Nicotto Town



初夢の続きは (17)

この時を、どれほど待ち焦がれたか

そしてそれは恐らく悟と私の別れの時…





『初夢の続きは』 scene17 『魔法』





家に帰ってからさっきまでの出来事をずっと考えていた。

夜眠る時もまだ考えていた。

そして目覚めた時、出た結論は、

とりあえず梅子に会おうというものだった。

会おうというか、会わないといけない。

もちろんそれは普通に話がしたいとか、そういうレベルの話ではない。

会って今まで起こった様々な事を

梅子の口から直接聞かなければならないと思った。

けれど不安がないわけではない。

梅子との邂逅。

それはもっと深い落とし穴へ

誘い込まれる前兆のような気がして

不安がぬぐいきれない。

「それでも避けて通るわけには、いかないよな…」

悟は自らを奮い立たせるように声に出し

ベットを蹴って起きた。



人と人の繋がりは、いつもあっけなく切れる。

ようやくはっきりと思い出した。

そうして迎えた僕らの終わりの日のことを…。

そうして掛けられた魔法のことを…。

全てはあの日、梅子が口にした一言から始まった。

そしてそれを終わらせたのも彼女。

そんな彼女の口から何が語られるのか…。

想像も出来ない。

登校中、梅子を探しながらそんなことを考えていた。

けれど肝心の梅子の姿は何処にも無かった。

校門をくぐると、残念な気持ちと少しの安堵が心の奥底を駆け抜けた。

気が付くと握った手のひらにびっしょりと汗をかいていた。




あの場所に梅子は居る。

確信があった。

放課後を待って、階段を息を切らせ駆け上がった。

屋上へのドアを開けると、ゴォっと風が吹きつけた。

風は一通り暴れたが、しばらくすると静けさを取り戻した。

すると同時に生暖かいような空気と緑の匂いが混ざり合ったものが立ち込めた。

そこに梅子は居た。

「意外なとこで会うね」

梅子の口調からは 意外” の部分を読み取ることは出来ない。

「勘はいい方なんだ」

悟は答えた。

「それで?」

いつもの梅子からは想像が付かないほどの冷淡な口調だ。

「全て思い出したんだ 神社の事、四葉の事…」

「そう」

まだ彼女の感情を読み取ることは出来ない。

「それで?」

全く同じ質問を全く同じトーンで繰り返して来た。

やはりそこには何の感情も込められてはいない。

少し言葉に窮した。

すると梅子から思わぬ言葉が発せられた。

「違うのよ」

「ん?」

「確かに、私の掛けたおまじない でもそれだけじゃないの」

どういうことなのだろうか?

「五年生の時の美貴ちゃん

 中学一年の時の桜子ちゃん 

 中学二年の時の恵子ちゃん 他にもいたかな?」

 スラスラ出てきた名前にびっくりした。

 どれも僕が好きだった子の名前だ。

「貴方は自分の意思で彼女たちを好きになった。 そう思っているでしょ?」

「ああ」

「違うのよ、それは」

鈍器かなにかで頭をガーンとやられたような気分になった。

そして、梅子の言っていることが良く理解できないかった。

誰かを好きになる行為に、自分の意思以外の何かが介在しえるものなのだろうか?

「彼女たちはね、コピーなの…」

コピー…およそ恋愛話に似つかわしくない言葉の登場に頭はますます迷走を始めた。

「そして、私もね…」

「梅子も…」

悟は意味を噛み締めるようにゆっくりと声に出した。

「わからない? 4人の共通点 その雛型は誰なのか?」

言われてはっとした。

ようやく全てが理解できた気がした。

「そう、どの子も松梨ちゃんのコピーなのよ」

無論それぞれの姿形が、松梨に似ているということではない。

松梨の面影を秘めているという言い方が近いだろう。

男子顔負けの運動センス リーダーシップ 抜群の歌唱力

改めて思い返すと3人はそれぞれ、松梨の欠片を持っていた。

「そして貴方は今も彼女の幻影を追っている」

トラウマ…と言っていいのかわからない。

梅子の掛けた魔法は、意外な副作用を生み出していた。

それは人の嗜好すら左右する強烈なものだった。

自分が根底から揺らいでいくのを感じる。

今の気持ちは本物なのだろうか?

誰かを好きになる。

その事に自分以外の誰かの意思が働いているなんて思いもよらなかった。

気持ちをコントロールされている。

その意味に気づいたとき背筋に冷たいものが走った。
 
だが梅子はどうなのだろうか?

冷静に考えると、梅子の魔法はどう転んでも彼女自身に見返りがない。

それどころか、いずれ破綻することは目に見えている。

あの時、記憶が戻ろうが戻るまいが

この不自然な歪みは、そう長くは続かない。

それでも尚、彼女を駆り立てたものは…。




「行くわ」

突然梅子は悟に背を向け足を踏み出した。

すると背中越しに声を掛けられた。

「あのさ、落とし前に何か…ってのは無しな」

「あっ…」

彼女の顔が少しだけ曇る。

「長い付き合いだからな。 わかるさ、それくらい」

二人の間を縫うように一陣の風が流れた。

「梅子ごめんな それと…ありがとう」

梅子は振り返らず、背を向けたまま言葉を紡いだ。

「嬉しかったわ 貴方の記憶が戻った時

 貴方は変わり、私も変わった…

 長い夢からやっと醒めて ようやく私に戻れた……

 悟… 大好きだったわ」

「俺もさ」

「さようなら」

梅子は泣きたくはなかった。

溢れようとする涙を堪えて、ただ空を仰いだ。

やや濃紺に染まりかけた空には、星が出ていた。

「さよならじゃないだろ 約束な」

「そうね 努力する」

悟には、背を向けたままの梅子が笑ったような気がした。

「梅子」

悟が次にそう呼びかけた時には、彼女の姿は何処にもなかった。

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2013/02/09 19:09
Re:凛凛花さん

すりかわりたかったわけではなく

松梨の代わりを誰かがしないと悟が崩れてしまうので、

悟のためにがんばって代わりをしていた。って感じですね。
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2013/02/09 16:31
こんにちは(❀✪‿✪)ノღ


梅子は…

松梨に すり変わりたかった??? (。・_・。)……?
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2013/02/08 20:48
Re:りびさん

お待たせしました。 正直かなりわかりにくいので

いつでも聞きにきてくださいね!
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2013/02/08 20:45
Re:ぱある❥さん

意外な展開が好きなものでw

なかなか考えないとわからない複雑な話になってしまった気がします。

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2013/02/07 23:55
続き待っていましたよ。。♪

そうですね、現在全部が全部わかるかといえばわからない所もありますが、
一通り読んでからもう一度通して読んでみたいなって思っています^^

そこで、どうしても(゚д゚)…?になった時は突撃質問しちゃいますのでよろしくです。。^^
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2013/02/07 21:04
ふ~む。

かなり意外な展開ですぅ。(私にはそう感じる。

でも、相変わらずワクワクさせられるというか、考えないと読めないお話♪
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2013/02/07 20:43
Re:futabaさん

本当にわかりにくい話でスミマセン;

わかりやすく解説じみた書き方もしてみたのですが

テンポが悪くなる上に、煩雑になってしまったので

読みやすさを重視して書きました。

なので本文では、これ以上の解説はしません。(あとがきでふれるかも)

わからないとこは是非聞いてください。
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2013/02/07 20:40
Re:みん♪さん

16、17とちょこっと考えさせられる内容になってしまいましたね。

正直、書いてても内容が伝わりづらいかな。とおもったのですが

これ以上解説じみたことは本文ではしないので、直接聞いてください。
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2013/02/07 20:38
Re:曖曖さん

大体あってるけど、鎌かいとこは違うかな。

真実との接触ではなく矛盾によるほつれ

松梨が戻ったことにより松梨が2人いるという矛盾が引き起こしたことです。
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2013/02/07 20:25
ん~~。
微妙にわからないとこがあるのだけど、続きを見てみないと・・。
続き楽しみにしてます!
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2013/02/07 13:51
ん~~・・・うなっちゃう感じです^^;
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2013/02/07 12:33
言の葉には力があって 強い言の葉ほど 無を有へと変える
幼い頃の切なる思いは強い言の葉となって現在まで力を保ち続け 
真実との微かな接触で その効力は薄れ
はっきりとした言の葉によって 効力を失う

ってことだと思いつつ読んでるんだけどーーダメっすか(汗



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