喋っちゃった。
- カテゴリ:自作小説
- 2010/07/29 13:44:55
ノンコさんに喋っちゃった。
秘密にしたいのか読ませたいのかw ったく。
ここは画像が貼れないからまだ安心だね。
いまの勢い、妄想画を晒してしまいそうだよ。
ゴクアーク様人間体とか。
この手元にある(17年前からの)大量の書き散らしは いつか日の目を見ることがあるのかい?
今見ると恥ずかしいやら萌えるやら。
「闇野さん、野球の応援なら試合を見てあげてください」
川原の土手に寝転がり、空を見上げていた闇野さんを見とがめて私はとなりに腰を下ろす。私は知っている。彼は太陽を見ていた。まるで、月でも眺めるようにーーーー。
戦いが終わり、町の人々からも大魔界の脅威の記憶がうすれてきました。
見慣れぬはずの闇野さんをいぶかしむ目ももうなくなったと思っていいでしょうか。
その正体を知っているわずかなメンバーたちでさえ、彼が魔導士だったことを思い出すことがないようです。それほど自然に、それほど狡猾に、彼は私たちの生活に溶け込んだのです。
・・・狡猾…と 私は言ってしまいましたか。愛しているはずの人のことを…。
魔界の生まれというイメージで、闇野さんは夜が好きかと思っていました。満月には魔力があるとかいいます。そんな神秘的なものを乙女心で抱いていたのかもしれません。けれど一緒に暮らしてみると、意外にも彼は天気のよい昼日中をよく好み、今日もこうして私の生徒たちの草野球を観戦におもむいています。
もともと闇をまとったひとではなかったので、明るく快活なその様子を私はなんの疑問もなく受け入れていました。
不安だったのはただひとつ。彼が、いつか、大魔界へ帰ってしまうのかということだけでした。
彼が戦いのあと私のもとに現れてくれた時には心の底から喜びを感じていたのに、日々を重ね、幸福が日常になってくるにしたがって、なぜ 心は不安を生み出すのでしょうか。
それは私があまりに彼と近くにいたせいかもしれません。他の人には見えないふとした視線、他の人では気づかないわずかな声の抑揚。私はそれらを敏感に感じ取ってしまえるほど近くにいすぎたのです。彼がどこかで人間を蔑み軽んじているのを、私は分かってしまえたのです…。
彼は大魔界の魔導士なのだと、そのたびに思い知らされ、そしてどうしようもなく彼に捨てられる恐怖におびえました。行かないでください、ここにいてください、大魔界へは帰って欲しくない・・・!
二人熱く交わす愛の言葉も抱擁もなにひとつ衰えはしていないのに、ついに私はその不安に押しつぶされて夜も眠れず、とうとう、その苦しい胸の内の答えを彼に直接問うてしまったのです。「闇野さん、あなたはいつか、魔界へ帰ってしまうのですか」と。
「帰りませんよ?」
即答でした。
笑顔すら見せて。
私の思い悩みがばからしいくらいに彼は清々しく、命尽きるまで人間界(ここ)にいると言ってのけたのです。
どうして。
ああどうして心は幸福の中に不安を生み出すのでしょうか。
私はこの答えに間違いなく安堵したのに。本当に喜んだはずなのに。
その言葉の真意を、その後まもなく悟ってしまったのです。
彼が晴れた日を好む理由、空を見上げている理由。何の迷いもなく人間界に留まると言い切れるそのわけ。
太陽には ゴクアークが眠っているーーーー
なんのことはない。彼はいまも魔王の使徒なのです。ここにいるのはヤミノリウスⅢ世。闇野響史は最初からいなかったのです。
「わたしが応援すると負けのジンクスがつくと、霧隠の小僧がぬかしおった」
悪態を軽くついて闇野さんは身を起こし、左手で私の肩を抱き寄せた。
いままで気にしていなかったとは言えないけれど、これほど目につくことはなかったと思います。この、指に嵌められた竜を模した指輪・・・。
疎ましい。
なんと忌々しく私の心をかき乱すものでしょうか。
なんと浅ましく私の愛をおとしめるのでしょうか。
抜き取って、棄ててやりたい・・・! そんな衝動が私を醜く狂わせます。
ヤミノさんに愛を説き、その強さ大きさを教えるのだと思っていた私よ。夢見がちな少女のように無邪気に恋をした愚かな私よ。本当に愛するということをまだ知らなかった純粋なお前。その過ちの犠牲となる男の末路を見るがいい。
私は 愛の残酷さを我と我が身とあわれな魔導士に知らしめることになるのでしたーーーー。
不幸だーーーーーーーーーーっ!
なんで私のは二人が幸せにならないんだろうかーーーーっ!!
この後、エルドランが亜衣子の気持ちにつけ込んだようにヤミノリウスを討伐、ヤミノは指輪と記憶を(!)奪われてもちろん忠誠も誓わされて、100%正義の闇野になります。間違っていると思いつつも喜びを覚えてしまう亜衣子。しかしゴクアークが復活しヤミノがその戦線にエルドランの魔導士として立たされるになるに至って悔恨の叫びを上げるのだった。
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