Nicotto Town


ぐうたら日記


一億分の可能性

Episode6~ 願い

 

 父の家に引っ越して定期テストが終わった週末、ツバルが無菌室に移ったことを知った。一応、免疫不全による感染症を防ぐためという名目だったのだが、本当はそれほど容体は悪かったのだ。スグルはガラスを叩いて自分が来たことを伝えた。ツバルがガラスを叩く音でこっちを振り向いた。看護士さんによれば、室内電話的なものがあるからそれで話せるらしい。

「ツバル、俺」

「スグル。なあ、ひとつだけ頼みがある。俺の代わりに……全国高校生バンドコンテストに、代わりに出てくれ。お前ならできる。俺と同じ器用貧乏だもん。俺のギター使ってくれ。一回録音したヤツが、PCに入ってる。それ聞いて、俺の癖をまねろ」

「ちょ待て、なんで俺が」

 スグルは焦った。いくら同じ器用貧乏だとは言っても、さすがに楽器経験はない。リコーダー程度だ。それにギターを弾けと?無茶がある。

「メガネとって、俺に化けられるのはお前だけなんだよ。メンバーには俺の事を言ってないんだ。なぁ、頼む!」

 ガラス越しのベッドの上でツバルが頭を下げた。スグルは困ったが、無理なものは無理だと断った。

「ちぇーっ、スグルのケチー!」

「ケチで結構さ。はぁ……」

「スグル、どうかした?」

「何でもないさ。お前が気にすることじゃない」

「なんだよ?言えよ。気持ち悪いぞ」

 ツバルは笑っていた。

「やー、ツバルのまねって、結構大変だなぁって」

 とっさに嘘をついた。本当は、ツバルの容体が安定していない。だから保険として、スグルから骨髄を提供するということだ。99%型が一致する、唯一の骨髄を。そのため、明日から入院することが決まっていた。それなのに、このタイミングで免疫不全が疑われるとは……。

「今日は帰る」

「えー、さっき来たとこじゃん」

「ごめん、急用思い出した。先生にレポート出さないと」

「分かったよ。明日は来いよ」

「分かった」

 約束できないことは分かっている。それでも、ツバルを不安にしたくなかった。

 

 骨髄の提供にはリスクが伴う。麻酔や注射によって、二度と自分の足で立てなくなることもある。それでも、了承したのはツバルのためだった。

 麻酔が冷めてからも数日、白い部屋で過ごした。どれくらいたったかは分からないが、とりあえずは退院できることになった。

「ツバルー。元気だった?」

「お前何で来ないんだよ」

 ツバルは怒っていた。

「ごめん、ちょっと忙しくてさー」

「俺、頼みがあったのに」

「何?」

「絶対聞いてくれるって言ってくれなかったら、言わない」

「分かった分かった。絶対聞く」

「俺のギターもらってくれ。それでコンテストに出てくれ」

「え……」

「頼む」

「……分かった」

 一度は断り逃げたことだった。しかし、ツバルには命の期限がもうない。それを本人も理解していることが分かる。だからこんな事を言うのだ。あれほど大事にしているギターを譲るなんて。

「じゃあ今日からお前は浅間ツバル。よろしく」

 ツバルはほっとしたように息をついた。そんな姿を見て胸が苦しくなった。ツバルはスグルの骨髄が保険で、その保険が使われる日が決まっていることを知らない。

「スグル、もう時間がない。コンテストに間に合わない。だから練習してくれよー?」

「分かった分かった。今すぐ帰って練習する」

 スグルはその場しのぎであることを承知しながら、ツバルに微笑んで手を振った。

 

 ツバルの部屋にはきれいに磨かれたギターが立ててあった。ギターの音。練習しながら確かめるためだろう。メンバーには、本当の事を言わなきゃ。

『スグルです。ツバルが病気なのでギターをやることになりました』

 メンバーはすぐに集まってきた。

「お前マジでツバルじゃねぇんだよな。うわー似てるわ。さすがは双子」

「てか、スグルってギター弾けねぇよな」

「さすがってなんだよ、佑太。弾けねぇよ、友也」

 ベース担当の佑太。ドラムの友也。

「ごめんー」

 遅れてきた、リードの夏美。全員そろった。

「俺はギターは弾けない。練習時間はない。どうすればいい?」

「スグル、そう言えばツバルはギターの音源とってたよな!?」

 佑太がひらめいたようだった。夏美もピンと来たようだった。分かってないの部外者のスグルただ一人だけ。

「ギター以外は生バン。で、スグルが歌う。スグル、歌くらいは歌えるんでしょう?」

「歌える」

「ギターは録音音源を使う。だからスグルはギターを弾くふりを練習すればいい」

「そう言う事。できるよね?スグル?」

 もう選択の余地はない。ここまできた以上、自分のやるべきことである。スグルは頷いた。

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2010/09/23 21:33
さやこさん

ありがとうございます!

過去作のご披露になっちゃってますが(苦笑)

ちゃんと続きも書きますのでb
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2010/09/23 21:32
隆君

読めなくていいよ^^

わたしは、まんが、読めないから(←は!?
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2010/09/23 14:42
待ってました!一億分の可能性!!
サークルが解散して読めなくなってしまっていて哀しかったです…。゜゜(´□`。)°゜。
でもついに続きが…
鮎川さんの小説は大好きです♫次回もどんな展開になるのか楽しみにしています☆
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2010/09/22 23:57
アーたん国語苦手だから
読めんww
小説は苦手www
漫画なら好きだけど?ww
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2010/09/22 21:27
ごめんなさいね!

連載中断した小説です(汗
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2010/09/22 21:26
??どういうこと??・・・・・



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