Nicotto Town


錆猫香箱日和


父への電話

憧れてやまないもの・・・

例えばスティーブ・マックイーン。

空高く舞い上がって鳴くひばり達、

猫、世界一周、キャプテンハーロック、ライ・クーダーのギターの音。

社会的地位だとか、つまらない固定観念とは全くかかわりなく

自分のこれと信じてる生き方をどこまでも自由につき進む人が好きです。

そういう人や生き方を愛してしまうのは多分亡くなった父の影響なわけで

おかげで普通にいい大学出て、大きい会社にソツなく勤めて、

ローンで家買ったり車買ったりしちゃうことができるような

ちゃんとレールを踏み外さずに人生歩んでるような男性にはとんと興味ない。

私がいまとっても好きな人は先日自分のことを

『自分みたいな甲斐性なしは・・・』と言っていたけれど

いや、ウチの亡き父親に比べたら全然大丈夫ですよ。

ウチのお父さんに比べたら、もう大抵の人はまともに見えちゃう。




今日、母親から急な呼び出しを受けて実家に行くと

母はなにやらハイテンションだった。

思いっきり濃くて苦いコーヒー。

まずは大音量でジャズをかけ、猫の爪を2人で切る。

おもむろに口を開く母。

「昨日、知らない女の人から電話があってね、

お宅の旦那さんと話がしたいって言われたの」

「あ~お葬式の連絡もれ・・・。昔のお知り合いとか?」と私。

父は顔が広く、しかも自分が病気であることをひた隠しにして退職したため

父が亡くなった時の周囲の驚きは大きかったし父が亡くなってからも、

父の死をしらないお知り合いはチラホラいた。

「でね、お母さん、夫は亡くなりましたが・・・って言ったらその人

すごく驚いてね、『本当ですか、あの人が?本当ですか?』って

何回も言うのよ。

だから、お母さんね、夫とはどういったお知り合いでしたか?

って聞いたの・・・そうしたらね・・・」

ここで言葉を切る母。

私は何となく予想がついてしまった。

「お母さん、まさか・・・」

「そう、そのまさかよ。その人、お父さんと学生時代に結婚して

子供も2人いるんですって・・・」

「え、待ってお母さん、お父さんがお母さんと同時期に結婚してたのは

もとミス長崎じゃなかったの?その人は長崎さんの前?」

「そのかたが言うには、そのかたが一番最初のお父さんのお相手だそうよ。

ミス長崎さんはその後で、そこにストリッパーさんも加わるみたい」

「じゃあお母さんは何人目の妻なの?」

「3、4番目か、ひょっとするとまだ間に誰かいるのかもしれないわね」

「でもとりあえず、いまわかってるところでは私の兄弟は七人・・・・」

「わかってる範囲ではそうね」

「・・・・・・・・・・・・・。」

うは・・・・私自身の知らない所に、私と半分血が繋がった兄弟が4人も。

父親は私が子供の頃、堂々と子供の名前を呼び間違えていたので

父が母と同時期に他に家庭を作っていたのは家族みんながはやくから

知っている。だが、まさかその他に2人も女性がいようとは。

しかも子供まで。

しかもその電話の女性が言うには

「私が知ってる範囲の女性関係はそれぐらいですけど

でもあの人(父のこと)すっごく素敵で、女性はみんなあの人のハーレーの

後ろに乗りたがったし、道を歩けば女の子がみんなふりかえって

とにかくあんな素敵な人はいなかったわ。

私は父親に結婚を反対されたから仕方なく別れたけど

あの人を狙ってる女性はそりゃもう多かったから・・・」

と父のモテモテぶりを長々と語ってくれたらしい。

確かに当時、いっとき東映の俳優をしていた父のブロマイドはカッコイイ。

くっきりと通った高い鼻筋、当時の流行った顔とは違い

ちょっとバタくさい外人みたいな顔だけど、かなりハンサムだ。

父は年をとって頭髪が薄くなってからはブルースウィリスに似ていた。

しかも若い頃は俳優(ヒール役専門)なうえ

レスリング七年連続日本一という、対戦相手に困るほどの強者であり

ハーレーかっとばして米軍基地に何故か自由に出入りし

外人と一緒に歌ったらり、ハーモニカ吹いたり・・・。

それにしても不思議なのは、

父と一緒に暮らしたり子供までつくって別れた女性が

誰も父を恨んでいる様子がなく

こうして父が亡くなったのを知っても

土地や財産をよこせと要求してくる女性がいないことだ。

まあくれと言われても財産らしきものはないんですけどね。



それにしてもお父さん、あなたは本当に自由でしたね。

こんなに自分の好きなことだけして自由に生きた人なんて

私は他に知りません。

今頃こんなイタズラがみつかって、きっと天国で苦笑してるでしょう。



私もあなたの娘らしく、自分らしく生きていきます。

小さなことで悩んだり、

ふさぎ込んだりしてるのが馬鹿みたいに思えてきちゃいました。



今日あたりストーブがいらないぐらい暖かいし

春はすぐそこです。
















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