青ガチャとねことクリスマス Ⅲ
- カテゴリ：ニコガチャ
- 2013/12/26 22:38:43
ガチャくんは空を飛んでいました。
おばさんが王子君に飛びかかられた拍子にばら撒いた
ネズミの玩具にビックリして、
飛び上がって天井をつきぬけ空高く舞い上がってしまったのです。
そのまま勢いがついてしまい
ガチャくんは高速で飛行を続けていました。
飛行するガチャくんの機体はかなりの風圧を受け
ミシミシと音をたてました。
そして風圧を受けてスイッチがトラブルをおこしました。
ぶるぶるぶるぶるぶるぶる・・・・・・。
飛行しながらガチャくんの体は震え
地上に向かって景品をふりそそぎ始めました。
そしてそのまま地球を３回まわり
７０億人の世界中の人たちに
運動会とクリスマスとお正月の景品を
それぞれ３０個プレゼントしました。
「お父さん、お母さん、見て！！ サンタクロースだよ！！」
世界中の子供たちが家の外に走り出て
高速で飛ぶガチャくんを見て完成をあげ
空から落ちてくるガチャくんのプレゼントをうけとめました。
大人たちも口をポカンとあけたまま
空を飛ぶ、流れ星のようなガチャくんの姿に見入っていました。
ガチャくんは、子供たちの喜ぶ姿を見て嬉しくなりました。
そして、王子君たちねこさんはちゃんと
ガチャくんの落とした目玉を拾えただろうか、と思いました。
７０億人の人たちに３０個づつプレゼントを配った
ガチャくんの中身はもうからっぽで機体が軽くなっていたので
受ける風圧も軽くなっていたのですが
ガチャくんは燃料のほうもなくなってしまいました。
なにしろ、地球を３周もしたのです。
それに、いろいろな国のうえを通るたびに
ガチャくんは他国の航空領域に入ったことで警告されたり
他の国の飛行機から攻撃を受けたりして
ミサイルの攻撃をかわしながら飛んだりもしなければなりませんでした。
ガチャくんの機体はかなり限界の状態に近くなっていました。
それでもガチャくんは気流に乗って懸命に飛び続けました。
ガチャくんは
何としても大好きなねこさんたちの待つ家に帰りたい、という思いで
必死でした。
空腹と疲労でガチャくんは何度も気を失いそうになりましたが
ここで落下して死んだら、ねこさんたちに会えません。
可愛いチェロちゃんに 強気なまめさん、そして優しい王子君の顔が
かわるがわるガチャくんの脳裏にうかびました。
そうして飛んでいるうちに、ガチャくんの機体は少しずつ
バラリ、バラリという音をたてて空中で分解しはじめました。
いまや、ガチャくんは頭だけになった状態で飛んでいました。
気流に乗って、祈るような気持ちでガチャくんは飛びました。
ただ、愛だけがガチャくんが飛ぶ気力を支えていたのです。
ガチャくんが飛んでいる眼下を
街の灯が美しく瞬いていて
それは飛んでいるガチャくんの孤独な心を慰めました。
あの灯のなかに自分もいままでいて
そしてこれからあそこに帰るのだと思うと
ガチャくんの胸の中に暖かいものが満ちていきました。
そうして、どのくらい飛び続けたでしょうか、
ガチャくんの体力も気力もいよいよ尽きてきて
意識が朦朧とし始めたとき
見覚えのある町並みが見えてきました。
もう少し、もうあとひと頑張りでお家へ帰れるのです。
いままでの苦労も
ねこさんたちの笑顔をみればそれでガチャくんは報われるのです。
体がなくなってしまったことなど
みんなに再び会える喜びにひきかえれば
なんてことはない、とさえ思いました。
おうちの外では王子君、まめさん、チェロたんが空を見上げていました。
みんな、ガチャくんを心配して
帰ってくるのを今か今かと待ちわびていたのです。
そして、しばらくしてから３匹は、空の向こうのほうに
キラリと光るものを見つけました。
それは、ゆっくりとしたスピードでだんだんこちらに近づいてきました。
とうとう、ガチャくんが帰ってきたのです。
ガチャくんは３匹の頭上にきてその姿をみると
そこで力尽きました。
そして、全部の力が抜けてヒューッと落下した
ガチャくんを、地面に落ちる寸前で受け止めた王子君の片方の手には
ガチャの目玉がしっかりと握られていました。
遠のく意識のなかでそれをみたガチャくんは
微笑みながら 静かにその瞳を閉じたのでした。
～Ｆｉｎ～
