Nicotto Town


コロポックル


沖田の買い物


山茶花が咲いている。
俺の目は小さな庭にある山茶花に留まったまま。
冬の世界にあって山茶花だけが盛りと咲く花だ。
俺は山茶花を見ていたのに、心は昔に戻ると思い出を見つめていた。
老いて何故だか些細な昔を思い出してしまう事もあるものだ。
昔しの事。ある男と京で寝食を共にした事がある。
男の名は沖田総司と言った。
その頃は市中警護で非番が合う事も無し
寝に帰るだけなら寝食を共にしたとは言えんかもしれんが。
だが稀に非番が合った時の事。
俺は非番に刀の手入れをしようと立ちあがったってすぐ、真横に人の気配を感じて総毛だった。
迂闊に自分の構えの内に踏み込まれたのだ。
しかも真横に!
咄嗟に体を引くと身構えて踏み込んで来た奴を探れば・・・沖田だった。
沖田は笑っていた。
こいつ!何を考えてやがる!!
「踏み込んで来る時は声をかけろ!」と言ってやったのだが沖田は
「四六時中、構えていたら疲れますよ」と言いながらにっこりと笑んだ。
この笑みが曲者だ。
沖田は猫に似ていると思う。
鼠くらいは狩るだろうが他に何もなさない優しい猫に見えた。
俺は若い頃にこの猫の笑みに騙されて酷い目にあっている。
この沖田と言う男に会ったのは俺が19に成ろうと言う頃だ。
縁あって天然理心流道場の試衛館へ行った時の事。
近藤先生は別格だが俺は道場の客分の永倉さんに目が行っている。
その時に思ったのはこの男と手合わせしたら俺は負けるだろうと言う事だ。
実にのんびりとしているようで全く透きが見えない。
俺もそこそこ強い気でいたが世の中そうでもないらしいと悟った。
さてと、誰が俺の対戦相手か
近藤先生はある男を呼ぶ。
その男は一見して猫の様に見えた。
鼠を狩るくらいはするだろうが・・・後は縁側で寝てばかりいる可愛い生き物に似ている男だ。
男は酷く幼く見えたので歳が俺と同じと聞かされても俄かに信じる気にもならなかった。
そうして、この男が試衛館の師範代だと言われ絶句した。
恐れたのでは無い。逆だ。猫の師範代は張り詰めた鬼が無い。透きだらけ。
踏み込んで俺が隣りに立っても子猫の様に眠っているかもしれない奴だと思った。
対戦はこの猫か。
これもご愛嬌だ早く手合わせで2本勝って1本くれてやろう。
子猫には早く退散してもらおうさ。
俺は今まで構えの内に踏み込まれた事が無い。
踏み込まれなければ負けず。おのずと勝てるは道理だ。
この試合が始まる前までは己の剣は鉄壁と信じていた。
だが試合が始まったとたん俺の鉄壁を越え鼻先に猫が入っている!
敵の切っ先が目の前にある事実!
恐ろしいと思った。
恐れた心は乱れ振り払って間合いを持っても鼻先に突っ込んでこられる!
そうか敵は子猫でも猫でも無い!
猫のふりをした山猫だ!
身が軽く素早い動きで俺の鉄壁を崩してくる!
まるで喉笛に食らい付こうとする山猫だ!
敵が全く読めない。
この山猫には殺気など不要だ
倒し倒される事を楽しんでいるのだから。
そして俺はこの山猫に懐に飛び込まれて2本とられる散々だ。
武道に全廃は無い。
真剣で殺しあう訳でも、面子を潰す訳も無く負けても1勝は選別で貰うのだ。
屈辱ではあるが山猫と尋常勝負をする気は無い俺だ。
だが山猫の方も尋常勝負をする気など無いらしいと知った。
3本全部を勝とうとしやがったからだ。
俺の面子を潰しにかかってきやがる!!
しかたない!殺す殺されるの勝負でも無いのに決め手を出さないければならなくなった。
俺の剣で死んでも奴が悪い!
俺は負け無しの突きを構えて相手を睨んだ
が・・・冷たい汗が流れただけだ。
悪夢のように山猫も突きを繰り出す構えをしている!
山猫の決まり手も突きだったのか!
あの時は何とか1本取って面目は保ったが

二度と手合いたく無い相手だった。
なのに・・・
あの山猫は今は沖田総司と言う名をもらって俺と同部屋だ。
沖田は休みが合った事だし「買い物に行きませんか」と誘うから
「否!」と答えた。
普通の人間なら買うと言えば花町に行くか骨董や刀の類のひやかしだろうに・・・
沖田は違う。
いつか、誘われ何の気無しに付き合ったが・・・木戸番小屋に行くか?
あの時、木戸番小屋で沖田と子供が駄菓子の取り合いになって絶句した。
侍が駄菓子を子供と取り合いするなど考える奴はいなかろうて・・・
それで
「買い物に行きませんか」と誘われ
「否!」と答えた。
あれから星が流れるように時代が枯れ戦に継ぐ戦を越えて
俺は生き残っている。

もう齢70を越えんとしてな。
沖田よ、お前は近藤隊長が死ぬとすぐに自分の命を消し逝ってしまった。
そうしてお前の魂は蝦夷まで行って土方副長を迎えにいったのだろう。
俺は死にたいとは思わなかったが
死んでも可笑しくない戦に何度も赴いた。
そんな俺を何故にお前は迎えに来ない。
きっと沖田の事だ、くだらん遊びに夢中になって俺を忘れていやがる。
俺も歳をとって、あの時お前に「買い物にい行こう」と言われ、付いて行ったら何所に行ったかと思うのさ。




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2010/12/23 18:12
takeruさん♪
嘉村権太郎さんは伊東派でも試衛館派でも無いのに
撃権師範って言うのは破格の強さだそうです。
監察方って言うのも信頼があったと思うです。
切腹は嘘ですよぉ~大野次郎右衛門は全くの架空~←全然いません
嘉村さんの子孫のお話しでは論客だったそうですよぉ~♪
吉村さんは架空の人じゃ無くって本当に居た人です♪←姿きちっとした論客の先生ですぅ♪
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2010/12/23 16:22
す、すごいです。浅田次郎の映画がほんとだと思ってた。近藤さんもすきですが、土方さんの統率力もすごいです。
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2010/12/23 15:03
takeruさん♪
コロは近藤勇が大好きです♪
勿論~沖田さんも斉藤さんも吉村さんも好き♪
吉村さんの本名は嘉村権太郎さんって知ってましたかぁ
観察方で撃剣師範!!←強いよぉお~
お墓や子孫の方の弁では明治3年1月15日に亡くなってます♪←墓女さん調べ
明治まで生き残っていたのは斉藤さんや永倉さんだから~
よっぽど強かったって思います。
切腹もしていないし~戦って生き残った新撰組の最強の一人ですよねぇ♪
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2010/12/22 21:57
コロさんは、沖田総司がすきなのかな。確かに新撰組で一番剣が強かったね。ぼくは、壬生義士伝の吉村貫一郎がすきです。
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2010/12/11 21:24
風子コロポックル姫様♪
斉藤さんは73歳まで生きられたそうです。
亡くなる時は正座をなさって亡くなったって聞きました。
正座ですよぉおおお~!!←凄すぎる!
斉藤さんと生き残りの会津や新撰組の人が
刀だけで戦った西南戦争の田原坂には
今でもかち合い弾と言う
敵の弾と味方の弾がぶつかって噛みあったままの落ちて~が、今も出るそうです。
そんな凄い撃ち合いの中を刀だけで生き残るのは凄いです。
斉藤さんが生きていてそれだから~
沖田さんが病気にならず生きていたらどんなだったかと思うです。
ほめていただいてありがとうございます♪


ぴよよ♠ さん♪
斉藤さんです~!!
永倉さんも生き残ったですねぇ~強い!!
沖田さんの子孫の方が沖田さんは色白で小柄と言っていらっしゃる事と
永倉さんが
「沖田は猛の剣」「斉藤は負けない剣」とカキコなので
一応・・・下敷きにはしたつもりなんです・・・orz
昔、沖田さんと遊んだ子供がお婆ちゃんになって証言して
沖田さんは子供と本気で遊んでいたそうです。
沖田さん保父さん向きキャモ♪
面白いって言っていただいて感謝です。
ありがとうございました♪


美琴さん♪
コロもファンですが・・・・
コロのカキコの沖田さんの子孫の方の伝聞を取りました。
薄桜鬼の沖田さんより~
色白で小柄の可愛い感じにしました。
永倉さんが「沖田の剣は猛の剣」と言っているので
猫と表現して~
実は雪豹のような剣をカキコしたかったですが・・・orz←コロの力不足ぅぅぅ
沖田が子供達と保父さんのように遊んだのは本当です。
遊んでもらった女の子がお婆さんになった時に証言しています。
だから薄桜鬼の沖田さんも斉藤さんもゲームですが本当に近いと思ってます。
面白いと言っていただいて嬉しいデス
ありがとうございます♪



☜m☆m☞ 王子様♪
ありがとうございます!!自信がつきましたぁああ~!!
誉めていただいて凄く凄く嬉しいですぅうう♪
対馬山猫って可愛いですが・・・やっぱり猛獣ですよねぇ~
コロの中では雪豹って感じダシヨ~
永倉さんが「沖田は猛の剣」としていて「斉藤は負けない剣」としていて
そこを下敷きにはしたですが・・・orz←コロ力不足!!
本当にありがとうございました♪
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2010/12/08 23:17
妖精さん こんばんは♫

コメ開放してくれたんだねw
ほんとお世辞では無く凄く良く書けてるよ!
丁度、我が家の庭に咲く山茶花も鮮やかな紅色を見せてくれてます✿
そして、夕方のニュース観てたら対馬山猫が映っていて
同じ猫でも、飼い猫とはやはり違う野生の風貌が
妖精さんの書いたこの沖田と重なってみえました。

伝言にも書いたけど新撰組フリークの妖精さんならではの力作だと感じましたょ!
是非、また書いて下さいね☆^^!
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2010/12/08 16:06
薄桜鬼ファンの一人です。
おもしろかったです^^
アバター
2010/12/08 00:24
永倉さんですか??
多摩の時代から生き残ったのは.....^^

沖田さんはしばしば子供のような無邪気さをもった人とされてますね^^
おもしろかったです
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2010/12/07 22:34
人の生き死には、人知では計り知れないものと思います。
生きようと願ってそうなるべくもなく、死のうと願ってまた、そのようになるべくもなく・・・・・

全ては、人の生まれ定めたごとくに生きるほかはなく・・・・

ただ、定めに従いて、精一杯を生きる定めと思う今日この頃です。



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