Nicotto Town


錆猫香箱日和


感動した漫画~女帝編~

女帝  倉科遼



20代の頃、近所のスナックでバイトしたことがあった。

当時は吉祥寺の近くに住んでいたので家賃が1LDKで7万もした。

私は当時週刊○石というオジサンの週刊誌の編集をしていたのだけれど

見開き2ページぶんの連載のみしか担当がなく、

その担当ページも人気が全くなく、すごい薄給で、

離婚後ひとりで7万の家賃の部屋に住むのはすごくキツかった。

しかも付き合ってる男が会社が倒産して女房にも逃げられて

全然金のない55歳のオヤジだったから、

このオヤジも何故か私が食わせて小遣いをやらねばならなかった。

そんな時、この男の部屋で『女帝』を読んで「これだ!」と閃いたんです。

酒が好きなだけ飲めるうえにお金がもらえるなんて

こんな素晴らしい仕事があるでしょうか!

私はさっそく近所のスナックに面接に行き、即採用の運びに!

即採用、それは特に私の容姿が良かったというわけではなく、

そこのママが全く女性の容姿にこだわらない人で

その店に勤めている女性達は若いのにまるでトドのような体型の人が

何人もいたし、ものすごく年配の女性もいたのだ。

私の想像していた華やかな雰囲気とは全く違い、

客もこの店を「オバケ屋敷」と呼んでいたのにゃ。

で、この私といえば

ムカつく客がいれば即効客をブン殴り、

止めに入るママや客を振り払い

客のボトルをブン投げ、店の内装(ガラス張りの壁)を叩き割り大暴れ。

「キャー、やめてタマちゃーん!!」

「落ち着けタマー!!」

ガチャーン、パリーン

グラスやボトルの割れる音、怒号、悲鳴・・・店内大混乱!!

あ、タマというのは私の源氏名です。

それでもママは

「ウチあんたが好きや。あんたがいると毎日楽しいわあ」

と言ってくださり私を首にしなかった。

やがて「タマは面白い」と人気が出てきてご指名ナンバーワンに!!

でも「面白い」って・・・『女帝』の主人公、綾香の美しさと聡明さに男たちが

惚れて夢中になっていくのとは明らかに何かが違う!!

これでいつか銀座の女帝になれるんだろうか・・・。

とまあ悩みながら日々を過ごしていたら、

ある時付き合ってるオッサンが年増の別の店のホステスを連れて

歩いてるのを目撃した。

あれ、ナンだろ・・・と違和感を覚える日が続くうち

オッサンが私の留守中に私の宝飾品を勝手に売り払っていた。

小遣いも頻繁にやってるのに金が足りなくなるなんて

これはもう入れあげてる女がいるに違いない。

いつかのあの女だ!とピンときて詰め寄ると、そうだという・・・。



ハッと気がついたら、男は鼻と口と額から血を流して倒れ

私は男の横腹に蹴りをいれながら号泣していた。

あ、やべえ、死んでしまったか?と焦ったがどうやら息はしている。

慌てて電話でタクシーを呼び、ちゃんと病院に連れていってやった。

でもまだ私の気は収まらず、おもにパソコンや電話などの

電化製品を中心に部屋を破壊してやった。

男は引っ越した。

だが私の怒りは収まらず、引越し先をつきとめて

男の留守中に音がしないように外から窓ガラスを割り

その割ったガラス戸や外壁に「詐欺師!」「金返せ!」「死ね!」

などとマジックで殴り書きした紙をベタベタと貼り付け

ご近所から白い目で見られるようにしむけたかたわら

男の実家をつきとめ、男のの年老いた母親に

20代の私を騙した55歳の男の手管を

あますところなく書いた手紙を送ってやった。

ロクでもない男だったが母親だけは大事にしていたので

男を直接嬲るよりも母親を攻撃したほうが

男は苦しむだろうと思ったからだ。

効果はてきめんで、手紙を読んで驚いた母親は階段を転がり落ちて骨折、

入院して危ない状態だという・・・。

男が泣いて「もう勘弁してくれ」と電話してきたのだ。

本当は病院もつきとめて、病室に乗り込み、

男の母親をもっと攻めてやろうと思っていたのだが(かなり鬼です)

男が泣いて詫びてきたのでちょっと気がすんだ。

最初から素直に誤ればわたしもそこまでしなかったものを。

でもどっちかというと銀座の女帝綾香さんより、

ヤクザの直人に近い所業ですな・・・。

私は男を食わせる必要がなくなったので

ママに惜しまれつつスナックをやめ、

こうして私は女帝への階段を登り損ねたのでした。





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