Nicotto Town



初夢の続きは (4) 『歌声』

気が付くと、優の姿はどこにも見当たらなかった。

悟は、仕方なく体育館前へ向かった。
そこには、新しいクラス割が張り出されているはずだからだ。
Aクラスから、目を走らせていく…。
最後に、見知った名前を見つけた。
「ナベはAか」
Bクラスには僕と梅子、Cには松梨の名前があった。
なんだかんだで、4人はバラバラになってしまった。

それでも、梅子とは離れられない。
(前世からの因縁だったりしてな)
のんきにそんなことを、考えていると後ろから声を掛けられた。
「おはよう!悟」
振り返ると、梅子と松梨が立っていた。
「おぅ、2人とも早いな」
「早いのはアンタでしょ? こんな時間に登校してるなんて雪でも降るんじゃないかしら? ねえ松梨」
梅子が松梨に同意を求めると、松梨は静かに頷いた。
「松梨まで…」
B組に自分と悟の名前を見つけると、すこし不満げに梅子は呟いた。
「…なんでまた悟と一緒なのよ」
そして松梨は、少し悲しそうな表情を見せた。

その時、一陣の風が吹きぬけた。
桜の花びらを巻き込んだ風は、強く、けれども冬のそれとは違い、心地よい風だった。
悟は、なんとなくこの風に、覚えがあった。
(なんだろう?この懐かしい感じ)
けれど、思い出すことは出来なかった。

悟は、松梨、梅子と一緒に、階段を上がる。
2年の教室は2階だった。
悟は、Bクラスの前で、松梨と別れ、梅子と、ともに中へ入った。
まだ人影は、まばらであったが、時間とともにそれも埋まっていった。

かったるい式は終わりHRが始まった。
前に座っていた2人が、担任に言われ進行役を頼まれた。
ひょろっとした眼鏡の男がまず自己紹介をした。
「暦村竹文です。よろしく」
次に、大人しそうな女が、くぐもったような小さな声で
「深城桃香です」
と続いて、小さく会釈をした。

それを見て、担任が口を開く。、
「まずはクラス委員を決めてもらおうかしら? 立候補が望ましいけど、推薦でも良いわよ」
いままで、静まり返っていた教室がにわかにざわつきはじめる。
だが、無論名乗り出ようなどと言う奴はいない。
暦村委員長顔だし、お前がそのまま委員長で行けよ。
そんな空気さえ漂い始める。
遅々として進まない人選に、横で見ていた担任が、痺れを切らして口を開いた
「う~ん 今、決まらないのなら、放課後に決まるまで残ってもらうけど、それでもいいのかしら?」
居残りなど、誰一人望んではいない。一刻も早く会議を進めようと、ようやく本気で考え始めたのだが…。
(誰が、好き好んでそんなメンドイ事やるんだよ)
悟が思わず、頭を抱えた時、シンとした教室に梅子の声が響いた。
「私、やります」
途端に、クラスのあちこちから、歓声が上がる。
「他に、立候補する方いませんか?」
暦村は、一応、お約束のセリフを吐いた。
無論、そんな奇特な方が居ないのは、当人が一番心得ているところだろう。
「では、篠田さんを委員長に決定します」
暦村の合図と共に、深城は黒板に、「委員長:篠田梅子」と書き出した。
「次に、副委員長ですが…」と暦村が言い出すと
「委員長が女子だから、副は男子ね」
と担任が口を挟んだ。
一斉に、下を向く、男子生徒…。悟も例外では無かった。
一時の沈黙が支配する。
沈黙を突き破ったのは、他ならぬ梅子であった。
梅子は、スッと手を上げ
「間宮悟君を推薦します」
と発言した。
一斉に男子生徒から、拍手が沸いた。
「おいおい」
悟は、形ばかりの抵抗を試みたが、無論焼け石に水だった。

放課後、慣れない、副委員長業務でぐったりと机に突っ伏している悟の耳へ、外から優しい歌声が聞こえてきた。
声のするほうへ目をやると、見知った姿があった。
「なんだ松梨か」
彼女はコーラス部だったな。こんな時間までご苦労なことだ。
そんなことを思いながら、しばらくその歌声に耳を傾けていた。
確かに、美しく、優しい…天使のような歌声。なのに涙が満ち溢れているような悲しさを内包しているような、ひどく儚い感じもした。
歌声に反応するかのように脳裏に浮かぶ映像のイメージ。
それは、セピア色の石段だった。
(なんだ!今のは?)
悟は、必死に思い出そうとした。
けれど、まったく思い出すことが出来なかった。
脳が、思い出すことを拒絶しているかのような感覚。
そのデータへのアクセスは拒否されているのかもしれない。
そんな錯覚へと陥った。
また夢? 断じてそうではない。そんな曖昧なものではない。
あの風景を、あの風の匂いを僕は知っている。
焦燥、混乱…
様々なモノが入り混じり悟を支配していった。
だが不思議なことに、精神の混乱は急速に収束していった。
それは、優しい声が悟へと囁き掛けてきたからだった。
「夢の隠し場所は …の中」
意識が途切れる寸前に聞いたのは、そんな言葉だった。

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2010/11/18 14:43
夢の隠し場所・・・気になるね~
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2010/04/02 02:52
Re:Sakura さん

夢の隠し場所はいったい? 何故悟は不思議な夢をみるのか?

あの風景は一体?全ての謎を抱えたまま物語は続きます。
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2010/04/02 02:50
Re:lemon さん

たしかにねw悟君の運命はいかに??

続きは、近いうちに掲載予定です。楽しみにしていてください。
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2010/04/02 02:48
Re:にゃんぴち さん

鳥肌って!? そこまで楽しんでもらえて光栄です。

次回もがんばらないとですね~
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2010/04/02 02:46
Re:Kanonn さん

1からよんでいただけたのでしょうか?次はがんばって書きます!

どうぞお楽しみに~
アバター
2010/04/02 02:45
Re:こころ。さん

全ての謎の鍵を握っているのは、実は梅子なのです。

さて、どうなっていくのか?次回は梅子のお話になるよていです。
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2010/04/02 02:32
Re:ゆうゆ さん

ワクワクの次回につなげられれば、いいのですが~

がんばって書きますね。
アバター
2010/03/27 18:17
夢の隠し場所が気になる!!
続きを楽しみにしてます☆
アバター
2010/03/27 17:46
「副委員長は男子」と言われた瞬間
男子がみんな下を向く光景、あるあるある!

夢の隠し場所が気になりますね。
次作が気になる終わり方ですので、UPされるの待っていますよ!
アバター
2010/03/27 15:57
あの風景を、あの風の匂いを僕は知っている。

こういいうことありますよね~

この文章読んだらなぜか鳥肌が立って涙が出てきた。。。(ノ◇≦。)
アバター
2010/03/26 13:22
拝見させていただきました^^

続きが気になりますね 0><0

是非続きを書いてください!!!

また拝見させていただきますので♪
アバター
2010/03/26 09:33
前半の松梨の悲しそうな表情・・・やっぱり悟るを?

後半は、イロイロな想像を掻き立ててくれますね~!
予想外の展開がきちゃったりします?

時折、出てくる懐かしい想いが、どうなっていくのかも楽しみですね~。
アバター
2010/03/26 01:19
なんだか ワクワクしてきますね^^



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