Nicotto Town


錆猫香箱日和


【夕空】別バージョン rainさん編 Ⅴ

このお話は【夕空別バージョン rainさん編 Ⅳ】の続きです。




『結衣、私が大きくなったら、背中に乗りなさい』言うと足元に移った。

シンの瞳は前を向いてて見えないが、体からは蒼白い炎がいく筋も

上がり始めている。

そしてそれは徐々に広がり、シンを包み込むように周りの大気が回転していく

シンの体が急速に大きくなっていく、前に見た時と同じく光の虎の姿だ。

『結衣、いいぞ。背中に乗ってしっかり、体全体で掴まってなさい』

『うん。わかった』言うと背中にまたがった。

『これからもう少しすると、回りが急速に早くなり吸い込まれるように

真っ暗な空間へ突入していく、それを抜けたところが私達の世界だ。

向こうの世界でもシンが同じ力を、今と同じように使って目標となるべく

待っている。向こう側についたと同時に私が結衣に声をかけるから

結衣はそこから全力で手術室に向かい、ママさんに石を届けろ』

『わかった。大丈夫、頑張ってみるから』

『ガードはしてあるが怖かったら目をつぶっていなさい。では、行くぞ!』

シンが疾走し始めたのが分かった。どんどん加速していく

走っているというより宙を飛ぶ感じだ。しかもよく見ると

シンの体を七色の光が駆け巡っている。姿もいつの間にか鳥のように

横に翼が見えている。しかもさらに進化しているようだ。なんとなく自分が今

竜の背に乗っているような不思議な感覚に包まれ出した。

多分間違いなく、今シンの姿は竜なのであろう。ということは

さっきまでの姿は「朱雀」「鳳凰」「火の鳥」のどれか?

実際に見てみたかったな、とわけもなくそんなことを考えていた。

『いまだ、結衣走れ!』







何のショックもなく、階段の手すりの場所に戻っていた。シンの力だ。

躊躇なく手術室に向かって駆け出し始めた。

手術室の扉を開けると、ママが手術台に寝ており、

周りに数人の看護婦が慌しく働いていた。

素早く近づくと、結衣はママの額に石をあててそーーっと手を添えた。

『お願い、私の力も何も要らない。ママを助けて』心で強く念じた。

手が一瞬輝き、暖かさと電気に触れた時のような感触が伝わってきた。

『あーーっ!急いで先生呼び戻してきて!』ひとりの看護婦が声をあげた。

今まで動いていなかった心電図が、正確な鼓動を映しだしていた。

扉の一番近くにいた看護婦が大慌てで駆け出していく。

結衣は気づかれないように抜け出すと、舞さんのもとへ向かった。

『結衣ちゃんお疲れ様。大活躍だったようね、大丈夫?』と言うと抱きしめられた。

『舞さん、私びしょ濡れ』 『いいの気にしなくて、抱きしめたいの』

舞さんの優しさが直に伝わってくるようだった。

目の前を執刀医の先生と看護婦が勢いよく走り抜けていく。

『でも心配なことが、ひとつあるの』と言うと手を持ち上げてそっと開いた。

そこにはコンクリートのような物質が、もろくも崩れさっていた。

『父が見つけた石ね。私の持ってたほうも同じく崩れたわ』

『ママ、大丈夫?かな?』 『そのことね。なんの心配もいらないわ』

『どうして?』 『私は近くにあるものなら、わかる能力があるの

ママさん、かすり傷程度と軽い打ち身しか傷が残ってないわ』

『エーー!本当』 『本当よ』言うと微笑んだ。

『ヤッター!ママが助かった!ねえ見て舞さん、外も晴れて夕日に虹が!』

さっきまで立ち込めていた黒い雲が突然消えて夕日がさし

しかも淡い虹を伴って素晴らしい景観を映し出している。

手術室のランプが消えて、執刀医が大慌てでこちらに向かってきた。

『どうもすいません、搬送した救急班のカルテが間違っていたのと

医療機器の誤作動があり、間違ったことを伝えてしまいました。

患者さんは何ともありません、本当に軽い打ち身と切り傷だけです。

念のため脳波を調べたら、すぐにも帰ることができます』

『誤作動ですか?』舞いさんが聞き返すと

『申し訳ありません、あってはならないことなんですが

救急班にも連絡したんですけど、どうにも患者はケガをしていないんです。

私が最初に見たときはもっとひどいケガをしていたはずなのに・・・・・・』

舞さんがニコッとこちらを向いて笑ってウインクしてよこした。

『ね~シンは今どうしているの?』

『疲れてしばらく寝るそうよ、起こすなと言っていたわ』

舞さんはニコニコ笑って話し出した。そしてね『起きたら○○のブルーベリー

ヨーグルトを食べたいから買っておくように』だって。

『えーー!シンの好物なの?』 『好きでたまに買っておくように頼まれるわ。

たまにちょこっと食べるのが、好きなようよ』微笑みながら答えた。

『必ず買って持って行きますと伝えてください』 『ええ分かったわ』

看護婦が近づいてきて『こちらの方に来てください』と伝えてきた。

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