Nicotto Town



初夢の続きは (SS3)



初夢の続きは  side story3  『暦村君の敗北』




その日暦村は、一人旅をしていた。 目的地は無人島「犬島」

そこへと渡るフェリーのデッキ上に彼は居た。

(コイツら無人島を舐めているのか?)

暦村は口から出掛かった言葉をようやく飲み込んだ。

彼が背負っているバックパックには、

ゆうに2週間は過ごせるであろう装備が詰まっていた。

テントに水、飯盒、缶詰、寝袋、着替え

釣った魚を食べるつもりだろうか?簡易釣竿セットまでも揃えてあった。

(無人島とは、己の力だけで生きなければならない土地

 準備に十分すぎるということはない、それなのにコイツらときたら…)

暦村を除く、ほぼ全員が手荷物すら持たない軽装であった。

それもそのはず、犬島は彼の考えている秘境などとは程遠い

電気も水も来ている、観光地なのだ。



荷物を降ろし、潮風に当るべくデッキへと出た。

辺り一面、蒼に囲まれた景色。 

吹き抜ける潮の香りは日常を忘れさせてくれた。

確かに見晴らしはいい

けれど容赦のない夏の日差しは、彼の喉を執拗に渇かした。

「何か飲むか」

一通り景色を満喫すると彼は船内へ入り、自販機を探した。

デッキから降りた階段の脇にそれはあった。

暦村はその品揃えに驚嘆した。

「ドクターペッパーの一択だと…」

様々な種類が並んでいるはずの見本の部分には、全て紫色の缶が鎮座していた。

それでも、喉の渇きには逆らえず、暦村は500円硬貨をねじ込もうとした。

しかし…。

カツーン

コイン投入口が500円玉の侵入を拒んだ。

「なん…だと!?」

投入口の横を見ると丁寧に500円に赤いXがついたイラストがあった。

(この平成の世に500円玉が使えない自販機があるとはな…)

諦めて、財布を探るが100円硬貨は見つからなかった。




さて、どうするか…。

暦村は考え込んだが、すぐに妙案が浮かんだ。

(金が無いなら作ればいい。 それも合法的なやりかたで

 やはり天才だな! 俺は)

まずは、カモを探さなければならない。

それも出来るだけ良心が痛まない奴がベターだ。

暦村は獲物を物色するように、船内をうろついた。

すると程なくして、ぼーっと海を見つめているチャラそうな男を見つけた。

(お~いたいた! アレならカモっても良心は痛まないな)

暦村は、ゆっくりと男に近づき話しかけた。

「こんにちは」

男は、それには答えずにゆっくりと顔を暦村の方へ向けた。

「案外、船旅ってのも退屈ですね」

「そうだな」

男は視線を海原に戻すと、そう答えた。

「退屈しのぎにゲームをしませんか? 交代で質問を出し合って、

 答えられなければ相手に罰金を払う。 貴方の罰金は100円。

 私の罰金は…500円でどうでしょう?」

暦村は男に500円玉を親指と人差し指で挟んで見せた。

「ふふっ 面白そうだな。 じゃあお前さんからどうぞ」

(掛かった! フフフ頂きだな)

「じゃあまずはこんなので  火星の2つの衛星の名前は何と何でしょう?」

男は少し考える素振りを見せた後

「わからん降参だ」

と言い、暦村に100円を投げて寄こした。

「フォボスとダイモス、軍神アレスの息子から名付けたらしいですよ」

「ほう、なるほどね」

男はさして興味もなさそうだった。

「では、貴方の番です。 どうぞ」

暦村の声を遮るように、男は言った。

「頭は3つ、上に2つ下に1つ 足は、朝に6本 昼に12本 夜には24本 これなんだ?」

(なるほどマトモな問題じゃ答えられそうだから、なぞなぞで来たか!

 確かに俺って直球には強いが変化球に弱そうな感じに見えるな。 その判断は正しい

 だが俺は小学生時代、なぞなぞの竹ちゃんと呼ばれた男だ! 
 
 千を超える問題を熟知してるとは思うまい。選択をミスったな)

「う~ん」

暦村は考えるふりをしながら、脳内の記憶に検索を掛けていた。

(聞いたことがないなぞなぞだ。 頭が3つ?

 単純に生物の頭として考えるのは危険だな…。

 朝、昼、夜の足の数はスフィンクスの謎掛けだが…。足の数多すぎないか?)

一向に答えらしいものが出てこないことに、暦村は焦っていた。

男をちらりと見ると、やはり海をぼんやりしながら見ていた。

(まてよ、とんでもない勘違いをしているのか? 

 なぞなぞという決め付けがすでにミスなのか? 

 特撮怪獣とか、そっち系のマニアックなジャンルってこともあるな。 

 しまったな… この暦村、昔は怪獣博士と呼ばれていたが

 今の怪獣についての知識は人並みだ…)

暦村は必死に考えたがわからなかった。




しばらくすると、インフォメーションが流れてきた。

「当船は、まもなく犬島に到着します。お降りの準備を~…」

(ちぃタイムアップか、悔しいが今回は負けを認めるしかないな)

暦村は、男に500円を手渡して尋ねた。

「ふ~降参ですよ…。 答えを教えてくれませんか?」

男は、にやりと笑うと暦村の手に100円を握らせると船から降りて行った。

「え?」

一瞬のことに暦村は混乱したが、すぐに理解して笑い始めた。

「…介さ~ん」

船の外で男は、誰かに呼ばれていた。

(フッ、相手が一枚上手だったか)

笑いながら、暦村も船を降りた。 

その右手にはしっかりとドクターペッパーが握られていた。

アバター
2013/10/06 12:28
これも前にあったかな・・。
答えがわからないけれど・・。
アバター
2013/10/05 23:00
ドクターペッパー♪ ドクターペッパー♪
美味いぞ! 美味いぞ!
大好きだぁ~~♪

なのに最近 知らんヤツが多すぎる(汗
アバター
2013/10/05 20:21
あれ。。なぞなぞの男性って。。(゚0゚*)
まさかの特別出演ですかね??(´艸`)"笑



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