Nicotto Town



もうひとつの夏へ (5)

子供たちのにぎやかな声と、母親たちの冷たい視線に押し出されるように公園を後にした。

「さて、これからどうしよう」

そもそもこれは何なのだろうか?
夢?それにしてはリアルすぎる。
現実?こんな馬鹿げた現実があるはずがない。

どっちでもいいか。とりあえず、どっちであっても目的は果たせた。
それは間違いないのだから。
となると後は、帰るだけだが・・・。

「結局此処に来るしかないよな?」
大富豪ビルに来てしまった。帰るあてはどう考えてもここしか思い当たらなかったからだ。

ゆっくりと自動ドアの前に立つ、大した音もせずにドアは開いた。
自動ドアをくぐると、・・・そこには
振袖の彼女が座っていた。
予想通りというか、あまりに恵まれた展開で少し笑ってしまった。
つかつかと彼女の前へ歩を進めていく。
「こんにちは」
さすがに、山ほど聞いてみたいことが、あった。
だが、彼女は表情ひとつ変えない。
「あの?聞いてます?」
尚も詰め寄るが、まったく反応がない・・・。
予想外の反応に少々戸惑ってしまった。
そして、焦り・・・。
「ちょっと、何とか言ってよ!」
ドンと少し乱暴に受付の台を叩く。
すると、カタリと何かが揺れる音がした。
音のしたほうに、視線をやる。
そこには、アンティークのような鍵が置かれていた。
手に取ると、頭の部分には09と読める細工が施してあった。
 
「また何処かに飛べってことかな?」
色々、聞きたいことはあったのだが、もうどうでもいいような気分になっていた。
2人を会わせてやる事が出来た。今はそれだけで十分だ。
そう思うと、すばやく奪うように、鍵を手にした。
その時、気のせいかもしれないが、彼女がニヤリと笑ったような気がした。
右手が5号室、ならばその先が9号室なのだろう。
次は何処に飛ばされるのだろうか?なんとも言えない気持ちを抱えたまま9号室の前へ立つ。
鍵をドアに刺しゆっくりと回す。  カチリと鍵の外れる音がした。
9号室のドアを開けるとやはり室内は薄暗く、何も見えなかった。
(さて、鬼が出るか蛇がでるか・・・)
目を瞑り、部屋へと入るとやはりそこは部屋の外だった。
(予想通りというかなんというか・・・)
ゆっくりと受付に向かう、もちろん振袖の女性など居なかった。

大富豪ビルの外へ出る、うん見慣れた風景だ。
(ん?見慣れた風景・・・?)
あわてて時計を見る。
(僕が最初に大富豪ビルに来た時間から、5分くらいしか経っていないじゃないか・・・)
これは、もしかして、戻ってこれたのか?
確認のためコンビニへ入る。
ああ、やっぱりだ。キチンと現代に戻ってこれたようだな。
こうして夢のような時間から戻ることはできた。

本当になんだったのか?
不思議な体験を思い出していた。
愛を見たのが幻想なのか?
心の渇きが幻想を生んだのか?
でも・・・。
あの瞳の光が、唇の震えが幻か?
何よりこの肩の痛みが、薄汚れた黒いスーツがそうではないと物語っていた。
ゆうゆに連絡しようと携帯を取り出しては見たものの、やっぱりまたポケットにしまってしまった。
(どうせ、明日また会うんだしその時でいいか)
そう、明日僕とゆうゆはまた会うのだ。そのことが僕を現実へと引き戻した。
「そうか明日、佳代は灰になっちゃうんだな」
また自然と涙が流れてきた。

どこをどう歩いたのか覚えては居ない。
ただ足はまっすぐと、自分の家へと向かっていたらしい。
歩きなれた、地元の街。そこかしこに、佳代との想い出があった。
いっそのこと、想い出もすべて灰になってくれれば楽なのにな。
そんな事も思ったりした。
僕は男でよかった、女だったら確実に行き遅れるタイプだろうから。

部屋には、明かりがついたままだった。
余りに動転してしまい、色々つけたままな位、呆然としていたのだろう。
(鍵は掛けたっけな・・・?)
そんな事も覚えていない自分がすこし可笑しかった。
ドアの前に立ち、鍵を探すためにポケットをまさぐる。
手ごたえを感じそれを掴み抜き出す、だがそれは鍵ではなかった。

恐竜のキーホルダー・・・。なんだってゆうゆはこんなものを渡したんだろうか?
今は判らない・・・。判りようもない。
キーホルダーを左手に持ち換え、再び右手で鍵を探す。
鍵はどうやら掛かっていたようだ。
どこか抜けているようでも最後の詰めは甘くない。
いや、いつも甘い甘いといわれてるけどさ・・・。

今日はなんだか疲れたな、すぐに寝てしまおう。
そして明日は佳代と最後のお別れだ・・・。
そんな事を思いながら玄関をくぐり、恐竜のキーホルダーを居間へポーンと投げ込んだ。


(つづく)

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2009/08/31 04:27
Re:@まるこさん

完結させましたよ、ここまで長くなろうとは、本人も思って無かったです。

今は、すがすがしい気分ですよ。ありがとうございました。
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2009/08/31 04:25
Re:ぺんちゃん~♪さん

ありがとうございます、どうにか描き切る事が出来ました。

皆さんのおかげです。感謝してますよ~
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2009/08/31 04:24
Re:ちょこあいす さん

いつもありがとうございます。なんとか、予定通り31日に完結できました。

色々、聞きたいことがありますよね、できる限り答えますのでいつでも質問してください。
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2009/08/31 04:21
Re:にゃんぴちさん

たった今、完結しました。

どうしても8月31日に、終わらせたかったので、頑張ってしまいました。

ああ、眠い。
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2009/08/31 03:37
あ~あ~…恐竜投げちゃった(≖ω≖。)

明日はどうなってるんだろう… 本当に佳代の告別式なのかなぁ…
過去に戻ってやったことが無駄になってないといいなぁ。
結ばれていてほしい><

はよ、次来いっw
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2009/08/31 02:21
(^-^)//""ぱちぱち

次が楽しみ。
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2009/08/30 22:41
おおお!!またまたいいところで続きますねぇw
現代に戻れたってことで いいんですかね(*・▽・*) ??
過去を変えたら 未来まで変わるんでしょうか。。。?
結末を見たいような 終わってしまってほしくないような そんな気持ちですw
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2009/08/30 16:53
ん~

彼が戻ってきたと思われる現代?に変化があったのかなぁ

本当に過去に戻って自分が歩いてきた時間とは違う時間が経過していたら…

もうwww

きになるwww

次、楽しみにしてます♪



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