Nicotto Town


グイ・ネクストの日記帳


赤い鳥・・・選ばれし者


破壊と殺戮の衝動が湧き上がる…

 それは目の前の黒騎士たちも一緒の気分だろう。

 今、ボクはヴァルキュリアス城にいる。

 廃墟と思われたヴァルキュリアス城に…。

 スコットの魔方陣を城全体に張り巡らして欲しいと…ニナの頼みを聞いて、レコムンドの帰りに立ち寄った。

 廃墟と思われたヴァルキュリアス城には驚くことに大勢の黒騎士たちがいた。

 黒騎士の一人が槍でボクの心臓を狙ってくる。

 目の前に迫る黒騎士の攻撃を交わし、黒騎士の胸に手を当てて叫ぶ。

 「いでよ!レヴァンティン!」

 黒騎士はレヴァンティンに吸い込まれ、ボクの中のもう一人のボク、フェンリルが目を覚ます。

 ラーを手に取れ。と、フェンリルは言う。

 ボクは敵に背を向けて、後ろへ走る。

 「ニナ!カラドボルクを!」

 その呼びかけで通じるか、不安だったが、ニナは白き聖剣、カラドボルクを呼び出し、ボクがつかみやすいように柄をボクの方に向けてくれた。

 「ありがと」と、礼だけ述べて、正面からやってくる黒騎士たちに向き直る。

 あとは任せる…。

 良いだろう、ラーが一緒だ。

 こんなに嬉しいことがあろうか。

 見ているがいい。

 わが饗宴を!

 消えた。

 黒騎士たちは戸惑っている。剣を振り下ろし、その剣が地面に激突する頃になってようやく理解する。ボクが消えたことに。

 フェンリルは、白き聖剣、カラドボルクで、背後から黒騎士の首を斬る。

 だが、血は吹き出ない。黒い鎧が紫の鎧に戻っていく。

 その騎士の背中には赤い鳥の紋章が浮かび上がる。

 ヴァルキュリアスの兵士だったのか…。

 彼らの忠誠心が…この地に彼らを留まらせたのか…

 そう思うと少し涙が出た。
 
 感傷はあとだ。行くぞ!と、フェンリルは待ってくれない。

 相手が剣を振り下ろす、回転して交わし、横薙ぎの一閃を胴に浴びせる。

 そのまま回転して、後ろから来た黒騎士を突く。

 白き聖剣で一度斬れば事足りた。

 紫の鎧に戻った兵士たちはボクの加勢に回ってくれた。

 もうすぐだ。あと少しだ。

 城の周りにスコットが魔方陣を配置すれば…この城全域が奇跡の魔方陣に包まれる。

 それでも敵は次から次へやってくる。

 人ならざる動きで、ボクの身体は機械のように動き続け、斬り続ける。

 その顔はまるでそれ自体を楽しんでいるかのように。

 ボクはそんな自分を何故か遠くから見ていた。

 幽体離脱という奴かもしれない。

 戻らなくては。

 このままではスコットの魔方陣にボクまでも浄化されてしまう。

 ボクはボクの身体を追いかける。

 追いかけて行くと、ラルクゥに出会った。

 いや、ラルクゥの部屋に入ってしまったようだ。

 散らかっていて、片付けもされていなくて、ラルクゥはただ横になって寝ている。

 「うあっ…なんだ。リルルか」と、ラルクゥは目を覚ましてボクを見る。

 「寝ている場合か、このままじゃ消えてしまうんだぞ」と、ボクはラルクゥに言う。

 「今はフェンリルが動かしているんだろ?ならいいじゃないか。心配するな…ちゃんと戻れるさ。どんなに分裂してもオレたちは元は一つなんだからさ」

 「……」ボクは黙ってしまった。

 「ほら、見ろ。ルゥが向かえにきたぜ」  

 「魔方陣は展開された。戦いは終わった…リルル。サラからの伝言だ。『赤い鳥が呼んでいるわ』って、言ってた。よくわからないけど」

 

 「おい、リルル。リルル!」と、スコットの声を聞く。
 
 「どうした?スコット」と、ボクは言う。

 「どうしたじゃないだろ?倒れたまま意識が戻らないから心配したんだぜ」と、スコットは言う。

 ニナはまだ目をつぶって祈っていた。
 
 「ニナに…用があるんだ。呼んでくれないか?」

 「よし、わかった」と、スコットはニナを呼びに行った。

 「ルゥ…大丈夫なの?」と、ニナがボクのそばに来た。

 「大丈夫…赤い鳥に会いたいんだ。連れて行ってくれないか?ニナは知っているんだろう」

 ニナは無言で首を横に振った。

 そこにヴァルキュリアスの兵士たちが集まってくる。

 「お命を助けて頂きありがとうございます。失礼ながら王女様との会話を聞いていました。赤い鳥をお探しですか?なら、われわれが案内します」と、兵士の代表者が答えてくれた。

 ボクたちは兵士に連れられて、長い階段を上がり、大理石の廊下を歩き、また階段を上がり、王の間へと通された。

 そして彼らは慣れた手つきで、玉座を動かし、その下には下へ降りる階段が現れた。

 暗闇へと続く階段をボクとニナとスコットは壁に手をかけて降りて行った。

 無音で光さえも無い…なのに紫のドアだと認識できる。

 ドアの中央に刻まれた赤い鳥の紋章が輝いていた。

 赤と黄色と白色が入り混じった不思議なオーラに見えた。

 ボクは茶色のドアノブをまわして紫のドアを開けた。

 赤く輝く鳥がいた。

 脳内に言葉が響いてくる。

 ヴァルキュリアスの血を引く者よ…わが力を授けよう。

 金色なるモノ…サラの秘宝…王の中の王…

 そなたには受け取る資格がある。

 サラに選ばれたそなたには。

 ニナはゆっくりと赤く輝く鳥の前へ跪き、頭を下げた。

 ボクたちもそれに習い、跪いて頭を下げた。

 赤く輝く鳥がニナの中へ入って行く。

 それを見ていて、どういうわけかサラには会えない気がした。

 会えないと言っても別の形で会うことになる。

 よくわからないことを言っているが…そんな気がするのだ。

 多くある人格のうちの「マスター」のような存在だったサラ。

 そのサラの選んだ相手はニナ…。

 それが何を意味するのかボクには分からない。

 ただこの城の地下には黒騎士を配置していたのは、魔王にとっても…もっとも怖れるものが眠っていたということなのだろう。

 そして配置していた兵士たちがヴァルキュリアス兵であることも。

 彼らしか知りえない情報だったことも…。

 ボクがカラドボルクを使えるようになっていなければ危うかった。

 ギリギリだった。

 これもひとえにサラのお導きとしか思えない。

 そう感謝し、目をつぶっていると…「ルゥ…、行きましょ」と、ニナの声を聞いた。

 「うん?終わったのか?」と、ボクは答える。

 「ええ。とてもいい気分よ。ほら、早く上へ上がりましょ」と、ニナは急かす。

 「腹も減ったしなぁーきっと晩飯ぐらいは用意してくれるぜ!」と、スコットはすでに階段の上から叫んでいる。

 「わかった」と、ボクは笑う。ニナもつられて笑った。

 階段を上がると、兵士たちが並んでいた。

 ニナはボクたちの前に立ち、「……私は、もう少し旅を続けます。帰還するのはもう少し先…それまでここを守っていてくれますか?」と、ニナは言う。

 「御心のままに」と、兵士たちのリーダーと思われる人物が跪いて告げる。

 「ありがとう」と、ニナは頭を下げた。

 儀式のような挨拶が終わり、ボクたちは王の間をあとにした。

 兵士たちに見送られて城をあとにした。

 スコットの言う晩御飯は出なかったが…心を頂いた…胸は別の意味でいっぱいだった。

 ボクたちは進路をガブリエルへ向けて歩いた。

アバター
2012/07/22 14:14
優しいお話ですね。

奥が深いですけど、サラがパワーアップしたんだね。

赤い鳥。。。見てみたいなあと思いました。
アバター
2012/07/22 14:01
これは追加エピソードです。

どこに追加されるのか。レコムンドから帰る途中です。紹介していたお話では、レコムンドからすぐにガブリエルへ帰宅しています。

しかし、あとあと読み返してみると・・・・・・どうもおかしいw

ヒロイン、ニナがパワーアップしすぎているwww

どこでニナはパワーアップしたのかwww

そう考えていたら・・・「たましいの結合を描く」というテーマが決まり・・・

多数の人格を要するとはどういうことなのか?

入れ替わり、立ち代わり・・・それでもボクたちは「マスター」と呼ぶ「サラ」という人格によって・・・

導かれて生きてきた。

そして・・・これからも「サラ」が選んだモノを信じる。

サラが選んだ人を信じる。

・・・それが多重人格者が辿る道のようなモノです。

多くの人格があり、それぞれ意見は違う・・・。

とてもじゃないけど物事を決めたりできない・・・。

そこに「ますたー」という存在が現れた。

小さな女の子・・・最初はウニヒピリという名前の女の子w

サラは・・・ボクたちの真に欲するモノを理解している

その信頼度は絶大であり、ボクは・・・自分が毎日見ている「霊」というモノが・・・

実は姿、形は変わろうとも・・・それはサラが見せてくれている「もう一人のボク」なのだと、理解するようになった。

分裂していた何かが・・・つながっていく。

ホ・オポノポノの教えは・・・結合をもたらした。

ボクにはそれが何よりも嬉しかった。

あい



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