Nicotto Town



2月自作/「祈り『紆余曲折』 1」 


大晦日の手前に夏生の元旦那「成瀬恭介」が夏生の目の前に現れると言うイベントが起きてから、数日が経って年は変わった。
それ以来、成瀬と夏生の間に話の進展はなく、椛との同居から早三ヶ月近くが経とうとしていた。
その間は本当にいつも通りの生活で、俺と椛はまたアイツが現れるんじゃないかとビクビクしながら新年を過ごしてたもんだ。
なんだかんだ上手くいってる様にみえて、案外裏では色んな心情が交差してるもんなんだなとため息をつきつつも俺はこの生活に慣れていた。
そんな中、久々に学校の同期で幼い頃から付き合いの長い旧友とその連れが遊びに来たので、俺はその対応に追われていた。
ただ今、俺は物凄く後悔している。
何故かって?
それは幼馴染の姉貴分と、付き合ってた彼女の妹が同居しているとう事実を隠そうともできない事実に……

「うわーっ、モテモテじゃないですか。巧人さん凄いですね!」
「はははっ……そう見えてるのはきっと紫衣奈ちゃんだけだと思うよ、実際はもっと裏が、ぶげっ」
「なんだかんだで巧人はモテてるからね、仕方ないわよ。ふふふ」
紫衣奈ちゃんにそう言われ俺は謙遜しようとしたら、俺は何を思ったのかわからない夏生に肘アッパーを食らわされ顎を抱え悶えていた。
「夏生さんは相変わらずな様子で、昔見た時と何も変わってないじゃないッスか」
顎を抱えてる俺の隣に座る一蹴は苦笑いしながら、夏生にそう話しかけた。
「そう?ふふん、やっぱり一蹴君は見る目があるわね~。そう言えば二人の子って四月だっけ?」
「そうですね、医者の話だと四月の中旬らしくて……まぁすぐ入院って訳でもないですので、その前に巧人に新年の挨拶でもと」
「あら~、やっぱり出来る男ってのは違うみたいみたいね、隣に住むこの朴、念、仁、と違って」
「ちょっと夏生さん、それお兄ちゃんに向かって言いすぎなんじゃ」
「そうだぞ、椛みたく俺をもうちょっと優しくあつか……って、げふっ!」
次は笑顔の夏生から軽い(?)右ストレートを頂いてのたうち回る俺……
最近と言うか、新年明けてから夏生の暴力の度が増してきてる気がするぞ……
そんなこんなで今、俺の家に来ているのは幼稚園から同じ大学まで一緒で、腐れ縁みたいな付き合いのある朝倉一蹴。
そしてその一蹴の嫁さんの紫衣奈ちゃんである。
この二人がどのようにして付き合ったのかってのは、「教師と生徒の関係から、ほんの少し足踏み入れて進展した」と一回、一蹴から聴かされたのだが具体的には聴かされた事がない。
高校の教師をしている一蹴の受け持った生徒だったのが紫衣奈ちゃんらしく、紫衣奈ちゃんから一蹴に頑張って告白したみたいだ。
けれど付き合ってから色んな事を乗り越えて、現在の朝倉家がある様で苦労してきたんだなとは今日の報告で分かった。
でも考えてみれば紫衣奈ちゃんは今年で十九歳らしいので、去年卒業してからすぐ籍を入れたことになるんだよな。
そう思うと一蹴って高校の時から付き合ってた紫衣奈ちゃんとイチャイチャしてた事になるんだよね。
だとすると本当に一蹴ってやり手なのかもしれない。
ただそんな憶測をしても俺が一層悲しくなるだけなのでここら辺で止めておく。
訪れた一蹴と紫衣奈ちゃんを俺の家に招き入れ少し昔話に花を咲かせていた処に、何処からか知らないがその話を聞き付けた夏生が乱入してきた形で俺の家は嘗てない程の賑わいを見せていた。
ただ俺からすれば隣に夏生と同居している椛がいる所為で、あんまり違和感が無いけれどよくよく考えてみればこんな光景は珍しいんだよな。

「って言うか巧人はどっちかと付き合ってるの?」
会話の流れか、ふと話題を切り出したのかは知らなかったが一蹴が俺に聴いてきた。
「えっ?あっ全然全然。全くそういった話もないしなぁ、逆に欲しいくらいだよ」
そう返しはははと笑うと、
「そうよね~、この朴念仁にも素敵な人が現れてると幼馴染としては安心するわァ、一蹴君、コイツに誰か紹介してやってよ」
「お兄ちゃんよかったら僕なんてどう?実際同居してるから同棲に言い換えても、僕は気にしないよ?」
と笑いながらも目が全くそのままで微笑む夏生と、頬を少し赤らめながらキャ~と顔を手で隠す椛。
何なんだこいつら、正直気持ち悪い域を越してる感が物凄いあるのだけれど……
「ハハハッ、ソウダネ~ダレカガキテクレレバソウナルトオレトシテモウレシインダケドネ~、モミジデモイイケドソウジャナイヨウナキモスルシ」
そうやって冷や汗かき微笑みながら目を泳がせてそう返事をしたら
「この意気地なしっ」
「チッ」
と俺にしか聴こえない様に双方が返答した。
正直こうなると本当に女って怖いからなぁ、俺も身を固めないといけない感がプレッシャーとして襲いかかってきてるな。
嗚呼、加奈。お前がいなくなってからは俺、ちょっと腹痛くなる事が多くなってきたよ。ははは……
心の中で少し呆れた様に今はもういない加奈に向けて微笑んだ。
「ちょっ、一蹴。外行こうぜ、紫衣奈ちゃん達はここで話してくれていいからさ」
少しこの状況に耐えれなくなった俺は一蹴を連れて、外に連れ出した。
「わかったよ、じゃあちょっくら話し込んでくるわ。後で戻るわ」
「うん、一蹴いってらっしゃい!」
「お兄ちゃん。分かったよ~、早めに帰ってきてね~!」
椛がそう言って紫衣奈ちゃんと微笑みながら手を振る中で、夏生だけが少し膨れっ面で俺を睨んでいた。
おおっ、怖い怖い……

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2014/02/04 04:19
2月自作/「祈り『紆余曲折』 2」 
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