Nicotto Town


グイ・ネクストの日記帳


ジャンヌ・ラピュセル6


リルルはジャネットを背負い、教会へと向かう。

リリィはジャネットに縛り上げられた司令官のところに行った。
司令官は気絶しているのか、鉄仮面を外されて下を向いたままだ。
リリィはローブの裾を持ちあげて、司令官のアゴを蹴り上げた。
「ふぐぅわ」と、司令官は目を覚ます。
「あなたに聞きたい事があるの。アルフガルド軍は今どこを攻めているの?ここが主戦場じゃないでしょ?」
「……。あの女は何だ?魔王なのか?それとも救世主なのか?」
「答える気は無いのね。じゃあ、わたしも答えない。じゃあね」と、リリィは足早く去ろうとする。
「待ってくれ!…オレはどうなるんだ?」
リリィは足を止めて、縛り上げられた司令官を見つめる。
「先に私の質問に答えて。それから教えてあげる」
「……。どうやら選択権は無いみたいだな。わかったよ、話す。話すからオレがどうなるか、教えてくれ。それを約束してもらえないととても話す気にならない。わかるだろ?不安なんだよ」と、司令官はオドオドとした目でリリィを見つめてくる。
「あなたはこの町に残ってやることがあるわ…トゥーランドットの町はこれまで戦火に巻き込まれるという事は無かったの。だから防衛するための戦い方をあなたが指導して。あなたが学んできた戦術、先の戦いで見せてもらったわ。ここの地形を利用した素晴らしい戦い方だったわ。それを教えて欲しいの。従わないならあなたを処刑するしかないけど…どちらを選ぶのもあなた次第よ」と、リリィは話す。
「……あんたは聖女なのか?」と、司令官は泣いていた。
「馬鹿言わないでよ。さあ、どうするの?」
「…やらせてください!もちろんだ。願っても無いことだ。こちらからお願いする」と、司令官は縛られたまま頭を下げた。
「うん。いい心がけね。それじゃあ、教えてくれるかしら…アルフガルド軍の主戦場を」
「アルフガルド軍はここから北にあるエクスシアを主戦場としている。何故ならそこに最後の公爵殿がいるからな。オレが…いや、私が知っているのはそれぐらいです。聖女様」と、司令官の男はまた頭を下げた。
「名前ぐらい聞いておこうかしら」
「二ベルと言います。以後お見知りおきを聖女様」
「私はリリィ。歌姫と呼ばれることはあっても聖女では無いわ」
「いいえ、あなたを私の心は聖女と感じました。どうか聖女リリィと呼ばせてください」
「ご勝手にどうぞ。言われて悪い気はしないわ……それとジャネットの事を聞いていたわね。それはもういいのかしら」
「……彼女はとても聖女とは呼べない。だからと言って魔女とも呼べない……」
「よくわかっているじゃない。……あの子はジャネットは「ただ一人の聖女」と同じ力を持つ者よ。神なのか、魔王なのか…どちらも人間の言葉で表現するとしたらそんなところかしら。さあ、みんなにあなたを紹介するから教会へ行くわよ。立ちなさい」
「はい、聖女様」

(わたしが聖女と呼ばれるのも悪くないわね。ジャネット本人にも、誰にも言ってないけど…わたしの神様はずっと昔からジャネット。あなたただ一人よ。あなたは不思議な人。わたしのピンチをどこかで察知して飛んで来てくれる。今日もそうだった。いいえ、昔からずっとそうだった。わたしはあなたを通して神様に出会えた。あなたは完全な存在では無いけれど、「あたたかさ」をくれたのはあなただったわ。あの日、あの時、扉を開いてくれてありがとう。お腹を空かせているわたしにスープをご馳走してくれてありがとう。暖かいお風呂まで用意してくれて、身体と頭を洗ってくれてありがとう、ありがとう、ありがとう)

「あの聖女様」と、二ベルは心配そうにこちらを見ている。
「…ごめんなさい。わたしの小さな神様に感謝とお礼をしていたの。行きましょ」と、リリィは教会へ歩きだした。
二ベルは教会を見上げた。赤色の屋根とステンドグラスの窓が目に入る。
ステンドグラスに描かれている聖女が、目の前のリリィと重なった。
(心を打たれる…悪人でしかなかった自分が…聖女に出会いおかしくなったか。それもよいか)
「みなに新しい仲間を紹介するわよ」と、リリィの大声がすでに聞こえて来ている。その声に合わせて二ベルは開かれた茶色の大きな扉の先へ足を踏み入れた。





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