Nicotto Town



自作小説倶楽部8月投稿

『ウソツキな彼と渚の彼女』
 入り口の大きな鏡で自分の姿を確認し、目を見詰めた。明るい緑色のワンピースにしっかりした視線。大丈夫だ。恋が病ならあたしは完治した。
 その喫茶店はこともあろうに彼との初デートの待ち合わせ場所だ。無神経な男。よりを戻そうなんて言ったらひっぱたいてやる。鏡の隅に彼が見え...

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自作小説倶楽部7月投稿

『助け舟』


「見てごらん」
姉がしなやかな仕草で指差した地面を少女は見つめた。そこには無数の黒い生き物たちが忙しく動き回っている。
「何をしているの? この虫たちは」
「土や砂粒を運んで自分たちの町を作り、必要なものを運んでいるのよ」
姉の言葉で無数の中の一匹一匹に注目してみるとある...

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自作小説倶楽部6月投稿

『二つの殺意』

紅実〈くみ〉のことをどう思うか?  嫌な女よ。あんな女が双子の妹なんて、人生ついてないって本当に思うわ。子供の頃から自分に都合が悪いとすぐに泣くの。弱々しく母にすり寄って。生まれつきの才能ね。大人になるにつれて男にその手を使うようになったわ。ピンクの口紅に長い髪をカー...

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自作小説倶楽部5月投稿

 『5人分で無限の夢』 

5人の幼なじみが揃うと自然と思い出話で盛り上がった。
「親父には参ったよ。小学校に上がる前から〈儂の跡を継いで政治家になれ〉って、耳にタコが出来るほど言われた」
胸にキラリとバッジを光らせてSが言った。
「僕なんて学校でもやらないような難問を解けるまで許して貰...

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自作小説倶楽部4月投稿2

『世界はウソで回っている』後編
4日目の夕方
家に帰る途中の公衆電話の前でミユキと出くわした。
「携帯つながりにくくて不便だろ」
「全然、連絡取る友達もいないの」
「ずっとここに住むつもり?」
「子供を育てられればどこでもいいわ。ここは食費はかからないみたいね」
ミユキが見せたビニール袋は村人からも...

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