一億分の可能性
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/22 21:22:52
~Episode6~ 願い
父の家に引っ越して定期テストが終わった週末、ツバルが無菌室に移ったことを知った。一応、免疫不全による感染症を防ぐためという名目だったのだが、本当はそれほど容体は悪かったのだ。スグルはガラスを叩いて自分が来たことを伝えた。ツバルがガラスを叩く音でこっちを振り向いた。看護士さんによれば、室内電話的なものがあるからそれで話せるらしい。
「ツバル、俺」
「スグル。なあ、ひとつだけ頼みがある。俺の代わりに……全国高校生バンドコンテストに、代わりに出てくれ。お前ならできる。俺と同じ器用貧乏だもん。俺のギター使ってくれ。一回録音したヤツが、PCに入ってる。それ聞いて、俺の癖をまねろ」
「ちょ待て、なんで俺が」
スグルは焦った。いくら同じ器用貧乏だとは言っても、さすがに楽器経験はない。リコーダー程度だ。それにギターを弾けと?無茶がある。
「メガネとって、俺に化けられるのはお前だけなんだよ。メンバーには俺の事を言ってないんだ。なぁ、頼む!」
ガラス越しのベッドの上でツバルが頭を下げた。スグルは困ったが、無理なものは無理だと断った。
「ちぇーっ、スグルのケチー!」
「ケチで結構さ。はぁ……」
「スグル、どうかした?」
「何でもないさ。お前が気にすることじゃない」
「なんだよ?言えよ。気持ち悪いぞ」
ツバルは笑っていた。
「やー、ツバルのまねって、結構大変だなぁって」
とっさに嘘をついた。本当は、ツバルの容体が安定していない。だから保険として、スグルから骨髄を提供するということだ。99%型が一致する、唯一の骨髄を。そのため、明日から入院することが決まっていた。それなのに、このタイミングで免疫不全が疑われるとは……。
「今日は帰る」
「えー、さっき来たとこじゃん」
「ごめん、急用思い出した。先生にレポート出さないと」
「分かったよ。明日は来いよ」
「分かった」
約束できないことは分かっている。それでも、ツバルを不安にしたくなかった。
骨髄の提供にはリスクが伴う。麻酔や注射によって、二度と自分の足で立てなくなることもある。それでも、了承したのはツバルのためだった。
麻酔が冷めてからも数日、白い部屋で過ごした。どれくらいたったかは分からないが、とりあえずは退院できることになった。
「ツバルー。元気だった?」
「お前何で来ないんだよ」
ツバルは怒っていた。
「ごめん、ちょっと忙しくてさー」
「俺、頼みがあったのに」
「何?」
「絶対聞いてくれるって言ってくれなかったら、言わない」
「分かった分かった。絶対聞く」
「俺のギターもらってくれ。それでコンテストに出てくれ」
「え……」
「頼む」
「……分かった」
一度は断り逃げたことだった。しかし、ツバルには命の期限がもうない。それを本人も理解していることが分かる。だからこんな事を言うのだ。あれほど大事にしているギターを譲るなんて。
「じゃあ今日からお前は浅間ツバル。よろしく」
ツバルはほっとしたように息をついた。そんな姿を見て胸が苦しくなった。ツバルはスグルの骨髄が保険で、その保険が使われる日が決まっていることを知らない。
「スグル、もう時間がない。コンテストに間に合わない。だから練習してくれよー?」
「分かった分かった。今すぐ帰って練習する」
スグルはその場しのぎであることを承知しながら、ツバルに微笑んで手を振った。
ツバルの部屋にはきれいに磨かれたギターが立ててあった。ギターの音。練習しながら確かめるためだろう。メンバーには、本当の事を言わなきゃ。
『スグルです。ツバルが病気なのでギターをやることになりました』
メンバーはすぐに集まってきた。
「お前マジでツバルじゃねぇんだよな。うわー似てるわ。さすがは双子」
「てか、スグルってギター弾けねぇよな」
「さすがってなんだよ、佑太。弾けねぇよ、友也」
ベース担当の佑太。ドラムの友也。
「ごめんー」
遅れてきた、リードの夏美。全員そろった。
「俺はギターは弾けない。練習時間はない。どうすればいい?」
「スグル、そう言えばツバルはギターの音源とってたよな!?」
佑太がひらめいたようだった。夏美もピンと来たようだった。分かってないの部外者のスグルただ一人だけ。
「ギター以外は生バン。で、スグルが歌う。スグル、歌くらいは歌えるんでしょう?」
「歌える」
「ギターは録音音源を使う。だからスグルはギターを弾くふりを練習すればいい」
「そう言う事。できるよね?スグル?」
もう選択の余地はない。ここまできた以上、自分のやるべきことである。スグルは頷いた。
ありがとうございます!
過去作のご披露になっちゃってますが(苦笑)
ちゃんと続きも書きますのでb
読めなくていいよ^^
わたしは、まんが、読めないから(←は!?
サークルが解散して読めなくなってしまっていて哀しかったです…。゜゜(´□`。)°゜。
でもついに続きが…
鮎川さんの小説は大好きです♫次回もどんな展開になるのか楽しみにしています☆
読めんww
小説は苦手www
漫画なら好きだけど?ww
連載中断した小説です(汗