Nicotto Town


魍魎ノ井戸


『年末年始、恋愛沙汰警報発令中』1


それはそう……丁度クリスマスが終わり、世間が元旦に向けて忙しい正月ムードに入ってきた頃の出来事であった。
「いや、本当に美味しいな。クリスマスの時もそうだったけど、レベル上がってきてるよなぁ……この調子なら別に正月は家に帰らなくとも、おせち料理が食えそうなくらいだな」
「そうだよねー、夏生さんに僕も料理教わらないとなぁ……」
俺はいつも通り隣に住む夏希の部屋で、晩御飯を同居している元カノの妹の椛と一緒に食べに来ていた。
今日の晩御飯はご飯にブリの照り焼き、味噌汁に肉じゃがと日本食揃いだった。
「ふふっ今度教えてあげるわよ、お正月の時はそれで手伝ってもらおうかな。そうなると私も楽になるしね」
そう言って会釈を溢す夏生は大人びた感覚というか静かな雰囲気を漂わせていた、まぁ実際は俺よりも歳上なので大人っちゃあ大人なのだが……
それにしても本当に夏生の料理の腕は日に日に上がってきているような気がする。
伊達に専業主婦をやってないだけあるなぁ、と染み染み俺は思いながら夏生の作った肉じゃがを堪能しながら、晩御飯を過ごしているふと丁度そんな頃であった。

ピンポーン… ピンポーン…

急に夏生の部屋のチャイムがならされたのだ。
「宅配ですかね?」
頭にクエスチョンマークを浮かべた椛が夏希に訪ねた。
「私別に新聞とか宅配とかそういう類のモノは触れてないから、チャイムが鳴らされる事なんてありえないんだけどなぁ……何だろ?ちょっとみてくるね」
そう言って立ち上がって、はいはーいと言って玄関の方に駆けていった。
「一体何なんだろうね?ちょっと僕、気になるなぁ」
「まぁまぁ……あんまり人様の事情に首突っ込むなよな」
取り敢えずこの歳になっても、好奇心旺盛な椛に俺は釘を刺しておく。
「はーい、わかったよ。ってなんか長いね、普通なら宗教勧誘や新聞の類なら断ってすぐ戻ってくるのにね」
「影の方から、ちょっと俺が見てくるわ」
そう言って内心俺も気になるので野次馬成分心配なのと半々で立ち上がった時に
「あー、ずるい!私も見に行く!!」
そう言って椛も立ち上がり玄関に通ずるドアから、少し隙間を開けて椛と一緒に夏生の様子を覗くのであった。
「って夏生の向こう側の人が誰か見えないんだけど、何の人で何の話ししてるんだろな?」
「私に聴かないでよって!ってかお兄ちゃん重いんだけど」
「だってお前の方が身長低いんだからお前が下になるのは当たり前だろうが……」
夏希に感づかれてはいけないので小声で話す俺達。
「もう…でも他にはじゃあ昔の男とかかな?」
「バカ、夏生の旦那はもう死んだって前話してただろう」
「じゃあ何なのかな?ものすごく気になって仕方ないんだけどっ」
「正直なところ、俺も気になる」
苦笑交じりに椛の方を見て、自然と椛の肩を持つ手の力が強くなる。
「なんだ、お兄ちゃんも気になってるんじゃない」
「そりゃまぁな……って夏生なんかだんだん声抗ってないか?」
見てみると夏生は訪問しに来た相手に、声を荒げている様子で興奮してる様子だった。
「だからあれはきっと僕の言った通り、男だって言ったじゃない。じゃないとあんなにブチギレたりなんてしないよ」
「あ、夏生こっちに来た」
ドスドスと音を鳴らし歩いてはドアから覗いてた俺を手で引っ張り上げ、それに釣られて椛も一緒に玄関に着いてこさせられる羽目になった。
気になってたので良かったのだが、別に問題に巻き込まれるとは思ってなかったのでちょっと予想外だ。
連れてこられたのはいいもののコレは俺の直感が予知している、「かなり面倒くさいと」
玄関前にいた訪問しに来た相手は顔がそこそこのイケメンで、少しウェーブのかかった髪型に白いスーツに身を包んだ男性は、俺を足の爪先から頭の天辺まで舐めいる様に見つめては最後に俺に向かい嘲笑した。
なんだ?この礼儀のなってない失礼な奴は……
「いう割に期待してた程、あんまり格好良くもないじゃないか」
そう夏生にニヤリとした顔でそう言い放つ。
「失礼ね、これが私の今の婚約先の相手よ!」
「あ、全然違うんで……こんなガサツな女とは、別に幼馴染ってだけであって恋愛感情の類でみてる関係じゃないので、俺のいない所で話しておいてください。じゃっ」
そう早口で捲し立てて椛を連れて帰ろうとしたが、
「何勝手に話終わらせて帰ろうとしてんのよ!コラ!?」
夏生に襟を掴まれて逃げられなくなった。嗚呼もう最近こんな事ばかりで俺は軽く欝になりそうだよ、加奈……
「分かった!分かったから襟掴むのやめろ、伸びるからちょっと!」
「夏生さん、落ち着いて下さい!お兄ちゃんの首しまっちゃいますよ!」
そうしてバタバタする中、俺はまた面倒なことに巻き込まれるのだった。


「えーっと、こっちが、夏生の、死んだと言う過程で、殺されてた、元旦那の、成瀬恭介さんでいいの?」
「そういや自己紹介してなかったね、ごめんね。巧人君」
「いや今教えてもらったから、ってか馴れ馴れしく下の名前で呼ぶな、次呼んだら殴んぞ」
「なんで僕こんなにキレられてる?」
「時間帯と、初対面の時と、俺と夏希の関係と、俺の今の職業の状況から俺の心情が察せないなら帰れ!今すぐ帰れ、タクシー呼んでやるから帰れ」
「あ、はい……ごめんなさい」
取り敢えずこいつを黙らせて、俺の部屋のリビングに一旦集まって会議である。
本当にコレは流石にそろそろキレてもいいと思うんだよな。
先程俺をなじる様に嘲笑仕掛けてきた男が、成瀬恭介と言う夏生の元旦那らしい。
夏生の高校の時の先輩らしく、そこから交流があり結婚するまでに至った経緯があったのだが、結婚してから関係が悪化し結局離婚になったらしい。
今はそこまでの話を二人から聴いて話をまとめることにした。
ちなみに成瀬と夏生を真正面に座らせ、俺と椛がその間に入る様に座っている。
「取り敢えず今日は成瀬お前は本当に帰れ、後日改めてコイツと話をしに来い、迷惑だ」
コップに入ってる水を飲み干して、そう言い放った。実際いられても仕方ないし今日は話の先が視えない気がしたし。
「……じゃあ今日は大人しく帰らせてもらうよ、顔を見ただけだし」
「俺の家にはもう二度と来んな」
「今日は迷惑をかけて本当に済まなかったね」
苦笑を浮かべて俺にきちんと謝ってきたので取り敢えず俺も初対面の件は大目に見ておく事にする。
本当に面倒な話になった物だ、俺は成瀬を部屋から追い出して残った夏生から話を訊くことにしたのだった……

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2014/01/13 22:06
『年末年始、恋愛沙汰警報発令中』2
www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=442098&aid=54181361
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2013/12/31 21:58
==*==*==*==*==*==

今年ももうすぐ終わりですね。

今年は大変お世話になりました。

来年、2014年も、 よろしくおねがいいたします(`・ω・´)

みなさんにとって、よい年になりますよう に..♡

めっせ)))

サークルでは大変お世話になってます(*・・*)
いつも、ぬえさんのすてきな詩に、
私もすてきな詩を書こうっ、といつも思っております。
2014年もよろしくおねがいいたします*+

==*==*==*==*==*==
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2013/12/29 14:38
消えた彼女が摘んだプリムローズ

人物紹介

榛 巧人(はしばみ たくと)/25歳
長年付き合っていた恋人と死別していたが、
立ち直り現在は就職活動真っ最中
数年ぶりに再会した幼馴染の夏生とお隣さん
彼女の妹、椛と同居する生活が始まる。

稗田 夏生(ひえだ なつき)/29歳
巧人の幼馴染で姉貴分な性格
うまくいっていなかった旦那と最近死別したばかり
巧人の住所を調べ隣に引っ越してくる

松永 加奈(まつなが かな)/享年22歳
高校の時から付き合っていた巧人との彼女
数年前に亡くなりこの世を去っている

松永 椛(まつなが もみじ)/22歳
加奈の妹で、所謂「ボクっ娘」
周りの男性との交友関係に悩まされて
姉の彼氏の家に転がり込んだ←

成瀬恭介(なるせ きょうすけ)/30歳
夏生の元旦那、
取り敢えず巧人の第一印象では
「マナーのなってない人」

あらすじ
大学生の時に殺人事件で彼女を失った青年、榛巧人。
数年後、ある日を境に隣に幼馴染みが引越しにきて、
その2週間後には亡くなった彼女の妹が家に同棲しに来る始末。

職を探す巧人とその日々を翻弄させる、
二人の彼女と織り成す日常系ラブコメ展開中!!

何か言葉の使い方や、おかしな点が御座いましたらコメントにてご指摘下さい。
その他、感想などもコメントして頂けると、
創作意欲に繋がりますので色々コメントして下さい。




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