太郎の家出
- カテゴリ:ペット/動物
- 2011/09/15 20:30:54
太郎は実家のにゃんこです。
エキゾチック・ショートヘアーという種類の長毛の猫で、
猫よりも豚と呼びたいような上を向いた鼻でチンクシャの潰れたような顔立ちを
流行の言葉で言うと『ブサ可愛い』とでもいうのでしょうか。
その容貌がミーハーなあまり頭のよろしくない女性の目にとまり
見受けされたはいいが
「ぬいぐるみみたいで可愛かったから衝動買いしちゃったんだけど
この子ちっとも私に懐かないのよ。どうしたらいい?」
という相談を知人の女性から持ちかけられ、その猫を見に行ったら
家具が傷つくからという理由で1歳になるまでケージに閉じ込められて
生活していた猫・・・。 それが太郎でした。
しかもそのバカが
「抱っこすると服にも爪がひっかかるから、今度病院で手術して爪を
切ってもらおうと思ってるの」
などとほざきやがるから、つい頭に血がのぼり
その家から半ば無理やり太郎を強奪し
(ちなみにこの頃は確かハッピーちゃんとかいう名前だった気がする)
ひきとった太郎を実家に連れて行って両親にひきあわせ
太郎がどんなひどい環境にいたか話すと
「かわいそうになあ・・・」
と言いながら、太郎の頭をそっと撫でた父・・・。
それから昨年父が亡くなるまで8年間、父と太郎の蜜月は続いたのだった。
そんな太郎が5日前、実家を脱走し行方をくらませた。
母は必死に捜索したが
(私は太郎に嫌われているので捜索には加わらなかった)
行方は全くわからず、
私は「太郎はどこかに死に場所を捜しにいったのではないか」
と秘かに思っていた。
太郎は父が亡き後、程なく心臓を患い投薬中の猫だし
父が不憫な太郎を過剰なまでに過保護に愛したため
外歩きには全く慣れていない。
ゴミなんてもちろん漁れないし、獲物なんて絶対獲れない。
知らない人に甘えて何か食べ物をもらうというのもスキルとして全くない。
しかし、太郎というのはみかけによらずとても聡明な猫で
父がガンで入院中は毎日健気に窓の外を見て父の帰りを待っていたのに
父が亡くなった日から、パタリと父を待つのをやめた。
(そのかわり今は日がな一日父の遺影を見上げながら仏壇のそばで寝てる)
父と母が口論になった時は必ず仲裁にはいり、
両親が喧嘩するのを決してただ傍観してることはなかった賢い猫。
父の悪口を言えば、ちゃんとそれが悪口だとわかっていて
すごい顔して膨れてみせる猫。
そんな賢い猫が失踪するとしたら自分の死期をさとったからではないだろうか?
それとも太郎は自ら薬と食を絶つために家を出て
父のあとを追って自殺のように死ぬつもりかもしれない・・・
などと私は太郎を忠義な武士のように思い、
ここ数日諦めと悲しみが入り混じったような気持ちで過ごしていたのですが
今日、太郎はひょっこり帰ってきたらしい。
もちろん病院直行。
やはり家出して5日間は殆ど飲まず食わずでいたらしい。
やはり、帰ってきてくれたのは嬉しい。
父が溺愛していた猫だし、私は嫌われてるが私は一方的に太郎が好きだ。
でも太郎、どういうつもりで家出して、そして戻ってきたんだろう。
あの世から父が太郎を説得したのかしら・・・。
太郎、まだ頑張って生きろよって・・・・。
なんとなくなんだけれど、
父が泣くなってからもいまだに父と太郎は心を通いあわせてるような
時々そんな気がする時があるのです。