Nicotto Town



太陽であのあとどんな最期だったのかなぁ

光の側のエルドランのほうが闇の魔導士たる自分より魔王に近しいというのか。
だが否定しきれない思いが胸を刺す。
自分はただ 魔界獣のひとりにすぎず、世界の覇者として君臨するゴクアークにとって対等の存在といえば、確かにエルドランなのだろう。

「・・・・・っ」
胸が締め付けられる思いだった。

闇は 心を侵す。

「なぜ……!」
闇の側の自分がなぜ蝕まれる。
ヤミノリウスは胸を掴んでひざを折った。
「魔属のくせに痛めるような心があるのか? 皮肉だな」
エルドランにはないという愛をヤミノリウスは持っているようだった。それがエルドランの癇に障る。
「たかが合成物の分際で。」
「くっ… ぁぁ・・・っ」
エルドランの白い声音に心がえぐられる。ヤミノリウスの瞼に太陽に沈むゴクアークの最期の姿がまざまざとよみがえった。忘れられない悪夢、思い起こすだけで叫びたくなるような光景。しかし今はさらに、そこに…ゴクアークのからだに幾重にも巻き付くエルドランの姿がことさら強調されて心を波立てる。絡み合う白と黒のうねりが心をさいなむ。明らかに、心の隙に闇が入り込んだ症状だった。
(ふざけるなっ! なぜわたしが闇に呑まれるっ!!)
ヤミノリウスはあらがえぬ侵蝕にあえいだ。
ゴクアーク様にお前なんかが触るなっ 触れていいのはわたしだけ
(何を言っているんだわたしはっ!?)
わたしのゴクアーク様だ わたしだけのゴクアーク様なのだ!
(そんな大それたこと、考えたこともない!)
わたしが一番お近くに在るはずなのに!
見限られた挫折と。自らあげた叛旗と。悔恨と。愛着と。

エルドランは間合いも詰めずにそのさまを見やった。
「ゴクアークの最期の言葉を教えてやろうか?」
「やめろ 聞かせるなぁっっ!!」
渾身に叫ぶヤミノリウスに対し、とどめとばかりに静かにエルドランが言いかぶせる。

「_________________________。」

声にならない叫びを上げてヤミノリウスは敗れた。
その言葉が真実かどうかは分からない。だが本当であろうと嘘であろうと、ヤミノリウスにとってそれが自分を破滅させるに足る言葉であることに違いはなかった。
「ここまでだな、魔導士」
戦意を失くしたヤミノリウスを一瞥すると、エルドランは光を巻き上げて竜体へと身を変えた。
その大きさ、その偉容。
ゆるぎない威風に思わず・・・
「ゴクアーク様…」と失った憧憬を思いつぶやいた。
即座に、ヤミノリウスはその尾で叩き飛ばされた。
「不敬な奴だ。それがこの私に対しての言葉か」
ゴクアークに対しても侮辱ではないのか? とエルドランがたたみかける。




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