Nicotto Town


グイ・ネクストの日記帳


小説です。チビとオオカミ4


 死を見つめている。

 死を見つめてきたから…男は「禁断の石」を精製できた。
 大陸統一という偉業を成し遂げた。だが死ねなくなった。
 死ぬことのできない男が…自ら死ぬために新たな兵器を作った。

 そしてもっとも親しい後継者にその「兵器」を渡した。またすべての「兵器」を封印するための「兵器」も渡した。
 後継者は死ぬことのできない男に永遠の終わりを…。
 そして「すべての兵器」を封印して…後継者もまた眠りについた。
 おとぎ話だ。大和国に古くから伝わるおとぎ話だ。
 大和国のはるか東の国、奈国(なこく)の古代遺跡から「兵器」が見つかるまでは…ずっとおとぎ話だと思っていた。
 それと同じ時期に王家の宝物殿から「杖」を見つけた。
 飛鳥国でもサラの父親が「杖」を見つけていた。
 おとぎ話の後継者に渡した「兵器」のどちらかとだと推測した。
 そして…ボクの持つ杖は「すべての兵器」を封印するための「兵器」…。
 つまり、すべての兵器を上回るはず…。だが、ボクはまだまだ弱いのだ。
 この杖の1000分の1の力しかまだ発揮できていない。
「リルルー!!」クライン伯爵の声を聞く。

「王家たるもの武芸もたしなまなくてはならん」

「・・・」

「返事をせんか!」

「わかった。今、出る」

 杖に戦う意思を伝えて、大きくなり背中に背負う。

 庭に出ると、両刃の木刀を持たされた。

「さあ、かかってこい!」
「あのな、伯爵。今はこんなことをしている場合じゃないんだ。「杖」を使えるようにならないと話にならないんだよ!」と、木刀を左横に捨てる。
 クライン伯爵は頭上に木刀を大きく振りかぶり、いきなり斬りかかってきた。

「ごちゃごちゃうるさい!どうした?油断していると怪我をするぞ」

 ボクはサイドステップで避けて、さらに転がり左横に捨てた木刀を拾う。

「そんな根性ではワシから一本も取れまいて」

「馬鹿にするな!」と、胴を狙っていると見せかけた斜め左下からの斬りこみ。

それをバックステップでクライン伯爵は避ける。それは予測済み。

一回転して 遠心力を上乗せした突きを喰らえ!

「ざまあみろ…一週間入院???あ…れ?」
 ボクの目の前には誰もいなかった。

 首筋にはクライン伯爵の木刀があろうことか、寸止めされて止まっている。

「リルル…戦わぬこと、戦わせないこと。それこそ真の強さよ。獣のままで勝てるは獣だけぞ。人間になれ…」

 ボクはチビに戻り、クライン伯爵の去って行く背中を見つめることしかできなかった。
 
 くやし涙でいっぱいだった。

「どうしろってんだ!」獣で何が悪い!
 戦いにキレイも汚いも無い。生きるか、死ぬかだ。…違うのか。
 いつの間にかオオカミのサラにほっぺをなめられた。

 リルル…鬼は鬼に狩られる…。

 私も人間になりたい…。

「サラ…」

 答えをあせらないで…。またなめられた。

 エリス様と戦ってみたら…?

「姉上とか?そうだな。今みたいにウジウジ悩んでいるよりはいい」

「姉上ー!姉上ー!」と、叫びながら廊下をドタバタと走る。1階を探しつくし、2階にあがろうとすると、甥っ子のイシスを抱いて降りてくるところで会った。

「何だ、騒々しい!何事か!」

「姉上、お久しゅうございます。お手合わせ願いたい」と、ボクは50センチの身体で、深く敬礼をしてから両刃の木刀を姉の足元へ置く。

「かまわん……が、この子のおしめをかえてからだ」

「あい、わかった」ボクはそれだけ返事をするとチビの姿のままで縁側に座り、甥っ子イシスのおしめを交換する姉の姿に見とれていた。剣を持たせたら鬼神のごとく強い姉も甥っ子の前では一人の母だ。

「おい、リルル。何をぼーっとしておる。いくぞ」と、姉の声にわれにかえる。

 ボクは「杖」に戦う意思を伝えて、背中に「杖」を背負う。

 庭に出て木刀を構えて向き合う。

「杖、杖と言っていたお前が再び剣を取るとはな」

「戦うことに迷いを感じている…そこで姉上に一つ手合わせを願いでた」

「はっ。愚か者め…。父の死を忘れたか!」

「忘れるもんか!ーーーーー」と、怒鳴り、姉を睨む。

「杖の力にボクがもう少し早く覚醒していれば、父さんは死なずにすんだんだーーーーーーーー!」

バカモノ!

あまりの大声にボクはひるみながらも「うっ。だって、そうじゃないか…」

「だまれ!このうつけ者!父の最期の台詞、忘れたかや!」

「………もちろん、覚えている。『戦況は圧倒的不利だ。だがな…こういう時こそ声無き声を聞け…。そこに活路はある』……しかし、父は死んだ!わからないよ。姉さんは何がわかるんだよ!」

「だからお前はバカモノなのだ。父はそう言って誰も殺さず、誰も死なせなかった……自らの命を散らせはしたが……父と戦った敵はみなわが国の兵士となった。今でも女王である母に近衛として仕えてくれている。これを大勝利と言わず、何を大勝利か?声無き声の聞き方はそなたの方が詳しく学んだはずだ。手加減はしない。行くぞ!」と、姉は地面を蹴る。

 蹴ったかと思えば、もう右にいる。そして長い金髪を目くらましとして使い、左手の手刀が斜め左から打ち下ろされるよう見せかけて、右下からの斬撃こそ本物。姉さんの得意のフェイクだ。右下の斬撃が弱い!姉さんの足が片方無い。

 父の言葉がよみがえった…今を感じろ!

 咄嗟にしゃがみこみ、片足だけとなったところを払う。姉さんはバランスを崩してこけたところにボクは木刀を喉元に突きつける。

「ふん…身体は覚えていたか。父はよく言っていた。声無き声の前ではどんな策略も無意味。獣ではなく、まさに人間の技だろうな。ゆえにワタシなどは今だにわからん。声無き声というものがな」

「……姉さんの戦い方は小さい頃からよく見ていたから」

「そんな口上はどうでもいい。剣をどけろ!ワタシはお前ほど暇ではないのだ。夕飯の支度もある」と、姉さんはボクを睨む。

「わかったよ…」と、つぶやいて、チビに戻った。


 そこにウサギの飛脚が来る。

「伝言です。18時の方向よりオークを率いる集団あり。討伐依頼です。国境線との接触は2時間後」

「帰って来たら夕食ぐらいは食わせてやる。オオカミの分もな!……だから、生きて帰って来い!いいな!」と、姉さんはボクに背を向けてイシスと一緒に台所へ向かって去って行った。

 返事はしなかった。サラはいつの間にかボクのそばにいる。サラの赤い目を見つめ、サラがうなずいたのを見てから

 ボクは庭の塀を越えて国境線へ走り出した。

 ボクの心の中で…何かがはじけた。

 いい気分だ。三日月の月がボクたちを照らしていた。

アバター
2012/09/28 16:11
 声無き声に耳を傾ける…

 今の私にも必要なんかもしれんっ(*ノω<*)

 読み応えあったよっ♬ 続き楽しみにしとくけんねっ(V)o▽o(V)
アバター
2012/09/27 08:47
リルルさんのお話昔よりなんか優しくなったなあって思いました

凄く、そう思ったよ

人は一人では生きれなくて、誰かが必ずそばにいてくれる

そんなことを想えるお話。ありがとう

自分を。。。許します(*^。^*)
アバター
2012/09/27 01:31
チビ  今回ちょっと 元気だね^^



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