夏彦は黙って、その足音を聞いていた
- カテゴリ: 日記
- 2013/08/16 16:42:01
「看護師さんとか帰らせなかったのかよ……」
呟いて、夏彦は律子の寝顔を見た。
あどけない顔だった。普段の冷たく鋭い顔とも、会話する時の動揺した顔でもない。 傷の上から貼られたガーゼが痛々しく感じられた。
何となく、夏彦はガーゼを指の背でなでた。 この人にとっては、...
「看護師さんとか帰らせなかったのかよ……」
呟いて、夏彦は律子の寝顔を見た。
あどけない顔だった。普段の冷たく鋭い顔とも、会話する時の動揺した顔でもない。 傷の上から貼られたガーゼが痛々しく感じられた。
何となく、夏彦はガーゼを指の背でなでた。 この人にとっては、...
らしく顔色一つ変えない。その代わり、夏彦の顔見ると手招きしてきた。
教壇に寄ると、
「一週間ぶりですね。身体改造は一週間で大きな成果が出るようなものでもありませんけど、顔を見ればサボってなかったことくらいは分かります」
とライドウは言った。
「放課後、正式に司法会に入会、研修を始めましょう」
「...
今夜は大層月の色がいい。 乃公おれは三十年あまりもこれを見ずにいたんだが、今夜見ると気分が殊ことの外ほかサッパリして初めて知った、前の三十何年間は全く夢中であったことを。それにしても用心するに越したことはない。もし用心しないでいいのなら、あの趙家ちょうけの犬めが何だって乃公の眼を見るのだろう。 乃公...
「ところが間もなく来た十七、八の芸者を一目見るなり、島村の山から里へ来た時の女ほしさは味気なく消えてしまった。肌の底黒い腕がまだ骨張っていて、どこか初々しく人がよさそうだから、つとめて興醒めた顔をすまいと芸者の方を向いていたが、実は彼女のうしろの窓の新緑の山々が目についてならなかった。ものを言うのも...
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