Nicotto Town



エルヤミ後遺症

関係が正常化したとはいえ、バーサークしたエルドランの設定は捨てがたいものがある。

覚え書きにしておく。


想像以上に無惨なヤミノリウスの姿態はゴクアークにすら息をのませた。
"殺してはいない"だと…? "まだ死んでいない"の間違いだろう!
「何がお前をそうさせるのだ・・・っ」
やりきれぬ思いでゴクアークがエルドランに問う。
ヤミノリウスもあわれだが、エルドランをこそゴクアークはあわれんだ。ヤツには救いが与えられない。報酬もまた。自分はそれを知っている。この男の狂気を憎むことはできなかった。


ヤミノリウスでさえ、身を切り刻まれながらも彼にあわれみを覚えたのだった。

  そんな形でしか愛せないのか。

と。

愛を護る使命をさだめられながら、ヒトを愛する心は与えられなかった。
その心の空白を何で埋めよう?
何をもって満たせというのか?
絶対的な正義に身を置き、揺るがぬ意志で飽くことなく戦い続ける献身。それを厭うことのない敢然の精神。
鉄壁の心をもってして、ただひとつの、癒せぬ乾き。
ヒトを愛したいという希求の結果がこれなのだ。

魔を憎めばヒトを愛したことになるか。
より深く愛するなら、より激しく、より残酷に・・・
愛を求めるがゆえに歪んだ。

「違うな、ゴクアーク」
そんな分析をエルドランは否定する。
「もともと血を見るが好きだった、それだけだ…」
自虐の吐露の痛々しい。
(強くなったな。)とゴクアークは思うのだった。
出会ったばかりのころは、自己否定で自身を崩壊させそうなほどだった。だからこそ闇へ誘った。エルドランの心を暴き、欲望を引きずり出しては、そのまま壊れてしまえと幾度となくささやいたのだが…正義を守るという一点だけはけして揺るがなかった。
友愛を象徴しながら虐殺に心躍る。そんな背反に苦しんでいたこの光の使者は、いまはもう、その事実を受け止められるらしい。




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.