Nicotto Town


錆猫香箱日和


冬を感じる瞬間 満天の星空の下で思うこと

冬の夜空を見上げるのが好きです。

毎年慌しいこの時期に

一日の仕事を終えて職場から電車に乗って家路に着き

自宅のある駅に着いて 駅の階段を降りて外に出ると

ハッとするくらい、空に満天の星が輝いてる。

この瞬間が一日のうちで一番好きです。

そしてそのまま 空を見上げながら家路を目指してトボトボ歩いてると

星がきれいすぎて時々わけもなく泣きたくなってしまう時もある。

夜空にまたたく美しい星をみているうちに

この空のしたのどこかにいる 懐かしい人たちのことや

愛していた可愛い動物達・・・猫に犬にハムスター、文長にインコにリス

南米産の奥地の珍しいカエルに 飼育日記をつけて増やしたゴキ達。

みんな みんな懐かしい。





特に、命日が12月だったせいか

私のニコ名であるサビちゃんのことを時に思い出します。

20代の頃から連れ添った、サビちゃんが亡くなったのは

2009年のちょうど今頃の時期でした。

サビちゃんは私と出逢ったときはもう大人の猫だったので

おそらく20歳以上の年齢だったと思われます。

サビちゃんが亡くなったあの日、

深夜の寒い夜道を、タオルでくるんだ

サビちゃんの亡骸を抱えて動物病院から帰ると

まだ生後半年だった王子君が

サビちゃんの亡骸のそばに一晩中寄り添っていました。

生後約2ヶ月で拾ってきた王子君は

拾ってきた日からサビちゃんに面倒をみてもらい

サビちゃんはお母さんがわりのような存在でした。

いま、大人になった王子君の 

子猫のチェロたんや我儘なまめ女王様に接する

優しくておおらかな態度をみていると

この時 サビちゃんに育てられたことを

王子君はちゃんと覚えてるのかな、なんて思ったり。




サビちゃんは大人猫になってから捨てられたコで

ある朝 当時通っていた職場に向かう途中で出会いました。

知らないサビ柄の猫がいきなり目の前にあらわれ

何か食べるものをちょうだいと鳴いて訴えまくるので

近くのコンビニで猫缶を買ってあげたら

その日からずっとそこで私を待っているようになりました。

そして寒い雨の降る日もそこで私を待っていて

雨にうたれて肺炎になったサビちゃんを病院に連れて行ったら

もう野良猫に戻すことはできず、一緒に暮らし始めました。



離婚して、ひとりぼっちになってしまった寂しい時期に

私は このコと寄り添うようにして暮らしました。




そして当時サビちゃんと暮らしていたアパートや

そのまわりのアパートには外国人が多く

特に私が暮らしていたアパートはブラジル人が多かったので

週に一度、ブラジルの食材を積んだ小さな行商のワゴン車が来て

普段あまりみかけない内臓料理用の肉やら加工食材やらを

安い値段で買い求めることができるので

私もブラジル人に混じってそれらの食材を買って

同じアパートに住むブラジル人に料理を教えてもらったり

夜は仕事に出てる母親(ダンサーが多かったです)

の帰りを待つ子供たちと 路上でラジカセをかけて踊ったりしました。



それと、近所に新潟出身の年とったお母さんが

カウンター席だけでやっている小さな居酒屋があって

すごく安いお店で 1000円ぐらいで料理おまかせで頼むと

肉やお魚のメイン料理にゴハンとお味噌汁とおつまみ2、3品ついて

ビールジョッキで頼んでおかわりとかしても

2000円でおつりがくるぐらい安く飲ませてくれるので

私は毎日通いました。



そしてそこに来る常連さんたちはやはり近所の住人で

大半は郷里から出稼ぎにきている雪国の人達でした。

冬のあいだだけ建築の仕事などをするのに

郷里から来てる人達の住む寮があって

そので仕事する人たちのたまり場のようになっていました。

そこに当時まだ20代だった小娘の私に

みなさんがファンクラブを作ってくれて

私はそこで軽く飲んだ後、

みなさんに連れられてオネエチャンのいるスナックに行って

カラオケ歌って大騒ぎしたり、麻雀したり

お休みの日は競馬や競輪を見に行ったりして遊びました。




みんなみんな、寂しくて 毎日肩を寄せ合うようにして暮らしてました。



特に仲良くなったのが

私ファンクラブ会長を買って出てくれた

当時40代後半だったジュンちゃんという人で

文学、芸術、音楽、多方面にわたって知識が豊富なインテリで

何故こういう人が肉体労働をしたり

ビザのきれたフィリピンの女の子をかばって警察にひっぱられたりという

生活をしてるのか不思議に思っていましたが

あまり体調の良くなかったジュンちゃんが珍しくへべれけになり

自分の身の上をしてくれたのです。

この人は北海道の苫小牧の出身で

そこにお祖父さんの代からの会社を持っていたのですが

その会社を継いでからも毎日高い飲み屋で遊んだり

賭け事に没頭したりして、とうとう自分の会社を潰してしまい

何千万という借金ができてしまい

身ひとつで夜逃げしてきたそうなのです。

その借金を帰すために 

ジュンちゃんはほぼ365日、朝から夜まで働きとおしました。

借金を返して、晴れて故郷に帰るその日のために。





そして、酔っぱらって 私にこの話をしてくれた時は

もうひと頑張りで借金が返せるところまできていました。

でも、神様はなんて意地悪なんだろうと思いました。

この時すでにジュンちゃんの体は癌に蝕まれていたのです。





借金が返せて

やっと北海道に帰れることになった頃には

ジュンちゃんはもうベッドから起き上がることができない体になってまして

北海道からお姉さんが迎えにきて帰って行きました。

あんなに帰りたがっていた北海道に

ジュンちゃんは死ぬために帰っていったのです。

あんなに懐かしがっていた郷里の風景を

ベッドの中からしかみることができなくてどんなに悲しかったでしょう。



北海道はもう雪が降っていると聞きます。



きっと、ジュンちゃんのお墓にも白い雪が

音もなく降り積もっているのでしょう。



懐かしいあの人たちも

無事に家族にあえたかな。

それともまたこっちに出てきて過ごさなければならなくて

遠くにいる家族に電話なんかしてるんだろうか。

はやく会いたいよ、って。






この空のしたで みんなちゃんとつながってるから

また いつか会えるよね。






そう思って見上げる冬の空は

眩しいくらい

ひとつひとつの星が命のきらめきのように見えるのです。
























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