目を細め
- カテゴリ:日記
- 2013/09/23 14:45:55
けだぞ。自分に時間がないからといって、杵築も意宇も巻き込んで急がせる気かよ?」
嫌味だった。高比古は狭霧の胸の内を見通したうえで、それを責めた。
大和へいかなければと焦っているのは、あんた一人だ――と。
たしかに、それを覚悟しているのは狭霧だけだ。狭霧を大和へ遣わせる使者にするという話が、すでにあちこちで出ているのは事実。でも、狭霧ほど心を決めた人はほかにいない。いや、それがとても決めにくいことだと、狭霧はよく理解していた。須佐乃男と大国主に縁のある娘を和睦の使者として差し出すことは、相手を同等と認めて、気に食わないあれこれを譲歩することにつながるのだから。
でも、それで戦は避けられる。それに、いがみ合うより、結びつき合うほうがきっといいことを生む。だから、そのときが来れば、狭霧は自分から使者になりたいと名乗り出ようと決めていた。
それなのに、高比古は、その覚悟すら馬鹿にするようないい方をした。
狭霧は、渾身の力で抗った。いい出しにくいから誰も口にしないだけで、誰もが考えているはずのことだ。咎められるようなことではないと信じた。
「それは……! そうだけど……でも」
そして、再び喧嘩じみた問答が始まる。<a href="http://www.tcjkg.com" title="http://www.tcjkg.com">http://www.tcjkg.com</a>
疲れればそばの井戸から汲み上げた水で喉を潤し、何度も姿勢を変え、ついには木の幹にもたれたり、根の上に横になったりしつつ、狭霧と高比古はいい合いを続けた。
薬師のことに、大和のこと。それから、長老会の意義についてと、力の掟の意味。それから、水路のことに、ひいては武具の造り方や運び方、軍の稽古についてまで。
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互いの胸にあったものをすべて吐き出し、もうなにも出ない、と疲れを感じ始めた頃。天頂にあった太陽が傾き、陽射しは弱まり始めていた。
「なんだか、疲れたね」
「ああ、ものすごく疲れた。もういい。続きは今度にしよう」
高比古は放り出すようにいったが、すぐに顔をあげた。
「そういえば、あんたは、明日にはもう杵築にいないのか」
そのとき狭霧は、高比古のそばで木の幹に背をもたれ、根の上に両足を投げ出していた。
「うん……そうだね」<a href="http://www.tcjkg.com/chloeクロエ-z0-1.html" title="アナスイ バッグ">鞄 ブランド</a>
「そうか。残念だな。まだいい足りなかったんだが」
「まだあるの? いつも、それくらいお喋りだといいのにね」
早朝からいままで散々嫌味をいわれたせいか、狭霧はついいい返した。
間髪いれずに冷笑すると、高比古もやはり皮肉で返した。
「おれがよく喋るのは、あんたがそれだけ頼りないからだろう? あんたがいうことがもっとましだったら、こんなに腹が立たなかっただろうに」
思わず、ぐっと詰まった。高比古がいうのは、事実に間違いないのだから。
「……本当に、高比古って――。そうやって相手のことを見下して、なんでもかんでもずけずけと口にするから、知らないうちに敵をつくったりするのよ」
「なんだと?」
ぎろりと睨みをきかせた高比古を、狭霧は真っ向から睨み返した。
「なによ」
二人のあいだに険悪な雰囲気が漂いはじめて、みたび、喧嘩じみたやり取りが始まってしまいそうになった、その時。
そこに、水を差す気配が近づいてくる。声を震わせて人を探す女の声だった。
「高比古様はどこです、高比古様は……」
杵築の兵舎に仕える馬飼(うまかい)の男に先駆をさせて、高比古の名を呼びながらやって来るのは、恰幅(かっぷく)のいい女人。
「文凪(あやなぎ)さん……」
その人は、心依姫(ここよりひめ)のもと乳母。宗像(むなかた)から海を渡って、一緒に出雲へやってきた侍女だ。
「文凪?」
高比古も背を起こして、訝しげに目を細めた。
文凪が