「ここでくだらぬ争いをして家中に醜態を晒すのならば、お主らすべてわしのもとから離れよ! 今、ここですべきことはなんなのだ! 敵は誰だ! 父上かっ! それとも隣の同僚かっ! 武田大膳であろうがっ!」 連中は黙るしかない。憮然と腰を下ろすしかない。 牛太郎は連中をちらと見やる。もとはといえば、勘九郎が...
「ここでくだらぬ争いをして家中に醜態を晒すのならば、お主らすべてわしのもとから離れよ! 今、ここですべきことはなんなのだ! 敵は誰だ! 父上かっ! それとも隣の同僚かっ! 武田大膳であろうがっ!」 連中は黙るしかない。憮然と腰を下ろすしかない。 牛太郎は連中をちらと見やる。もとはといえば、勘九郎が...
於松が見つけてきたのは山あいに溶け込むように朽ちている廃寺であった。善兵衛は隠密行動に徹底している牛太郎に「このような真似をせずとも」 宿泊先なら寺社なり地侍の屋敷なり用意できると何度も言ってきたが、牛太郎は首を振るばかりで、昆虫が駆け回っている本堂の様子に新三がうんざりと顔をしかめる。「本当に...
、と高比古は鼻で笑った。
「北風が来るぞ。」
その瞬間。海上をめちゃくちゃに吹き荒れていた風が、一つの大流にまとまった。背後から吹いた風を、勢いよく広がった白い帆が捕まえてばさりと唸る。北風に押された五艘の船は、またたく間に速さを増し、海の上をやすやすと滑っていく。
石玖王の船団でも、急に吹いた...
けだぞ。自分に時間がないからといって、杵築も意宇も巻き込んで急がせる気かよ?」
嫌味だった。高比古は狭霧の胸の内を見通したうえで、それを責めた。
大和へいかなければと焦っているのは、あんた一人だ――と。
たしかに、それを覚悟しているのは狭霧だけだ。狭霧を大和へ遣わせる使者にするという話が、すで...
も混ぜてよ!」
仲間外れにされたのを、本気で悔しがっているらしい。
結局、真浪は、断る隙も与えずに二人にくっついて歩く。高比古は、からかっておいた。
「やだよ。おまえはいつも、一人で喋る」
「あ、そんなこというわけ? じゃあ、狭霧ちゃんを誘いにいくけど、いいんだな?」
真浪の童顔には、得意げな...
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