1998年の菊花賞 セイウンスカイに思いを馳せる
- カテゴリ:スポーツ
- 2011/08/16 21:13:20
競馬にあけくれていた20代前半のあの頃
一時期、55歳のオジサンを面倒みていたことがあります
おりしもバブルがはじけちゃった当時、
そのオッサンは会社の社長だったのが倒産して借金だらけ。
オマケに昔の男だから身のまわりのことはなにひとつできないのに
女房にも逃げられちゃって、酒とギャンブルに逃げる日々。
こういう人と知り合ってしまったらついかわいそうになって
何故かお金あげたり、メシ作ってやったり、掃除してやったり
ついセックスまでしてやったりしてしまうわけです。
にもかかわらず、さんざん面倒みてやったのに
宝飾品などを勝手に売り払われたので
鼻の骨にヒビがはいるほどブン殴ったらアッサリ逃げられて
今思うと人を見る目がないのはもちろん
なんて思い上がっていたんだろうと思います。
同情だけでつきあい、きっと
面倒みてあげてるという驕慢さが態度にもでていたのに違いないのです。
これはどう考えても逃げられます。
その私が当時贔屓にしていて、
出るレースの馬券は必ずと言っていいほど購入していた
セイウンスカイという葦毛の競走馬が
今日北海道の牧場で心臓発作で享年16歳で亡くなったというのを聞いて
私は悲しいというよりちょっとホッとしました。
というのは、この馬は皐月賞、菊花賞をとった2冠馬であるにもかかわらず
種牡馬としての活躍がちーーーーっとも聞こえてこない。
これはセイウンスカイの父、シェリフズスターという馬からしてそうで、
あまりの子供の走らなさに、シェリフズスターは晩年種牡馬をお役御免になり
その末路は定かではないらしいのです。
そのぐらいな馬ですからセイウンスカイの仔が走らないのも当然といえば
当然です。二冠で引退した種牡馬とは思えないほど活躍を聞きません。
なので、引退してからいままで北海道の牧場にいて
16歳で種牡馬として生涯を終えたことに本当に驚きました。
本当に奇跡のような馬でした。
確か、13戦7勝。
セイウンスカイは逃げ馬でした。
負けるときはもう見ていられないほどひどいレースでしたが
勝つとなると胸がすくような逃げっぷりなのです。
といって、走るフォームが美しいわけではありません。
パドックでも人をくっていて、
体重も絞れてるうえにパドックでも落ち着いてて
それでいて静かな闘志がみなぎっている・・・
人気も1番、2番人気で、調教のできもすこぶるいいらしい・・・・
パドックやゲートで声援がとびかう・・・。
こんなときのレースは決まって無様に負けていました。
菊花賞というのは、秋に行われる長距離のG1レースです。
逃げ馬というのはあまり長距離のレースに向いていません。
やはり長距離だと中盤からちょっと後方あたりにつけていて
先頭を走ってきた馬がバテたのをいっきに刺す、というのが断然有利です。
なので私はセイウンスカイの馬券は買っていましたが
この馬券がお金に変わることはまずないだろうと踏んでいました。
このG1に出られただけでもいいよね・・・。
私は多分セイウンスカイに惚れていたんだと思います。
あのみっともないマダラのグレーの馬体
血筋も良くない、ムラッ気のダメっこのくせにプライドの高い尊大な態度。
ムダの多い首を降るフォーム。
そして菊花賞当日、以外にもセイウンスカイはそこそこ人気でした。
ゲートが開くまでは・・・。
レースがスタートし、セイウンスカイが飛び出るやいなや
「ああああああッッッッ!!!」
そこここで悲鳴があがり、怒号が飛び交いました。
セイウンスカイは逃げ馬なので、先頭をきるのはもちろん予想どうり。
が、そのペースが異常なのです。
ゲートをでるやいなや、セイウンスカイは先頭に踊り出て
あれよあれよというまに他の馬を引き離し
ぐいぐいスピードを増しながら単独首位をひた走ります。
短距離ならこのままゴールというのもあるかもしれませんが
菊花賞というのは距離が長いうえ、
レースの後半には坂が待っているのです。
暴挙だ!
絶対最後までそのペースで持つわけが無い
散るならいっそ、潔く、か?
セイウンスカイの馬券を買っていた人間は誰もが諦め
セイウンスカイの後方を走る馬はみな内心ほくそ笑んでいたことでしょう。
そして後半に差し掛かり、さあそろそろ後方の馬が勝負にでようかという時
奇跡が起きました。
ずっと先頭をとばしつづけていたセイウンスカイのスピードが全く落ちないんです。
それどころかセイウンスカイは、走るのが楽しくて仕方がないとでもいうように
走りながら、長いシッポをバッサバッサと上下に振っていたのです。
後方の馬は全く追いつくことができず、セイウンスカイの圧勝、しかもレコード。
みすぼらしい葦毛の馬は、ゴール後も悠々と
芝生の上を軽やかにギャロップしていました。