稲葉山を下りると、郊外の願福寺に足を運び、境内に駐屯している簗田家直属の軍団、尾張沓掛勢二百五十人と、尾張九之坪勢五十人に号令した。
「出陣は明後日だ。英気を養えよ」
 

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2013/09/24 12:22
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