Nicotto Town


錆猫香箱日和


There must be an angel

今朝、ニコのお友達のにゃんこさんが、
お住まいの近くの九十九里浜の光景を書いておられ、
それを読んで私も浜辺を軽く散歩したような、爽やかな気分になりました。
「あなたの近くの海はどんな顔をしていますか?」
というにゃんこさんの問いかけに
もう何年も見ていない太平洋に思いを馳せながらパソコンを閉じて顔をあげると
目の前に九十九里浜の海が広がっていました。

それは1枚のポートレイトで
大きく引き伸ばされたモノクロの写真。
20代前半頃にカメラマンの友人が撮ってくれた、私の宝物。
写真のなかの私は男の子みたいな短いツンツンに立てた髪。
おまけに白髪。
ちょっとふてくされたように顔をしかめて、右手で顔の半分を被い、
左目の中にある九十九里浜は、真っ白い波頭に光をいっぱいにうけ輝いている。

そう、まだこの頃は若かった。
何にもわかっていなくて、とにかく真っ直ぐ進むことしか考えていなかった。
この写真を撮った
時の彼女だってそうだった。
高校でクラスがずっと一緒で、私も彼女も小説とアートが大好きで
男性が嫌いで、薔薇と猫と天使が大好きで・・・。
高校を出てからは何年か音信不通になっていたけれど
再会した時は彼女はプロカメラマンの助手で、私はまだペーペーの雑誌編集者だった。

「ナジャの写真が撮りたいんだよね」
「はい?」
私は当時彼女に『ナジャ』と呼ばれていた。
アンドレブルトンの小説に出てくる登場人物で、
そのおよそ人間離れした存在感に主人公は心をワシ掴みにされ
昼も夜もなく彼女に恋をするのだが、ナジャはある日忽然と姿を消してしまうのだ。
「私のなかで、あんた以上にナジャのイメージに近い人はいないんだって!頼むよ!」
「無理。大きいコンクール狙ってるんだったら、ちゃんとしたモデル料だしてさ、
プロのモデル使って撮ったほうがいいって」
とにかく、写真のモデルになるなんて絶対嫌だ、という私の訴えを無視して
彼女はどんどん写真撮影の段取りを進めていった。
おりよく、ニューヨークにメイクアップアーティストの修行に行っていた
これまた高校の時の同級生が帰国していた。
彼女には最高のタイミング。
「私さ、今度のコンクール、ナジャの写真が撮りたいんだよ。
コンクールで入賞すればハクがつくからいろいろ仕事が来るようになると思うんだよね」
「うわ、面白そう、やるやるう♪ うんうん、そんな退廃的な感じの写真撮るんだったら
普通のキレイなだけのプロのモデルじゃ駄目だよね。あの人間離れした顔じゃないと」
「で、あの猫、いつ捕獲しよか」
「入稿明けをひっとらえよう」 
「徹夜明けの意識朦朧としているところを襲撃か。そりゃ怒るだろ」
「殴られてもいいから撮りたい。ナジャを撮らないと、コンクールは無理だと思う」
「そうか、じゃあ私も殴られるの覚悟で手伝う。あの顔にメイクもしてみたいし」
「んじゃ、決まり!」
ってなわけで、友人二人の 『サビ猫捕獲作戦』は本人の預かり知らぬところで
ちゃくちゃくと進行していたのでした。
                                       後編に続く・・・・・・

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