【夕空】別バージョン rainさん編 Ⅵ
- カテゴリ:小説/詩
- 2011/08/15 23:00:25
このお話は【夕空別バージョン rainさん編 Ⅴ】の続きです。
その日はママを引き取って舞さんとこの運転手に送ってもらった。
色々なことがあり、警察やトラックの運転手の会社の人、運転手
お隣のおばさん達、訪ねてくる人が多くて、しばらくママは対応に
追われていたようだった。
私はというと妙に体がだるくて、起きては寝て、起きては寝てと
一日の大半を気もそぞろで寝て過ごしていた。多分体が疲れているのだろう。
数日の後、私はママとシン指定のブルーベリーヨーグルトを買って
舞さんのおうちへ訪ねていった。ママにはあの交通事故の日たまたま
通りかかった舞さんに事情を話して、病院に連れて行ってもらったと話していた。
『この度は娘共々大変お世話になって申し訳ありません』と舞さんに挨拶して
話を始めていた。私はと言うとトイレといって抜け出して、
シンの寝ている部屋を見に来ていた。シンは自分の寝床で丸くなって寝ていた。
『シン、起きている』 『目は覚めているが起きて動く気はない』と笑いを含んだ
シンの思考が頭に響いてきた。
『本当にありがとうね。誰よりシンに感謝してる』
『その事は気にすることはない。するべき事をしたまでだ』
『いいえ、シンがいなかったらママも助からなかったし私がここにいることも
出来なかったかもしれない。全部シンのおかげよ、ありがとう』
『どんな事でも、どんな理由でも関わった以上そこからは自分のためにする事、
それが自分の運命だと思っている。そんなに気にしなくてもいい』
『ね~シンはここからもといた場所に帰ってゆくのでしょう。そこに帰っても
私と会うことはできるの?私のこと忘れたりしない?』
『ここを離れるかどうかは今のところわからない。連絡がないのでね。
とてもいい経験になったし、結衣の事を忘れることはないよ』
『そうなの、良かった。私シンのこと大好き!それが伝えたかったの』
『あはは、ありがとう。結衣はしばらくゆっくり休んだほうがいいよ』
『??どうして』 『この間までは結衣の体から外に向かってパワーが
絶えず流れ出していた。今はそれがまるでない』
『それって力が無くなったということ?』
『それはわからない。あれほどの力を使ったんだから
無くなってもおかしくないし、今は消えてるだけかもしれない』
『私は力が無くても全然平気。ママがいればいいし。
私には使い切れない力だから。むしろ無くなったほうがいいのかもしれない。
戻れなくなるかもしれないしね』
『そうだね。人が制御できる力とはいいがたい。むしろ体内にあったあの石の
力が作用していたと考えたほうがいいかもね』
『うん』 子供らしい笑顔を見せて結衣が笑った。
『なんにしても、ママを救おうとした結衣の行動力は賞賛に値する。
いつまでもそういう気持ちを忘れないことだ、一生の宝物になる』
『ありがとう。今日はお礼の挨拶だけだからこれで帰るね』
『ああ、また来るといい』 『シンにお土産買ってきたから、後で食べてね』
居間に戻るとママが立ち上がり挨拶をしていた。
『今日はこれで帰ります。本当にありがとうございました。
あら結衣どこにいってたの?きちんとお礼を言った?』
結衣が『この間はありがとうございました』と言うと
『いいえ、たいしたこともしていないので、よかったらいつでも遊びにいらしてね』
と舞いさんが優しく微笑むと軽く分からないようにウインクしてよこした。
玄関を出て、送りに来た舞さんにもう一度会釈すると
結衣とママはゆっくりと歩き始めた。
『さてと、用事も済ませたし、何か美味しいものでも食べて帰ろうか?』
『うん、賛成!海神亭のジャンボエビフライとハンバーグのセットが食べたい』
『それがいいわね。では海神亭にGO!』と言うと思い出したように
『乾燥機のタイマー入れてくるの忘れた。ま~しかたないか、
帰ってからすればいいやね』
『そうだよママ、美味しいもの食べてからにしようよ』
二人は仲良く並んで海神亭に向かった。
その頃、誰もいないはずの結衣の家では
乾燥機が静かに回り始めていた・・・・・・・・・・・・・
ーーーーーーーー< おわり >- - - - - - - - - - - -